本文の先頭へ
LNJ Logo 君が代不起立〜門真三中処分撤回求め裁判提訴
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1257257773835st...
Status: published
View


大阪の松田勲です。

08年3月卒業式で「君が代」不起立の大量処分が出た門真市立第三中学校の、訓告処
分を受けた川口教諭が、11月2日、大阪地裁に処分取り消し等を求めて提訴しました。
以下はその報告です。

------------------------------------------------

Subject: [germinal:05555] 門真三中「君が代」処分取消訴訟

大阪の田中直子です。

いくつかのMLに投稿します。重複される方、お許しください。

昨年3月、大阪府門真市の市立門真三中卒業式で、担任団席にいた教職員全員と
卒業生の1名をのぞく全員が「君が代」斉唱時に着席し、それが産経新聞で大々
的に報道されて、右翼のバッシングの対象となったことを皆さんご存じかと思い
ます。その後、門真市教委は、右翼の動きに促されるようにして、担任団からの
事情聴取を繰り返し、今年2月20日、着席した担任と副担7名に厳重注意処分、
着席に加えて事情聴取を拒否した担任1名(3回まで事情聴取に応じたものの、
4回目は拒否)に文書訓告処分を言い渡しました。

文書訓告処分を受けた川口さんは、それを不当として裁判闘争を決意し、昨日提
訴。提訴後には裁判所記者クラブで記者会見を行いました。川口さんには代理人
弁護士3人と、門真三中への「君が代」処分をただす会代表、守口市議の三浦た
けおさんが付き添い、約15人の支援者が見守りました。出席した記者は7・8
名、テレビ局が1社来ていました。
川口さんは、教職員や卒業生のほとんどが「君が代」斉唱時着席するというのは、
門真市でも大阪府全体でも、よくあることであり、これまで、それが特に問題視
されることもなかった。にもかかわらず、職務命令も出ていない中での不起立に
対して処分が出されたのは、報道とそれにリンクした右翼の動きに市教委が促さ
れた結果であり、大変危険なことだと思う。現場の教員は、学校に「君が代」が
押しつけられるのは、軍国主義化の表れだとみんな感じている。このままでは戦
前の教育に戻ってしまう、単に自分だけの問題ではないと考えて、提訴を決意し
たと語りました。
記者からは、生徒達に「君が代」についてどう説明したのかという質問が多く出
ました。川口さんは、門真市では、卒業式前日に校長が、「斉唱時に着席するか
起立するかは、内心の自由の問題である」という主旨の説明をするのが通例であ
り、この時もそれが行われたこと、自分は担任として生徒達に、「僕は明日着席
する。それで動揺しないように、各自、自分はどうするかを自分で決めてほしい」
と語りかけたことを話しました。その際、自分が「君が代」に起立できない理由
として、長崎の出身であり、原爆の被害を身近に見て育ったこと、父親が戦争で
他国の人を殺した経験を自慢げに話すのを聞いて、戦争教育の怖さを痛感したこ
とを生徒達に説明したのだそうです。
提訴の訴状でも、平和教育・人権教育の結果として、生徒達の着席がごく自然な
ものであったことが詳しく説明されています。

今朝の朝日新聞大阪版には、以下のような記事が掲載されました。
 君が代で不起立 「訓告不当」提訴  大阪の中学教諭
  昨年3月の卒業式で、君が代斉唱の際に起立しなかったことなどを理由に訓
 告処分とされたのは不当として、大阪府門真市立第三中学校教諭の川口精吾さ
 ん(56)が2日、処分の取り消しと、府と市に200万円の慰謝料を求める
 訴えを大阪地裁に起こした。
  訴えによると、卒業生のクラス担任だった川口さんら教諭8人と、卒業生1
 60人のうち159人は卒業式の君が代斉唱時に起立しなかった。市教委は今
 年2月、当時の校長と川口さんを文書訓告、他の教諭7人を口頭厳重注意とし
 た。川口さん側は「起立を求める職務命令は出ておらず、処分は思想信条や表
 現の自由を侵害している」と主張している。
  市教委と府教委は「訴状が届いておらずコメントできない」としている。
  
