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DNA収集は監視国家の序幕

[寄稿] DNA法の明暗、科学捜査なのか、ビッグブラザーなのか

ク・テウ(進歩ネット) 2013.07.09 16:57

施行4年目をむかえたDNA法(DNA身元確認情報の利用および保護に関する法律)の明暗は、明らかに交錯している。国家機関が管理するDNAデータベースの規模が大きくなるほど、さらに多くの犯罪が解決され、防止されるというのがDNA法の賛成論者の論理だ。そして続々と発生する強姦、殺人などの凶悪事件はDNA法を存続させるべきだという世論を後押しした。人権団体が提起した憂慮は、捜査機関の「科学捜査の成果」という主張の下に埋められた。

捜査機関からDNAを採取された対象者の一部は、日常生活で「ビッグブラザー」 の存在を体験していた。双竜自動車解雇労働者のソ・ソンムン氏は、DNA採取以後 「罠にかかったようだ」とし「人がいない深い山の中に入って暮らしたい気持ちだ」 と吐露した。生物の生命現象に対する情報を含むDNAの特性上、血液、唾液、毛髪、 口腔粘膜の採取により、捜査機関は身元を確認できる。

DNA採取、一生監視される感じを拭えず

「国家機関が私のDNA情報を持っているという事実により強迫観念が生まれた。 DNAを採取された後、私は自由の身だと思えない。一生監視されて暮らさなけれ ばならないのではないか」。双竜車解雇労働者ソ・ソンムン氏の言葉だ。

ソ氏は双竜自動車ストライキの過程で「暴力行為などの処罰に関する法律違反」 で有罪を宣告され、2011年4月頃、水原地方検察庁平沢支庁でDNAを採取された。 当時は口腔採取への拒否感しかなく、DNA採取以後に味わうことは考えられなかっ た。彼はDNA採取以後、深刻な不安に苦しんだ。食堂で食事をした後にも唾液を 残さないために、箸とスプーンを必ずふいた。タバコの吸殻は道に捨てず、 袋に入れて家で一度に捨てた。

ソ氏がこのような行動をする理由は、痕跡を残さないためだった。「復職しても DNA情報は一生残る。現場に行って働いても、いつでも事件現場でDNAが発見 されれば、容疑者にされ、検察庁に出頭しなければならない」

DNA法11条は「DNA身元確認情報の担当者は次の各号のどれか一つに該当する場合 にDNA身元確認情報を検索したり、その結果を回報することができる」と規定 している。ひとまずDNA身元確認情報が収集されるとデータベースに保存され、 将来、発生する刑事事件や未解決事件の捜査に広く使われるということを意味する。

西江大法学専門大学院のイ・ホジュン教授は「DNA証拠が持つ強い力のために、 容疑者と指定された人は自分が犯罪者ではないという点を警察の前で釈明しな ければならない境遇に置かれる。(DNAが採取された対象者は)犯人ではなくても 現場でDNAが発見されれば犯人にされるかと心配しなければならない」と話した。

竜山惨事の時に拘束されたキム・チャンス氏は受刑者の身分でDNAを採取された。 彼は「国家機関がDNAを持っているという事実だけで、日常生活に制約を受けざ るをえない。犯罪を犯さないよう気をつけて暮らせば良いではないかと思うだ ろうが、(刑期を終えた後も)保護観察を受けているようなものだ。それ自体が 人権侵害だ」と指摘した。

データベースに登録されたDNA情報は、裁判所の無罪、免訴、公訴棄却判決の 決定が確定したり、被疑者が死亡した場合でなければ削除されない。

DNA法が作った新連座制、家族検索

「絵スリッパ」連続殺人事件は、DNA情報を利用した家族検索(Family Search) 技法を活用して検挙した事例だ。未解決殺人事件になりそうだった事件を解決 した決定的な端緒を提供したのは、まさに被疑者の息子だった。不法武器所持罪 で逮捕された息子のDNAはデータベースに入力されていた。息子のDNAと殺人事件 の現場で発見された匿名のDNAと部分的に一致し、父を検挙することができた。

