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不法滞留が犯罪?

[寄稿]消えるべき警察の移住労働者摘発

チョン・ヨンソプ(移住労組事務次長)/ 2010年04月06日10時35分

2月15日、東大門ネパール食堂での未登録移住労働者強制摘発は、それ自体が衝 撃だった。まずその日は旧正月連休期間だった点だ。民族最大の名節である旧 正月をむかえ、国内のすべての移住労働者は故郷には帰れなくても友人どうし 異国暮しの疲れと悲しみをなだめる。秋夕連休も同じだ。集まる場所もないの でしばしば同じ国の人が運営する外国人食堂に集まり、食事もして酒も飲み、 遊んだりもする。ところが警察は食堂を襲い、移住労働者が名節に安心して休 む権利まで奪ってしまった。

[出処:資料写真]

二番目は押収・捜索令状の容疑事実が「不法賭博と暴力行為」と書かれていた というが、実際には食堂の中では平凡な移住労働者が正月のパーティをしてい ただけだ。不法賭博も、暴力もなかったという。ここで三つ目の問題が生じる が、警察は現場に何の惑いもないことを確認したのに、食堂の移住労働者の身 分をすべての強制的に検査し、未登録移住労働者9人を摘発した。

現場に何の問題もなければ撤収すべきなのに、なぜ摘発行為をするのかという 抗議に、京畿警察庁2庁(議政府所在)外事掛は「警察にも摘発権限があり、現場 に仁川空港入管職員がいたので問題はない」という理由を上げた。それと共に、 実際に自分たちが現場を間違って把握して出動した、不法行為は別の場所だっ たようだと弁解をならべた。議政府の警察が東大門側食堂の状況をどう把握し たのかという問いには、自分の所轄区域内にある『望遠』による情報といった。 結局警察は自分たちが管理する情報部員から誤った情報を得て、間違って出動 し、いわれのない人々だけを捕まえて行ったのだ。さらに、捕った人の中には 結婚ビザを持つ女性もいたが、身分確認の末、数時間後に解放された。他は摘 発から一週間ほど後に本国に追放された。

この事件は警察が大々的に動員され、直接摘発行為をしたことに大きな問題が ある。出入国法の未登録滞留者は、保護と強制退去の対象だ。この手続きは通 常の行政手続きで、刑事手続きではない。また外国人が未登録滞留にあたると 疑われる相当な理由があり、逃走または逃走の心配がある場合は、出入国管理 公務員が保護命令書の発行をうけ、その外国人を保護できるようにしているが、 これは深刻で例外的な場合に刑事手続きが取られるのであり、一般的なオーバー ステイの場合は刑事的な制裁はない。実際、未登録滞留者がオーバーステイを 理由に取り締まられても、何も刑事罰も罰金もなく、ただ強制退去という行政 的な措置だけを受けることになる。

つまり未登録滞留者は犯罪者ではなく、警察による刑事手続きの必要はない。

出入国管理法では滞留資格がない者を保護する主体は、出入国管理公務員だけ だ(出入国管理法第51条第1項)。警察公務員が出入国管理法の行政手続きに直接 介入する唯一のケースは、出入国管理事務所長などが執行依頼書を発行し強制 退去命令とともにこれを交付し、強制退去命令書の執行を依頼した場合に限ら れる(出入国管理法第72条第2項、同法施行令第77条第2項)。したがって出入国 管理法上、警察公務員は強制力により、滞留資格のない滞留者を『摘発』また は保護する権限がないのは明らかだ。何よりも刑事手続きの強制的な警察力を 一般行政手続きにも発動できるという発想があるのなら、これは望ましくない ばかりか、法的にも容認できない。(ファン・ピルギュ、「出入国管理と警察」、 2007)

しかし政府はいつも未登録滞留者を『不法滞留者』と呼び、彼らを犯罪者のよ うに言い、そうしたイメージを社会的に刻印させてきた。国連や国際人権機構 は未登録滞留といった非正規的移住を犯罪とは考えず、犯罪者扱いをせずに、 懲罰的な性格をもつ拘禁をしてはならないという非犯罪化原則を明言し続けて きたが、韓国政府には馬の耳に念仏であった。

むしろ李明博政権になって、移住民への犯罪者化の悪宣伝は劇的に増えた。そ の決定版が昨年できた『外国人組織犯罪合同捜査本部』だ。数十の外国人組織 暴力団が暗躍していると言い大統領府の指示で作られたが、今まで何の結果も 出てきていないようだ。移住民が犯罪者集団であるかのようなイメージを強め ただけだ。その上、未登録滞留者摘発の実績を上げるため、法務部は地域の出 入国管理事務所にノルマを賦課して非難され、警察は不審検問や交通摘発等で、 陰に陽にこうした反人権的強制摘発を助長しているのが実情だ。

こうした騒動の最大の被害者は未登録移住民だ。自転車に乗っていてバイクと ぶつかり怪我をしたのに、警察が出入国管理所に渡し、強制退去させられたネ パール人、韓国人に暴行されて警察に申告したところ、事件処理ではなく入管 に渡され、やはり強制退去させられたフィリピン人、金品を恐喝されても出国 させられるかと警察に申告もできないバングラデシュ人、単なる信号無視で入 管に渡されて追放されたインドネシア人など、今日も多くの未登録移住民が単 にビザがないという理由だけで人間として享受すべき基本的な権利まで残忍に 剥奪され、ひっそりと暮している。

「不法な人間はいない!(No one is illegal!)」。これは国際的な移住労働者運 動の共通のスローガンだ。未登録滞留という行為が具体的な誰かに具体的な被 害を与えるものではないため、われわれは犯罪者ではなく堂々とした人間であ り、労働者だという尊厳性の宣言である。いわゆる経済的に裕福な国で未登録 滞留者がいない国はない。米国1200万、ヨーロッパ連合500〜1000万、中国国内 農民工1億3千万など、移住の時代に未登録滞留は必然的な現象だ。移住民の犯 罪者化と無条件の追放は、人権を侵害して移住民の胸に恨を抱かせるだけで、 韓国社会への反感を高める。摘発に注ぐ努力と費用をいっそ合法化政策と人権 改善に使えば、今のような状況はこなかっただろう。

警察が押しかけ、さらって行った東大門のネパール食堂の主人は、「韓国食堂 だったらこんな方法をとっただろうか」と鬱憤をぶちまけた。その事件以後、 急に客も減り売り上げも殆どないという。そして彼は摘発の人権侵害を理由に 国家人権委に陳情を提起した。誰も望まない強制摘発が消えることが私たちす べての望みだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-04-19 01:53:51 / Last modified on 2010-04-19 01:53:52 Copyright: Default

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