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MBの仲間たちが掌握した放送

[連続寄稿、MB3年](13)市場主義を標榜する反市場的な言論再編

キム・ソジュン(聖公会大) 2011.06.10 10:34

李明博政権の言論政策は、放送産業の成長を名分として言論を保守的に再編し ようとすることだった。李明博大統領は候補だった時から市場原理に立脚した 規制の最小化と自由化政策パラダイムにより、『放送』を競争指向的な『放送 市場』体制に転換させることでコンテンツ産業と機器産業などの関連産業分野 でも画期的な市場の変化を誘導すると主張した。ここには放送の公共性につい ての真摯な悩みはなかった。だが、大企業と新聞の放送ニュース領域への進出 を認めることは、現政権の放送政策が達成すべき絶対の課題だった。

市場主義者たちは、大企業や新聞の放送産業進出機会を拡大することは憲法が 認める自由を拡大し、産業の発達を促進する望ましい政策だと主張する。だが、 これは修辞学的な詭弁でしかなく、公共性を持つ放送ニュース領域を私企業に 払い下げるだけだ。放送ニュースができる地上波と総合編成チャンネル、報道 専門チャンネルは、単なる放送産業ではなく言論の領域だ。したがってこれを 私的資本の利益を極大化する方向に再編することは、民主主義の多様性を認める 最低の保護装置を破壊して世論を支配し、権力の永続化を試みるということだ。

政治工学的な観点から見れば、言論の公共性より量的な成長を基準として放送 産業の極大化を強調し、ハンナラ党の観点では権力の創出に最大の障害だった と考えられる地上波放送を分解しようとするシナリオが作動しているのではな いかという観測もあった。そして、その憂慮は現実になった。

「MBの政治的同志が放送局を掌握」

政府はまず報道機関の支配構造を掌握した。つまり、放送政策総括機構の放送 通信委員長に候補時代の政治特別報道官だったチェ・シジュン氏をつけること で、以後、公営放送社の社長選任や放送政策において言論の独立性を侵害する 可能性を確保した。そしてその後、KBS、YTNをはじめとする各放送局の社長に 大統領候補時代の政治特別報道官をつけた。言論関連機関の場も考えると、 数十人の特別報道官を配置した。まさに特報全盛時代だと言える。今MBCで 見られるように、親与党的指向の人物が放送局の社長や経営陣になるのも非常に 危険だが、大統領の『政治的同志』が放送局を掌握し始めたのだ。

その上、その過程も民主主義に逆行し、人権を侵害するものだった。公営放送 理事のシン・テソプ教授を所属の学校からの解任を誘導し、これを根拠として 理事から解任するという手口を動員した。こうした手口で多くの政府側的理事 が法的な根拠もない解任提案権を創案してそれを行使し、大統領は超法規的な 社長解任権を行使した。この過程で、独立であるべき監査院まで動員する国政 壟断が行われた。その他にも、社長の任命による放送掌握に抵抗する多くの ジャーナリストが犠牲になった。KBSでは大量懲戒と報復人事が、YTNでは6人の 解職、MBCでは労組委員長の解雇などが行なわれた。もちろん司法府はこうした 懲戒は不当だと判決したが、判決まで1年以上の苦しい期間が過ぎただけでなく 判決が出ても、その不当な措置を原状回復する後続措置は取られていない。

批判言論、時事番組を追放

支配構造を掌握する以外にも、番組への圧迫を加えた。放送通信審議委を通じ、 時事番組への懲戒を決め、掌握した支配構造を通じて番組を廃止したり性格を 変えさせた。KBSでは時事トゥナイトを廃止し、調査報道チームを解体した。 KBSがキム・ジェドンを番組から降板させ、芸能人の社会的発言を制限すると、 MBCもソン・ソッキを降板させ100分討論の鋭鋒を折った。そして最近ではいよ いよMBCがキム・ミファを追い出した。

PD手帳の場合は民事訴訟を提起し、刑事起訴し、圧迫を加えた。民主化された 社会ではあるはずもない公職者名誉毀損を適用し、処罰しようとしたのである。 司法府は、最終的にPD手帳の言論機能を支持した。だがMBCは、こうした判決の 意味を受け入れていないことは明らかだ。公営放送の首長なのに『青瓦台に入 り、向こう脛を蹴飛ばされて』 MBCの人事を断行したというキム・ウリョン前 放送文化振興会理事長の発言で、すでに社長の資格を事実上失ったキム・ジェ チョル社長のMBC馴らしは執拗だ。MBCの公共性の象徴である局長任命同意制を 無力化するために、団体協約を一方的に解止し、最近ではPD手帳の代表的な人 物であるチェ・スンホPDをはじめとする製作スタッフを番組から追い出した。 そしてPD手帳の4大河川編に続き、南北経済協力編の放送を妨害した。政府への 批判を認めないという確固たる信念の表れだ。

