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サイバー侮辱罪、キーワードは「統制」

[メディア関連法診断](2) -情報通信網法

ユ・ヨンジュ記者 www.yyjoo.net / 2008年12月15日13時47分

12月3日にハンナラ党が発表した7本のメディア関連法改正案は新聞の放送兼営 許容、資本の放送進出条件緩和、インターネット統制を核心としている。とこ ろが新聞の放送兼営許容は、朝鮮・中央・東亜と財閥の放送所有という点で、 民主党の利害と対立するが、資本の放送進出条件の緩和とインターネット統制 の側面から見れば断定するのは難しい。

韓米FTAのメディア分野交渉の結果によれば、PP(放送チャンネル使用事業者)の 外国人間接投資許容、PP国産番組義務編成割合緩和、1か国輸入クォーター制限 の緩和などの内容が含まれる。韓米FTAが発効し、放送法とマルチメディア法の 改正案などが行われれば、国内外資本のメディア進出を規制してきた枠組みは 事実上崩壊する。その意味で、民主党の議員が何もなかったかのように、ただ 『言論掌握7大悪法』と書かれた横断幕を持ち、メディア運動の主導者と並んで 立っているのは、まったくひどい場面だ。

情報通信網法改正案、サイバー侮辱罪提案理由、『被害意識』?

ハンナラ党が推進しているサイバー侮辱罪は、情報通信網法で新設するナ・ギョ ンウォン議員案と、刑法にサイバー侮辱罪を新設するチャン・ユンソク議員案が あるが、立法の趣旨は違わない。

情報通信網法改正案の主な内容は、△権利侵害主張者の申請があれば、情報通信 サービス提供者は速かに臨時措置をした後、この事実を関連者に通知、告知、 △30日間の臨時措置期間中に該当情報の掲載者が異議を申請できる、△異議申請 がなければ該当情報を削除、異議申請があれば紛争調整部で権利侵害について 判断し、情報通信サービス提供者が削除あるいは臨時措置を解除、△公然と人を 侮辱する情報に対し、放送通信委員会が放送通信委員の審議を経て、情報通信 サービス提供者などに取り扱い拒否、 停止、制限命令ができるように、侮辱性 情報を不法情報化する、△2年以下の懲役や禁固または1千万ウォン以下の罰金だ。

進歩ネットワークセンターのオ・ビョンイル活動家は、情報通信網法改正案の 立法趣旨がインターネットに対する保守勢力の『被害意識から始まったようだ』 と診断した。

「遡れば、インターネットの世論が盧武鉉政権の誕生に大きな役割を果たし、 今年の米国産牛肉輸入に反対するキャンドルデモが広がったのもインターネッ トが中心的な役割を果たしたからでしょう。インターネットがハンナラ党に有 利に作用したことはないばかりか、被害意識のもう一つの側面は、政府やハン ナラ党がインターネット世論を自分たちへの『正当な批判』と認識せず、政府 の政策への歪曲や無分別な非難と認識しているということです。」

ハンナラ党は自分と違う見解を『情報の歪曲』として、自分への怒りの表現を ただ非難や侮辱と受け止めているという指摘だ。これによるインターネット統 制政策は、保守勢力の文化的保守主義とも結びついている。

「事実、インターネット実名制や行政府の検閲のようなインターネット内容規 制の基本的な枠組みは、盧武鉉政権の時にすでに用意されていました。李明博 政権のインターネット政策は、こうした基本的な内容規制の枠組みに過去の独 裁政権時期のような強圧的統制方式を加えたものです。捜査機関が政府への批 判を恣意的に統制できるようにする『サイバー侮辱罪』や、事業者を私的検閲 官にする『モニター義務化』がそうした事例でしょう。」

去る7月1日、放送通信審議委はダウム・アゴラに掲載された58本の書き込みに 削除命令を下した。放送通信審議委員の政治的指向による決定という議論もあっ たが、審議機関が司法的審判をする越権を行使した点も俎上に上がった。

ダウムのカフェ『李明博弾劾のため汎国民運動本部』に書き込まれた掲示文を 審議して『言語純化と誇張された表現の自制勧告』したことを見ると、MBを 『頭容量2MB(李明博)』、『ずるがしこい人』などと表現したことが人格をさげ すんだのだと。ここまでくれば、社会構成員の日常的な『言語生活』を統制す るという発想と言えないだろうか。

サイバー侮辱罪、サイバー統制の白眉

ハンナラ党の情報通信網法改正の白眉はサイバー侮辱罪。サイバー侮辱罪の問 題は大きく2つに圧縮できる。一つは何が『侮辱』なのかが不明確だということ、 もう一つはこれを『反意思不罰罪』(被害者が加害者の処罰を望まないという意 思を表明すれば処罰できない犯罪)と規定したこと。

刑法の侮辱罪は、親告罪が適用されるか、サイバー侮辱法は反意思不罰罪と規 定し、捜査機関が介入して警察が恣意的に捜査を始められるようになる。

最近、言論人権センターがナ・ギョンウォン議員などに「金泳三前大統領を露 骨に侮辱した『ミネルバ』を処罰しますか? ムン・グニョン氏の先行を悪意で 侮辱したチ・マノン氏を露骨に誹謗して侮辱したネチズンを処罰しますか?」と 公開質疑をしたのも、サイバー侮辱罪の立法内容の問題を示す事例だ。

捜査機関はインターネットで起きる多くの一般人の侮辱を解決する組織でもあ るが、そのためにどれほど多くの捜査人員を配置するのか等も改正された後で よく見る必要がある風景だろう。