大阪府では、今春、この門真三中の事例をジャンプ台にしたかのように、担任団
全員が不起立だった学校において教職員への事情聴取がかけられ、職務命令もな
い中での不起立に厳重注意処分が出されました(3校42名)。厳重注意処分を
うけた教職員がさらに不起立を繰り返せば、処分が重くなる可能性もあるとの言
葉が府教委から出ています。そんな状況下で、門真の当該教員が処分を不当とし
て闘い始めたことには大きな意味があると思います。
12月末か1月に第一回口頭弁論が行われる見込みです。裁判の行方にぜひご注
目ください。
長文になって申し訳ありませんが、訴状を貼り付けさせていただきます。
お読みいただければ幸いです。
********************************
訓告処分取消等請求事件

請求の趣旨

1 門真市教育委員会が原告に対してした2009年2月20日付け訓告処分を
取り消す。
2 被告大阪府及び被告門真市は、原告に対して、各自金200万円及びこれに
対する2009年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 この判決は、第2項に限り、仮に執行することが出来る。
4 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決を求める。

請求の原因

第1 当事者
原告は、2007年度中に門真市立第三中学校(以下「三中」)に在職し、同年
度の2008年3月13日に行われた卒業式に出席した教職員である。
被告大阪府(以下「被告府」)は、大阪府教育委員会(以下「府教委」)を設置
し、被告門真市(以下「被告市」)は、処分行政庁である門真市教育委員会(以
下「市教委」)を設置している。
後述のとおり、市教委は、2009年2月20日、原告に対して文書で訓告処分
を行った(以下「本件処分」)。

第2 三中の2007年度卒業式
 1 卒業式は粛々と感動的に執り行われた
   2008年3月13日、三中の2007年度卒業式(以下「本件卒業式」)
が、近年の慣例どおりの式次第にのっとり、3年間の学習活動の総まとめの学校
行事として、粛々と感動的に執り行われた。そのなかで、府教委及び市教委の圧
力のもとで導入された「君が代」斉唱に際して、担任団席に列席していた各クラ
ス担任及び副担任の教職員が全員着席し、卒業生のなかでは1名が起立したまま
であったほかは、全列席者が着席した。
   しかし、そのことが本件卒業式全体に影響を及ぼすことは全くなく、卒業
生たちはそれぞれの感慨を胸に晴れ晴れと巣立ち、他の列席者たちは卒業生たち
の成長をみとどけて感動を共にしたのであった。本件卒業式後の教職員による総
括の議論でも、だれもが素晴らしい卒業式であったと発言していた。
 2 本件卒業式に至る三中における歴史教育、人権教育、平和教育と「君が代」
指導
   三中では、学校全体として人権教育と平和教育を大切にして、教科指導や
ホームルーム指導などをとおして、各教職員が上記教育の実践につとめてきた。
本件卒業式をもって卒業していった学年の担任団においても、3年間をとおして
これを実践し、生徒たちとともに考え、学んできた。そのなかで、「日の丸・君
が代」についても学習し、歴史の真実と向き合い、平和と人権を大切にする立場
にもとづいて、それぞれの生徒が自ら判断して行動する力を身につけていくこと
をめざしてきた。教職員についても、教育者としての立場から当然のこととして、
生徒たちとともに学び、そのことを常に心がけてきたものである。
   なお、以上のことは、格別に三中において実践されてきたというより、門
真市の教育全体がめざしてきたものであり、また、大阪府下の全域で取り組まれ
てきた教育実践の伝統であった。
 3 本件卒業式が三中の学校方針どおりに挙行された事実
   本件卒業式を迎えるにあたっての三中の方針は、「君が代」斉唱を式次第
にのっとって実施する場合も、卒業生たちや保護者らの列席者に対して、「君が
代」の斉唱と敬意の表明となる起立を強要せず、それぞれの判断にゆだねるとい
うことであった。このことは、府教委及び市教委からの執拗な指導のもとで「君
が代」の斉唱と起立が導入された時以来、常に確認されてきたことであった。そ
のため、卒業生の担任を務めていた原告と他の教職員は、卒業式に向けてのホー
ムルームや学年集会等の機会に、生徒たちに対して「君が代」斉唱時に起立する
か着席するかは各自で判断するよう話をしていたのであり、着席するよう指導し
たことはない。
   また、原告を含む担任団の教職員自身も、各自の信条と判断によって起立
するか着席するかすることとしていたのであり、学年団全体で着席するとしたも
のではない。この点については、三中の瀬戸和夫校長も職員会議等で「起立をお
願いします」という以上のことを言ったことはなく、「君が代」不起立処分の係
争事例にみられるような起立についての職務命令も、本件卒業式の前には出され
ていない。
   さらに、三中の過去の卒業式でも、「君が代」斉唱に際して卒業生の相当
数が着席したことがあり、毎年のように多くの教職員が着席してきたが、そのこ
とについて、卒業式の挙行に問題があったと職員会議等で総括されたことはない。
   むしろ、卒業式前日のリハーサルでは、校長から「着席するか否かは内心
の自由」である旨が述べられるのが通常であり、本件卒業式のリハーサルでも、
同様の言葉が校長の口から述べられていた。
   したがって、本件卒業式は、これまでの三中の学校方針どおりに挙行され
たのであり、1名の卒業生が起立したままであったことも、その他の卒業生が着
席したことも、同校の教育方針が貫かれた一つの結果であるにすぎない。
 4 門真市立中学校及び大阪府下の中学校での卒業式の全体状況と日常の教育
活動
   前記の卒業式における事情は、三中にかぎったことではない。門真市立の
各中学校において、過去においても、2007年度卒業式に際しても、多数の卒
業生と教職員が着席した事例が存在する。このことは、ある程度の地域的な差は
あるとしても、大阪府下全体にわたって言えることであり、「君が代」斉唱の際
の卒業生や教職員の着席は広範囲にみられてきたものであり、門真市が例外的な
のでは決してない。三中における卒業式前日のリハーサルにおける校長からの注
意喚起についても同様である。
   むしろ、国旗国歌法制定以来の「君が代」斉唱の強要にもかかわらず、大
阪府下の教育実践の伝統からして、多数の不起立者が出るのが当然であったが、
府教委による執拗にして不当な指導圧力によって、自由な意思で着席することが
徐々に困難になってきているというにすぎない。しかし、これは、生徒の内心の
自由を侵害するものであって、極めて問題である。なぜなら、教職員が着席する
自由を実践しなければ、生徒が自由に着席することは極めて困難だからである。
結局、府教委及び市教委による不当な教職員に対する指導圧力は、生徒に対する
内心の自由の実践行為を奪う結果となっているのである。