市民の批判も、公権力を使って弾圧した。キャンドルデモを起訴し、インター ネットを通じた意思表現を抑制し、市民の自発的な言論批判を刑事的に処罰し た。代表的な事例が、言論消費者主権国民キャンペーンの広告主不買運動への 刑事処罰だ。経済的な利害当事者ではない一般市民が言論に抗議するために、 広告主不買運動をすることは、憲法が保障する表現の自由の行使だ。米国など の民主主義国家でよく見られる方式だ。だが検察はこれを起訴し、処罰しよう とした。司法府は選別処理して、一部には無罪、一部には罰金刑を宣告した。

メディア法の改悪...朝鮮・中央・東亜・毎日経済、総編に選定

現政権は、こうした言論掌握を制度的に固定するためにメディア関連法改正を 強行した。今回の法改正は内容はもちろん、その改正手続きが反民主的だった。 まず、内容面で公共領域を縮小し、資本の進出を容易にすることで市民の意思 表明の機会を縮小し、既得権集団の社会的な影響力を高め、公共の財源を私的 な利益に還元させようとするという面で反民主的だ。

公共の資産である電波を使う地上波に、すでに言論権力である新聞の経営参加 を認めたばかりか、韓国社会の権力の頂点にある資本権力、つまり大企業の経営 参加を許容したのだ。また、ニュースを放送できる総合編成チャンネルと報道 専門チャンネルに大企業、新聞はもちろん、外国資本の進出も許容した。国家主権 の意識も失われた。

では、このようにして民主的価値を放棄すれば放送産業が成長するのだろうか? 政府の放送産業成長の主張には説得力がない。GDPに放送産業が占める割合を、 その他のOECD国家と比較すれば、韓国の放送産業はすでに飽和状態だからだ。 市場論者の観点から見ても、公共領域である地上波の財源を私的資本に移転する 効果以外に何の実益もない政策でしかない。

法改正の過程そのものも非民主的だった。ナ・ギョンウォン議員など国会議員 も誰も理解できないと認めた法を、討論も説得もなく改正しようとして、国民 の世論調査さえ予算を理由として拒否し、結局、国会法の手続きを無視して 強行通過させた。憲法裁判所はこうした手続きの違反は違憲、違法だったと 判決し、国会が解決の主体だと判断した。だがハンナラ党は国会議員の審議 議決権という本質的な権限を放棄して、全く是正の努力をしなかった。その結果、 内容も手続きも反民主的なメディア関連法が施行された。

そして、これに基づいて新聞市場の世論寡占メディアである朝鮮・中央・東亜 と毎日経済が主導するコンソーシアムを総合編成チャンネル放送事業者(総編) に選定した。総編選定も、手続きからして問題だった。放送通信委は基本審査 計画案の公開から3か月半、確定から2か月半、細部審査計画案の公開から1か月、 公告から20日で申請を締め切った。予備事業者の準備期間としては、あまりに 不足な期日だ。当初、内容の評価は重要でなかったようだ。客観的評価の精良 評価項目で一等になれない朝鮮・中央・東亜は主観的評価の誠意評価の項目ほ とんど並んで1、2、3位中に入ったという事実が拙速進行の意図を反証するのだ ろうか。そして世間の予測の通り、朝鮮・中央・東亜が総編事業者になったのだ。

そして放送通信委員会は、地上波と同じ受信者を対象に競争する総編事業者は すでに放送圏域、義務送信、放送広告時間、放送広告販売制度、放送編成、放送 審議、すべてにおいてすでに地上波より特典が多くなる状況なのにチャンネルの 配分、放送発展基金、広告種類などで特典をさらに多くしようとしている。総編の 導入が放送産業を活性化させるという名分と違い、特典で成長させるということだ。

李明博政権の言論政策は、公共の利益を私的資本の利益に転換させ、私的資本 が掌握した言論を通じ、保守陣営の永久執権を試みようとしているという点で、 市場主義を仮装した反市場主義者の政治的執権戦略だったという評価が適切だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-06-13 04:32:28 / Last modified on 2011-06-13 04:32:48 Copyright: Default

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