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太田昌国のコラム : 遠くアジアから、バルバドスと英国の関係を遠望する | ||||||
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遠くアジアから、バルバドスと英国の関係を遠望する日本の状況を、この問題をめぐる最近の国際状況の中に据えて、客観化してみる。去る8月23日、国連人種差別撤廃委員会は、英国内で人種差別的な言論や排外主義的な言説が急増しているという報告書を発表し、政府に対応を促した(「しんぶん赤旗」2024年8月25日付け。Rights experts urge United Kingdom to curb hate speech– UN News など)。人種差別に関する英政府の取り組み状況を4年間にわたり調査・分析した報告書は、極右団体と白人至上主義者が移民、難民、少数民族に対する憎悪扇動と暴力行為を繰り返していること、ネット上には排外主義的な言動が急増していることなどを指摘している。報告書は、英国が過去に植民地主義や奴隷制に関与した過ちを認めていないことが「人種に基づく偏見を煽っている」と述べている。大英帝国下で行われた植民地主義と奴隷制の歴史を学校教育で明確に説明すること、それと現代における構造的な人種差別との関連について利害関係者と協議するよう勧告もしている。7月末に英国北西部サウスポートで刺殺事件が起こると、真偽不明の情報に基づいて、移民排斥を訴える抗議行動・放火・商店襲撃が英国各地に広がり、X(旧ツイッター)の所有者、イーロン・マスクも虚偽情報に基づいた悪扇動を行なった、つい最近の事態を思い起こすなら、事はまさにいまなお進行中であることが見えてくる。
英皇太子チャールズは、同年11月30日にバルバドスの共和制移行記念式典に出席したが、これらの一連の経緯を踏まえて、「この島の人々は、暗黒時代と、歴史の永遠の汚点である奴隷制度から、並外れた不屈の精神で前進していた」と語らざるを得なかったのである。 英国の福音パートナー連合協会(USPG)による奴隷の子孫への賠償は、植民地の人々をキリスト教に改宗させるために設立された同会が、大規模サトウキビ農園で奴隷を酷使していた大地主から18世紀にその土地を譲り受けたことに根拠を持つ。土地は、現在、政府が設立した財団の管理下にあり、財団とUSPGが協力して事業を推進し、賠償金は地域住民の教育、起業、歴史研究支援などに使われる。英国国教会はすでに2006年に奴隷制との関わりを公式に謝罪しており、その後20年近くをかけて、謝罪から踏み出し、教会が関わった歴史的な不正・犯罪に向き合う具体的な措置に至ったのだと言える。川北稔が『砂糖の世界史』(岩波ジュニア新書、1996年)で夙に描き、シドニ・ミンツが『甘さと権力』(ちくま学芸文庫、2021年)で分析していた「過去の歴史」が、現在に引き継がれて「生きた歴史」として眼前で展開している。 かつて、後進国、低開発国、南の世界、第3世界などと呼ばれてきた地域は、いま「グローバル・サウス」と総称されている。バルバドスは、紛れもなく、そのグローバル・サウスの中の、小さな、小さな国である。そのような小国が、20世紀半ばまでの近代世界に君臨したかつてのイギリス植民地帝国と向き合い、ここまでの実績を積み重ねてきた。 この事実を、日本とアジア近隣諸地域との関係を考えるうえでの重要な参照事項にしたい。 ●より詳しくは、以下などを参照。 Created by staff01. Last modified on 2024-09-10 15:39:03 Copyright: Default |