外国の事例には、ぴったり当てはまるものはないが、侮辱を犯罪で刑事処罰し ている国は日本とドイツ程度だ。だがドイツでは最後の有罪判決が1960年代で、 日本では処罰が非常に軽いという。ほとんどの先進国では名誉毀損の刑事処罰 も廃止されたり死文化している。理由は侮辱や名誉毀損が権力者により政治的 に乱用されているためだという。

付加サービス領域も統制

情報通信網法改正案は、情報検索の結果の操作を禁止して、検索広告を区分し て表示するようにした。また不正クリック(他人の広告をクリックして、広告費 を増加させる行為)を禁止する内容を含んでいる。

オ・ビョンイル活動家は付加サービス領域規制も否定的に見た。

「大部分の国家では、ほとんど付加サービスの規制をしていません。これはイ ンターネットの付加サービスは果てしなく多様で、下手に何かの規制を導入す ると、むしろ創造的で多様な付加サービス開発を阻害しかねないからです。」

情報検索結果の操作とは何か。たとえば特定のファンクラブの会員が特定の時 点に同時にクリックを誘発し、自分が好きな芸能人が検索の上位にくるように することができる。こうした行為も『操作』と規定される。このような行為を 規制することが適切なのだろうか。

改正案の代表的毒素条項、『モニター義務化』と『臨時措置義務化』

サービス提供者は、今でもポータルなどを自主的にモニターしているが、これ はあるいはあるかもしれない不法情報のほう助責任を免じるためだ。ところが 『モニター義務化』は法的問題が発生した時に責任を負うことになるという点 で違う。

「どうなるでしょうか。何かの法的問題が発生した時、ポータルが『モニター をきちんとしなかった責任』を負うことを意味します。ポータルは法的責任を 避けるために、少しでも問題になりそうだと思う掲示物を削除するようになる でしょう。現政権がインターネットを『放送局』と同じように見ているのでは ないのかと気になります。自分のネットワークを通じて伝えられるすべてのコ ンテンツに対して、発行者としての責任を負うという意味でですね。」

オ・ビョンイル活動家は指摘する。まだ改正案が通過もしていない去る7月、放 送通信審議委の掲示物削除命令の後、ポータルなどのサービス提供者は特定の 掲示物を自主的に削除するなどの臨時措置でネチズンと頻繁に衝突を起こして いる。

「インターネット実名制拡大も問題です。すでに政府は施行令の改正で実名制 義務化の対象を同時接続者10万人以上のすべてのサイトに拡大しました。これ に加え、改正案は『10万人以上』という基準も削除しました。政府がそのつも りになれば施行令を変えて、インターネット全体に拡大できるわけです。」

おもしろいのは、このような政府のインターネット統制が国内事業者に制限さ れているという事実だ。国内法だから当然だ。ハングルサービスをしていても サーバーや事業者が海外にあれば法の規制が届かないから。ヤフー英文サイト やgoogleに加入する時には本人確認は必要ない。ダウムやネイバーのような国 内ポータルは海外事業者と比べ、不必要な規制をすることで結果的に差別され ることになる。

サイバー統制法ではなくサイバー人権法を

オ・ビョンイル活動家はメディア行動のインターネット統制TF活動の成果を基 礎に、最近『サイバー人権法』を提示した。別の立法案を制定するという趣旨 ではなく、サイバー侮辱罪新設、インターネット実名制拡大、インターネット 監聴許容(通信秘密保護法)などの政府のインターネット統制の問題を指摘し、 代案の方向性が必要だという問題意識からだ。

「盧武鉉政権の時には政府の内容規制政策への反対に集中していたが、むしろ 李明博政権になってから政府の政策への反対を越えて、自分たち独自の代案を 作っています。ハンナラ党が掌握している現国会で、私たちの立場が貫徹され ると期待するのは難しいが、私たちの究極的なイメージがなければ李明博政権 の後を見通す長期的な闘いができませんからね。」

これまでの情報人権運動10年の過程を振り返っても、もはや『反対』だけを話 していられる状態ではない。情報通信網法と通信秘密保護法により、市民社会 に対する国家権力の監視統制を強化しようとする流れを防ぎ、代案の方案性を 提示する時になった。

オ・ビョンイル活動家は情報通信網法改正提案の要旨を次のように話した。

「まず、強制的なインターネット実名制は廃止しなければならず、二番目に、 私生活侵害や名誉毀損のようなインターネットでの紛争には迅速な代替的紛争 解決制度を用意します。三つ目、放送通信審議委の審議対象は縮小しますが、 特に放送通信審議委があらゆる形態の表現に司法的権限を持たせる『その他の 不法情報』という曖昧な規定は削除しなければなりません。四つ目、現在、行 政機関である放送通信委に最終的な司法的権限(削除権限)を持たせている制度 を廃止し、掲示者が望めば司法的判断を求める権利を与えることと考えていま す。」

このように、サイバー人権法は国家権力のサイバー統制ではなくネチズンの自 律的な機能を強調する。したがって市民社会の権利保護、保障を基本趣旨とす る。これは国家権力への監視と統制、表現の自由を拡張するもので、上からの 統制ではなく下からの社会化としての『統制』を意味する。

当分は難しい。サイバー侮辱罪を含む『言論掌握7大悪法』は通過の可能性が非 常に高い。7大悪法が適用されると、インターネット空間は今よりさらに強力な 上からの監視が作動することになり、政治と資本と事業者と利用者間の混乱と 対決も絶えなくなるだろう。

退屈で苦しい過程かもしれないが、およそ自由というものは闘いで得られるも のだ。社会構成員自らが、自由に表現し、制約なく対話することにより、市民 社会の自律的能力を拡張すること、その方案が一つずつ、少しずつ蓄積されて いることは幸いだ。サイバー人権法、この際、制定案を用意してみてもいいの ではないだろうか。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-12-27 17:33:43 / Last modified on 2008-12-27 17:35:18 Copyright: Default

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