第3 本件卒業式以後、本件処分までの事実経過
 1 2008年
   3月13日  門真市立中学校卒業式。「君が代」斉唱の際、三中で担任
席の全員と1名をのぞく卒業生169人が着席した。本件卒業式後に三中の瀬戸
校長が学年団に事情聴取を行う。
   3月27日  産経新聞が、三中の本件卒業式を、「三中 国歌斉唱 起
立一人 卒業生170人 教員が指導か」と報道する。翌日から数日間にわたり、
三中に全国の右翼勢力から抗議と罵倒の電話、FAXが殺到した。
   3月28日  産経新聞が、「『子供への影響、深刻に受け止める』集団
不起立問題で大阪府教育長」と続報。
   3月31日  府教委が府下の各地教委に「入学式における国旗掲揚・国
歌斉唱について」を通知。そのなかで三中卒業生の行動を「当該中学校や当該市
のみならず、府全体の公立小中学校の信頼を損なうもの」と非難した。
   4月 2日  産経新聞が、三中について、「国歌斉唱 不起立 担任全
員 指導認める」と報道。
   4月 7日  門真市立中学校入学式。式当日の朝、三中、門真市立第四
中学校(以下「四中」)で学校長が卒業学年担任団員に起立の職務命令を出す。
   4月10日  週刊新潮が、本件卒業式について、「たった1人の君が代
斉唱 門真市立中学の『異様な卒業式』」と報道。
  10月22日  市教委委の事情聴取の呼び出しに応じるよう原告に職務命
令が出されるが、原告はこれを拒否。
  11月21日  府教委から原告に事情聴取の呼び出しがなされたが、原告
が休暇を取得すると中止とされた。
  11月26日  隔週誌SAPIOが、本件卒業式を「『たったひとりの君
が代斉唱』事件の深い闇」と報道。
  12月15日  「評価・育成システム」の評価の訂正が行われたことで、
原告については、夏季一時金勤勉手当の過払い分として月例給与から控除が行わ
れた。
 2 2009年
   1月 9日  2008年度の卒業式に向けて府教委が通知を各府立学校
と地教委に出した。
   2月19日  府教委が市教委に対して、三中に関する処分内容を指示す
る通知を出した。
   2月20日  市教委が、三中瀬戸校長に訓告処分、原告に訓告処分、そ
の他担任団7名に口頭厳重注意の処分を下した。
   3月 5日  産経、朝日、読売各紙が一斉に三中における上記処分内容
を報道(毎日は翌日に報道)。
   3月 7日  三中のPTA総会で「君が代」問題が議論になる。
   3月 9日  大阪社会文化法律センターが市教委に処分の撤回等を申し
入れた。
   3月12日  卒業式に向けて右翼が街宣車で三中に押しかけ、校長に申
し入れをした。
   3月13日  門真市立中学校卒業式。当日、同市立第一中学校で3人、
三中で1人、同市立第五中学校で1人の各教職員に対して、起立の職務命令が出
される。