DNA法に関する代表的な人権侵害の一つは、家族検索の問題だ。家族検索の技法 は親族間のDNAの類似性を活用した捜査技法だ。両親と子供はすべての遺伝子で 少なくとも1つの対立遺伝子が一致する。DNAの特性上、家族構成員1人のDNA情報 を持っていれば、家族全体のDNA情報を推論できるのだ。絵スリッパ事件のように 未解決の事件を解決することもあるが、家族検索の技法は家族との血縁関係など、 人口社会学的な情報に対する推論が可能であるため、学界と人権団体は憂慮している。

米議会が発刊した「刑事行政学のDNAテスト」報告書によれば、「家族検索技法 を適用すれば、米国人口の17%の黒人はデータベースで探せる。だが白人は4%に 過ぎない」とし「有色人種と低所得層などの少数者階層が家族検索技法の捜査 により、容疑者に浮上する確率が高い」と明らかにした。

この報告書は「FBIが家族検索技法を使う時、事件の解決が難しい強力暴力事件 と性犯罪に限って使うこと」を要求した。データベースに登録されたDNA情報が 事件現場で発見されたDNA情報の身元確認の他に、親族間捜査に拡大する可能性 があることを確認できる項目だ。

DNA法が迅速な犯人検挙と再犯防止の目的で導入されたとしても、外国の事例で 確認できるように、犯人検挙の目的を達成するために、多様な手段で活用される。

これについて進歩ネットワークセンターのチャン・ヨギョン活動家は「指紋と DNAが一番違う点は、DNAが家族情報を含む点だ。指紋は一つ当り国民ひとりの 情報しか含まないが、DNAは家族ごとに一つでも全国民の情報になる。最初に 採取した人が死亡しても、DNAは残り続け、その家族の検索に使われる。一種の 連座制だ。したがって、国家がDNAデータベースを構築して利用するのは深刻な 人権侵害だ」と話した。

捜査機関のDNA収集は監視国家の序幕

DNA法の危険を主張する学界は、DNA法は「滑りやすい坂(slippery slope)」の 論法のようなものだと主張してきた。米国ニューヨーク州の場合、最初の段階 では入力対象犯罪は21だったが、わずか数年で107へと大幅に拡大された。韓国 も、DNA法は性犯罪者の再犯を防止するという趣旨で制定されたが、実際には その対象が放火罪、殺人罪、略取誘引罪など11に達する。

竜山惨事の時に拘束されたキム・チャンス氏は「生存権のために戦うほかはない 人からまでDNA採取をするのは、道徳的な汚点を使ったようだ」と話した。

双竜自動車解雇労働者のソ・ソンムン氏は「子供たちに対し言葉で表現できな いほど申し訳ない。生きるために頑張ったことしかないのに、(DNAを採取され) 子供たちにまで第2の被害が及ぶことを頭の中にしまって暮らさなければならない。 これがどれくらい恐ろしいだろうか?」と話した。

イ・ホジュン教授は「国家のDNA情報収集は、監視権力の拡張と危険統制政策の 拡大という面から見なければならない。危険な人物と集団に対する国家の統制 と監視の強化が続けば、民主主義と人権を後退させる危険な道でもある」 と指摘した。

7月11日、憲法裁判所でソ・ソンムン、キム・チャンス氏の「DNA鑑識試料採取 行為違憲確認」に対する公開弁論がある予定だ。憲法裁判所が公開弁論を続ける のは、該当事件の違憲の可能性を綿密に検討しているという意味だ。11日に 開かれる公開弁論で、どのような言葉がやりとりされるのかが注目される。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-07-10 03:18:46 / Last modified on 2013-07-10 03:18:47 Copyright: Default

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