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[論評]サムソンの支配構造改善は本質的ではない

エバーランド転換社債事件の控訴審判決を見て

チャムセサン/ 2007年05月30日13時52分

裁判所はサムソン・エバーランド転換社債の便法贈与事件控訴審で、1審より も重い刑を宣告した。1996年、エバーランドが転換社債を安値で発行、これを イ・ジェヨン氏に便法売却したこの事件は、李健煕(イゴニ)会長父子の経営 権継承により、サムソン・グループの支配構造を固めたもので、何と11年も問 題になってきた。

控訴審裁判所はまずエバーランドの前職・現職社長の被告2人が理事として背 任した事実、次に転換社債の安値発行で最低90億ウォンから1千億ウォン以上 の利益を得た点を上げ、有罪を確定した。控訴審裁判所がサムソン・グループ の経営権継承が不法行為に基づいて行われたことを確認しただけに、財閥の非 上場株式による富の獲得に対する責任追及の根拠が用意された。裁判所が転換 社債や新株引受権付き社債などを利用した財閥の便法経営権相続の慣行に制約 を加えたという点で、今回の判決の意味は小さくない。だが一方、控訴審裁判 所は経営権の便法継承過程でのグループ次元の共謀については判断しなかった。 李健煕会長など、サムソン(三星)の中心的な関係者が関与しなければ不可能だ という点で、李健煕会長も捜査すべきだという主張が提起されているが、それ は当然であり、そうしなければならない。富の相続で、資本の蓄積過程におけ る所有-支配権を再生産する財閥の慣行は廃絶されなければならない。

だが、控訴審判決は今日の韓国社会においてサムソン資本が誘発している問題 と比べれば、とても小さな進展でしかない。サムソン(三星)は2006年基準で総 売上141兆ウォン、資産230兆ウォン、雇用人員25万人、韓国の総輸出量の20% を占める巨大財閥に成長した。だが、労働組合さえ許さない前近代的な労務管理 や、最近ではサムソン系列の非正規職労働者の弾圧事例も頻発している。

李健煕一家の持分は0.8%。これほど小さい持分でもサムソン(三星)の支配権を 行使できるには循環出資型の支配構造が作動しているためだ。エバーランドを 中心に、サムソン生命、サムソン電子出資が続き、サムソン・カードもやはり エバーランドの大株主になっている。これに対してサムソンの支配構造改善の 声が高まっている。最近、クォン・オスン公正取引委員長も公開で支配構造の 改善を要求した。サムソンが電子、生命などいくつかの持ち株会社体制になれ ばいいという発言の延長だ。持ち株会社体制での再編は、企業に対する政府と 市場の役割および機能に関する問題だ。持ち株会社体制は財閥総師の経営失敗 に対する法的責任を問うことができ、系列会社間の複雑な所有限度構造を解消 することで透明性を高め、持ち株会社+子会社の単層構造で所有-統制が単純化 するという点で株主の価値を高める体制だ。したがって、循環出資であれ持ち 株会社であれ、少数による企業支配構造を認める問題だという点で支配構造の 改善をまるで財閥の問題への代案であるかのように主張するのでは困る。

IMFの危機処方としての新自由主義が全面化し、財閥改革は資本蓄積方式再編 にとっての重要な問題として浮上した。 大宇をはじめとする10個ほどの財閥 がこの過程で没落あるいは再編された。公企業の民営化、外資の規制緩和およ び廃止、企業の支配構造の改革、金融改革措置が相次ぎ、チャン・ハソンのよ うに韓国経済の市場主義的再編を夢見た人々にとっては夢と機会の時代が到来 した。ローンスターが外換銀行の売却だけで4兆5千億ウォンの利益を出したこ とからもわかるように、有償減資、高額配当による投資資本回収は、投機資本、 私募ファンドの代表的な食い逃げ方式だ。チャン・ハソン・ファンドも、こう した投機方式を露骨に運営しており、韓国企業支配構造改善ファンドの実体が ここにある。企業は有償減資、高額配当、資産売却で、そして労働者の構造調 整、整理解雇、非正規職化により、利潤を極大化してきた。このようにこの10 数年間、財閥改革は超国籍資本の投機のための規制緩和とともに株主資本主義 の強化につながった。今では資本市場統合法の立法予告と韓米FTA妥結によっ て、グローバルスタンダードとして広く知られる米国式新自由主義蓄積体制の 定着化が予告される時点をむかえている。

エバーランド転換社債便法贈与事件の有罪判決は、サムソン権力の不法行為を 法的に確認したということ自体に意味がある。しかし今後、サムソンが既存の 支配構造を急激に変動させるとは思わない。問題は、サムソンが現在の支配構 造を維持するとしても、持ち株会社への再編を強制されるとしても、それ自体 で韓国社会にサムソンが占める資本権力としての地位は変わらないという点だ。 97年の大統領選挙当時のXファイルでサムソンがそうだったように、10年が過 ぎた今、サムソン資本の力ははるかに強大になり、便法贈与事件控訴審判決を 不服として上告するという自信表明も、サムソンでなければ難しいことだろう。 結局、支配構造改善問題はサムソン財閥をめぐる資本運動の傾向間の緊張でし かなく、労働者や民衆の関心事項ではない。サムソン資本に対する社会構成員 の下からの民主的、社会的統制の機制と方案を用意する根本的な処方だけが、 今日のサムソン資本による反労働者的、反社会的弊害を減らす。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンス:営利利用不可・改変許容仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2007-05-31 02:55:45 / Last modified on 2007-05-31 02:55:47 Copyright: Default

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