第4 市教委及び府教委が原告他に対して行った事情聴取の不当性
   原告と口頭厳重注意処分を受けた三中の担任団の各教職員は、本件卒業式
の当日のうちに瀬戸校長から最初の事情聴取を受け、その後、三中校内で1回、
市教委内で2回の事情聴取を市教委から受けている。市教委から受けた事情聴取
は、すべて授業時間内であり、この3度の聴取だけでも日常業務や授業に支障が
出るものであった。しかも、原告に対しては、さらに4回の事情聴取の呼び出し
が行われ、7回目には呼び出しに応ずるよう校長から職務命令まで出され、8回
目の呼び出しは府教委からのものであった。
   原告と担任団の各教職員らは、3回目までの事情聴取に応じて、本件卒業
式にかかわる事情について、瀬戸校長や市教委に対して答えている。その事情聴
取のなかで市教委は、各教職員の思想信条や日常的な教育活動の仔細内容につい
てまで質問を行い、原告らはその都度これに抗議をしてきた。それでも市教委と
府教委は、もはやそれ以上に聴取するべき事情などないにもかかわらず執拗にこ
れをくり返し、処分の理由付けを求めたのであった。
   これは、あらかじめ処分をするという結論を持ってのことと考えるほかな
い。
   原告が、4回目以降の事情聴取と2008年10月22日の職務命令を拒
否したのは、以上の事情からであった。また、そもそもこの職務命令は、教員の
職務とは言えない事情聴取に応じろというものであり、無効であると判断したこ
とと、不利益処分の調査のための聴取であるなら代理人弁護士の同席を求めると
したことに対して、市教委がこれを拒否したためであった。

