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低出産対策は常に反女性

[企画連載]女性労働者の現実(2)

チェ・ソンファ(民主労総) 2010.11.29 15:27

李明博政権は10月26日の国務会議で、第2次低出産基本計画を確定した。今回の 基本計画は、子供を出産して養育することは国家的な責任だという基本認識も 否定している。もちろん、1次基本計画も、そうした国家的な責任を基礎とする 計画とは言えないが、少なくともそうした精神を生かすというコメントぐらい はあった。だが2次基本計画案は、露骨に不平等と反女性性を表現している。

まず、一番の問題は、まさに育児休職定律制だ。これまでの育児休職給与は月 50万ウォン一括支給だった。月50万ウォンという金額で子供を養育できるとい う概念もあきれるほどだ。ところがそればかりか、給与の40%を育児休職給与と して払うという。最低50万ウォンから最高100万ウォンまでだが少なくとも100 万ウォンを受け取るには1か月に250万ウォン程度の収益を得る労働者だけがそ の受恵者だ。非現実的な案だと批判される最低生計費さえ、月143万9千ウォン (4人世帯基準)を基準にしている。それでは二人の子女がいる非正規職既婚女 性労働者と非正規職男性労働者が月50万ウォンで子供を産み育てれば、政府が 規定する最低生計費基準にも至らないか、やっとその基準に入る。これがどう して低出産政策だと言えるのか? また、もし彼女が唯一の生計扶養者なら、 育児休職は雲をつかむような話だ。

問題はこれだけではない。韓国社会で子供を出産して養育するための費用に差 異が存在することはない。誰もが同じように一定程度の費用が支出され、また それだけ必要だ。ところが低賃金労働者ほど、育児休職給与が少ないとすれば、 これはもうひとつの差別と不平等を引き起こす。

何よりも現実的な補完策がないことが問題だ。いつクビになるかわからない非 正規職女性労働者が、育児休職を1年も使える環境ができるのか。あるサービス 業種の正規職女性労働者は、実際に法的に保障されている産前後休暇さえ使え ないとくやしさを訴えている。正規職女性労働者の現実がこうなのに、非正規 職女性労働者の条件は言うまでもない。まったく育児休職の対象にもならない のが非正規職労働者の現実だ。それは農民、自営業者、家庭主婦すべてに該当 する。これらの誰も育児休職を使えない。

このように育児休職給与が低く策定されれば、結局、育児休職は男性より相対 的に賃金が少ない女性労働者の役割にならざるをえない。これは何を意味する のか。結局、育児の責任を女性に押し付ける効果を国家が主導しているという ことだ。

その効果は他のいくつかの政策でも続々あらわれる。それがまさに育児期短縮 時間勤労制と、自律型保育園だ。育児期短縮時間勤労制は、露骨に女性労働者 に子女の育児の責任を転嫁する。これは事実上、労働柔軟化政策の一環でもあ る。実際の内容は全日制女性労働者が育児のために育児期短縮時間勤労制を申 請すれば、一日4時間程度の労働や在宅勤務などの時間制非正規職雇用への転換 を意味する。家で子供の面倒を見て、外で仕事をして、金も稼げというのだ。 もちろんその後、どう正規職に転換するかの代案は何もない。問題はこれが実 際の低出産政策の一環でもないということだ。これに関する質問のために討論 会に参加した保健福祉部の担当者は、育児期短縮時間勤労制は保健福祉部の所 管でなく、労働部の所管なので、自分は何も知らないと答えるほどだった。

二つ目は自律型保育園だが、これは民間保育園施設を増やし、市場化の論理に 任せるということだ。ただし国家が模範的な保育園は認証制により選定し、国 公立保育施設拡充は僻地山間地帯と共に特定地域、階層だけに恩恵を与えると いう。これは国家が保育公共性を全面的に否定することだ。結局、とても貧し いか都市からとても離れた片田舎に住まない以上、高い料金で子供を育てなけ ればならない苦労をしろということだ。

韓国社会が低出産時代を迎えたのは政府の基本計画案の冒頭にも指摘されるよ うに、経済的理由がその原因だ。簡単に表現すれば韓国で子供を産んで育てる には、労働者の賃金があまりにも少なく、しかし私教育費は天上知らずに上がっ ているのに、これへの対処どころか生活も苦しいからだ。それで1人の生計扶養 者、特に女性は子供を産んで育てる社会的条件、経済的条件どちらも厳しい。 こうした状況で政府の低出産政策は、本当に自分の人生を放棄してその子供の 未来も保障できない状況で、ただ愛の力だけで生きていけと国家が女性に、そ して子供に強要しているのだ。

多くの女性が結婚をしたがらず、子供を産みたがらない。それは子供を産んで 育てる時間がないとか利己的だというわけではない。韓国の女性の雇用が不安 定で、育児の責任を彼女たちだけに転嫁してからだ。まさに自分の生活だけを 考えれば、それはあまりに当然の話だ。子供を産んだ瞬間、職場を止めたり休 まなければならず、復帰するにも子供が小学校高学年になるまでは安心できな い。それだけか? あらゆる家事と育児、時には婚家祭事などあらゆる慶弔事も 内外で働き手にならなければならない現実を避けたいのだ。この苦痛から抜け 出せるなら、全力をつくすのは当然だ。そしてその結果がまさに低出産だ。私 たちが女性労働者の低賃金を問題視し、女性と男性の平等を主張するのはこの ような社会的問題を解決するためだ。

女性労働者が女性労働者だけの権利と問題を提起するのは、まさにそのためだ。 これから女性労働者の団結と闘争は始まる。低出産が問題なのではなく、女性 労働者を苦しめる世の中が問題だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-11-30 03:39:19 / Last modified on 2010-11-30 03:39:22 Copyright: Default

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