第5 本件処分の内容と取り消されるべき理由
 1 処分理由にかかわる核心部分が意味をなしていない
   本件処分の訓告書(甲第1号証)の第一パラグラフは、まったく意味をな
していない。すなわち、「あなたは、あなたが勤務する門真市立第三中学校で行
われた平成19年度卒業式において、校長が所属教職員に対し、学習指導要領に
則り起立して国歌を斉唱するという指導を受けていたにも関わらず、これに反し
て国歌斉唱時に着席した。」という文面は、整合的で合理的な意味をなしていな
い。あるいは、無理にでも意味を読み取ろうとするなら、「校長が所属教職員に
対し、学習指導要領に則り起立して国歌を斉唱するという指導を受けていたにも
関わらず」という文面の一部を修正して読み換えるしかないものであり、日本語
的に明らかに誤った文面である。
   この部分は、その後段部分とつながって本件処分の第一の根拠をなすはず
の部分であるが、それが無意味である以上、ただ単に、原告が「君が代」斉唱時
に着席した行為が「不適切」であったと言っていることになる。
 2 本件処分は、思想信条の自由、表現の自由を侵害した不当処分である
   訓告書の第二パラグラフの「あなたのこの行為は、卒業式において学習指
導要領に基づき国歌斉唱を生徒に指導すべき立場にある公立学校教員として不適
切である」について、文部科学省発行の中学校学習指導要領の該当部分では「国
歌を斉唱するよう指導するものとする。」と規定されているだけであって、指導
の仕方や指導の結果については何の規定もしていない。
   国旗国歌法を制定した1999年の国会審議において、有馬文部大臣は
「その人に、本当に内心の自由で嫌だと言っていることを無理矢理する、口をこ
じ開けてでもやるとかよく話がありますが、それは子どもに対しても教えていま
せんし、例えば教員に対しても無理矢理に口をこじ開ける、これは許されないと
思います」と答弁して、生徒たちに対してはもちろんのこと、教職員が斉唱を拒
否する自由をも認めている。これは、戦後の日本の教育において、常に個人の尊
厳を重んじ、その思想信条の自由、表現の自由を尊重することが基底に据えられ
てきたことに基づいてのものである。
   本件処分については、斉唱したかどうかではなく、起立していたかどうか
で訓告処分が出されたものであるが、思想信条と表現の自由にかかわる問題であ
ることに変わりはなく、これらの自由を規定した憲法19条、21条に反する違
法な処分である。
 3 本件処分は、職務命令違反のない不起立を対象とした異例の処分である
   本件処分では、他の都府県にみられる不起立への処分事例とは異なって、
事前に起立せよとの職務命令が発せられていない。同じように学習指導要領にも
とづくとされている服務監督指導上の措置として、きわめて異例のことであり、
教育行政上の均衡を失したものであり、許されない。
 4 本件処分は三中の学校方針とそれに基づく教育活動への不当な支配である
   第2の2及び3で述べたとおり、本件卒業式は三中の学校方針に基づいて
挙行されたものであり、「君が代」斉唱に際して列席していた教職員が着席した
ことも、卒業生のほとんどが着席したことも、三中の教育方針に反するものでは
なく、むしろ、従前の例に倣って生じた一つの結果であるにすぎない。ところが、
これを偏向教育の結果だとする一部勢力が、新聞報道の直後から、全国的組織で
もって三中への抗議電話をかけたりFAXを送りつける運動を展開した。その結
果、本件卒業式を異常な事態だとする府教委やその指導圧力を受けた市教委が、
その指導権限を逸脱して、非常識なまでに教職員に対する事情聴取をくり返すな
どして、三中に対して圧力をかけ、その学校長をも訓告処分とすることで、三中
の学校方針の変更を強制しようとし、不当な支配を行おうとしたものである。
   これは、教育が「不当な支配に服する」ことがあってはならず、教育行政
は「公正かつ適切に行われなければならない」とした教育基本法16条に反する
ものである。
 5 本件処分が三中の教職員だけに出されたことの不当性
   卒業式、入学式に際して、多くの教職員が着席し、卒業生や保護者のなか
でも着席者が多数出ることは、三中にかぎったことではなく、門真市全体でこれ
までにもあったことであり、大阪府下では広範囲に続いていることである。にも
かかわらず、特別に職務命令が出されていたのでもないにもかかわらず、三中の
原告にだけ訓告処分、その他の教職員に対して厳重注意処分が出されたことは、
教育行政上の均衡を欠く不当違法なものといわなければならない。
 6 事情聴取拒否の職務命令違反について
   原告が市教委の事情聴取を受けるようにとの職務命令を拒否した理由は第
4で述べたとおりである。
したがって、訓告書で職務命令違反を処分理由に挙げているのは不当であり、本
件処分は取り消されるべきである。

第6 本件処分がもたらした影響の重大性
   本件処分及び処分に至る経過のなかで、市教委と府教委が行った事情聴取
の呼び出しや各学校への指導行為は、市教委による被処分者らに対してのみなら
ず、門真市内と大阪府下の学校と教育活動に重大な影響を与えた。
   具体的には、本件卒業式での卒業生の行為を非難して、「厳正に対処」す
る旨の2008年3月31日付けの府教委・教育長名の通知が出され、2008
年度の入学式に際し、三中と四中において市教委からの指導と圧力にもとづいて、
それぞれの学校長から原告を除く新入学年の担任団に「君が代」斉唱時に起立す
るよう職務命令が出された。これは、門真市内のみならず大阪府下全体の学校に
対して、その教育方針を不当に統制しようとしたものであり、それが大阪府下で
初めて出された起立を強要する職務命令であったことから、その影響は広範囲に
及ぶものであり、同年度の入学式への影響にとどまるものではなかった。
   とくに三中と四中では、担任団席に列席した教職員が起立を強要されたこ
とから、卒業生や保護者らが、その自由な意思で起立・不起立を選択し、内心の
自由を表現することに圧力が加えられた。
   さらに、当該学年団の教職員に対して繰り返し行われた事情聴取とその呼
び出しは、三中や異動先の学校の教職員全体に圧力をかけ続けたものであり、日
常における自由な教育活動を萎縮させ、とりわけ歴史教育、人権教育、平和教育
をゆがめようとするものであった。当該教職員たちがその圧力に屈しなかったと
はいえ、その影響は呼び出しによって授業が妨害されたことにとどまるものでは
なかった。
   また、本件処分は門真市立学校の2008年度卒業式の直前の時期に発せ
られたことから、同市立中学校のみならず、大阪府下全体の全学校の卒業式、そ
の後の入学式に影響して、教職員全体への重圧となり、ひいては卒業生、保護者
らをはじめ府民全体に「君が代」と国家への服従を強要しようとするものとなっ
た。
   実際に、2008年度卒業式、2009年度入学式に際して、門真市立中
学校の多くで各学校長より「君が代」斉唱時に起立するよう職務命令が選別的に
出され、列席した教職員全員に起立が強要されたのである。
   しかし、以上の事実にもまして重大で最も深刻な本件処分の影響は、本件
卒業式で卒業していった卒業生たちに与えた影響である。彼らは、中学校生活を
とおして学んできた歴史教育、人権教育、平和教育をそれぞれに受けとめ、社会
人へと成長していく基礎を身につけたものとして、それぞれの判断で起立するか
不起立するかを選択したのである。にもかかわらず、3月31日付けの府教委通
知によって「当該中学校や当該市のみならず、府全体の公立小中学校の信頼を損
なうもの」とまで非難され、担任教職員の処分を引き起こした責任を問われる立
場に立たされたのである。そして、いわば、本件処分をとおして、国の統治意思
に逆らえば恐ろしいことになる、という体験をさせられたのであって、国の主権
者として、自由な社会人へと成長していくことができなくされようとしているの
である。

第7 原告が受けた損害の内容
 1 教育活動の自由の侵害
   本件処分によって、三中をはじめ門真市と大阪府下のすべての学校におい
て、歴史教育、人権教育、平和教育の実践活動に不当な重圧が加えられてきたの
であり、原告がこのような重圧に屈することがないとしても、自由な教育活動が
陰に陽に影響を受けるに至っていることは間違いない。
   本件処分を下すことで学校と教職員全体に対して不当な支配圧力を加えよ
うとした府教委及び市教委の行為は決して許されるものではない。
   したがって、本件訴訟で重要なことは、そのような市教委及び府教委を設
置する被告府及び同市に対して、明示の金額で賠償を課することが、教育現場に
加えられてきた影響を払拭するために絶対に必要だということである。
 2 原告の精神的損害
   本件処分は訓告であり、服務監督上の指導行為であって懲戒処分ではない
とされているが、懲戒の意味合いを持った原告に対する不利益処分であることに
変わりはなく、本件処分を受けたことによる原告の精神的損害は決して小さくな
い。
   この精神的損害を金員で計ることはできないが、請求額である200万円
を下ることは決してない。

第8 結論
   以上のことから、本件処分は取り消されなければならず、原告のみならず、
すべての被処分者、そして卒業生たちの名誉は回復されなければならない。
   よって、請求の趣旨記載のとおり、市教委が原告に対してした本件処分の
取消を求めるとともに、府教委は市教委に違法・不当な本件処分を指導して市教
委が現に本件処分を行っただけでなく、府教委と市教委は、原告に対して不当な
呼び出しと事情聴取を繰り返したのであるから、それらを設置する被告市及び同
府に対しては、国家賠償法に基づく損害賠償請求として、連帯して、慰謝料20
0万円と本件処分がなされた日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
の支払いを求める次第である。
                                 以上


Created by staff01. Last modified on 2009-11-03 23:16:18 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について