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ストライキに立ち上がった『大借金社長』貨物労働者...「一生借金の奴隷」

ストライキ4日目の貨物労働者...みんな『路上の生』を知っているか

ユン・ジヨン記者 2012.06.27 14:39

大借金貨物労働者『キム社長』の一日

朝6時、目覚ましの音が騒々しく鳴る。コンテナを運ぶ貨物労働者、キム・ ヒョンソン(47)氏は三時間ほどの不足な睡眠で全身が重い。特に慢性的に痛む 首と肩、膝はやはりずきずきする。昨日の晩新しく貼ったパスはもう薬効が 落ちてぼろぼろだ。

とても疲れて、うっかりまた眠り込み、起きてみるともう時計の針は午前7時を 指している。工場でコンテナを下ろし、少なくとも10時には物流基地に到着し なければ12時に基地から出られない。だがいくらはやく動いても基地に到着す るのは11時になりそうだ。今日もつらい一日という不安がかすめる。

結局、工場に寄ってプゴクのコンテナ基地に到着すると午前11時になっている。 予想通り大変なことになった。ここの社員は11時30分から1時30分までが昼休み で、身動きもできず足止めをくうことになった。昼休みの間、キム氏も車から バーナーを取り出してラーメンを煮る。本当なら12時頃には基地を出て、工場 に到着した後、荷物を積んでいる間に食事をしなければならない。約2時間を道 に捨てたわけだ。突然いらだちが押し寄せる。

基地でコンテナの交換に必要な時間は約2時間。3時頃、やっと基地を出て荷物 を載せる工場に移動した。コンテナに荷物を積むのに必要な時間は30分から1時 間30分。これが終わるとキム氏は荷物を積んで釜山に出発する。釜山までは約 6時間かかる。本来は夜9時には釜山に到着するが、今日は悪材料が重なり10時 頃に到着しそうだ。

午後7時頃、サービスエリアに到着して夕食を食べる。できればサービスエリア の不十分な食事ではなく、もう少し金を払っても食堂に行きたいが、時間もな く、金も惜しく、そのままサービスエリアで食べることにする。サービスエリ アの食事代は平均6500ウォン程度。燃料代が1600ウォンだった頃、サービスエ リアの食事代は5500ウォン程度だったが、燃料代が1800ウォンに上がった現在、 サービスエリアの食事代も一緒に1000ウォン上がった。暮らすために仕事をす るのに、食べることも彼の人生を押さえ付ける。

食事をしていると携帯メッセージが到着する。もしやと思ったが、やはりキャ ピタルから来た携帯メッセージだ。少ない通帳の残高をキャピタルがすべて持っ ていった。残高は0ウォン。その上残高がなく、キャピタルも55万ウォンしか出 せないという。残りの金はまた借金だ。突然食欲がなくなり、さじを下ろす。 すぐ道路費5万ウォンと燃料代が心配になって食欲がない。だが6500ウォンが惜 しく、またさじを持ってご飯を食べる。

夜10時頃、釜山港に到着して荷物を下ろし、コンテナを交換する。仕事は11時 30分頃に終わった。また家に戻ると朝4時頃だ。今日もやはり3時間の仮眠だろ うと思うと、突然疲労が押し寄せる。ただ道路で居眠り運転をしないことを望 むだけだ。

貨物連帯ストライキ二日目の6月26日午後、イ・ボンジュ貨物連帯ソウル京畿支 部長が高空籠城をしている議旺ICD交通鉄塔の下で数十本の旗がはためいている。 約100人の組合員はそこにテントを張って支会別プログラムをしている。

インタビューを要請すると、すぐ拒否の意思が戻ってきた。何度もインタビュー をしたが、自分たちの声を載せた記事は見つけるのが難しく、もうインタビュー はしないという。やっと一つだけ聞いて帰ると約束を受け取った。だが一つの 質問に対する返事は長々2時間にわたって続いた。それだけ彼らは切迫しており 自分たちの声を出したがっていた。

大量の信用不良、借金に苦しむ貧しい『社長』

それで最も切実で苦しい点は何かと尋ねた。あちこちからめちゃくちゃに返事 が戻ってくる。劣悪な賃金と夜間労働、労働災害など、さまざまな困難だ。そ の中でも特に彼らの生存を直撃するのは『お金』だ。キム・ソグゥン(仮名、 47)氏は、すぐキャピタルから来た自分の携帯メッセージを見せてくれる。

「ここに今日キャピタルから来た携帯メッセージ、読めますか? 通帳にある金 をみんな下ろして、残高は0ウォン。それでもみんな下ろせず、残りはそのまま 借金になりました。詳しく見ると1か月に燃料代だけで727万ウォン、高速通行 料金が400万ウォン、食事代が60万ウォン、車ナンバー使用料25万 5千ウォン、 トラック保険料25万ウォン、積載保険料月5万ウォン、車両修理費月80万ウォン、 タイヤ交替費55万ウォンが出ていきます。そして手に残る金は70万ウォン程です。

今、保証金500と家賃40万ウォンの家に三人家族で暮らしているが、家賃と車の ローンも払い続けます。いくら金を稼いでも借金だけが増えるんです。さらに 具体的に言えば、ソウルから釜山まで往復運賃料が約80万ウォンです。ここか ら燃料代60万ウォンを引き、食事代1万5000ウォン、高速料金5万ウォンを引け ば、二日で13万5000ウォンの稼ぎです。しかしこれさえ各種保険料と修理費、 車両維持費などに使います」

生活苦と借金に苦しむ貨物労働者が信用不良者になるのは時間の問題だ。イン タビューに集まった10人ほどの労働者のうち、信用不良者でない人は2人だけだ。 実際に労働者の70%以上が信用不良者か破産申請をする。

だが政府も資本も、大量に信用不良者に転落する彼らの人生の責任を取らない。 むしろ法的に『個人事業主』という地位を彼らに付与し、人生を放置する。 それで組合員は互いに『理事長』、『キム社長』と呼んで自嘲混じりに笑う。

特に彼らは人生を破産させるさまざまな制度に露出している。そのうち劣悪な 賃金の決定的な原因である『多段階下請構造』は、貨物市場の慢性的な問題だ。 最大3〜4次の下請を経ると彼らの手取り賃金は最初の運賃の63%に過ぎない。

「多段階下請構造ですか? 私がこの仕事を24年しているが、変わらない。30年 ほど続く悪習だ。私たちがほとんど初代下請労働者でしょう? 下請労働者でも あり、特殊雇用労働者でもあり、自営業者でもある。しかしその30年にもなる 悪習は絶対なくならない。その下請構造に問題が多いことを知りつつも、なぜ 政府がこれを解決できないのか、そして問題解決をしない理由をなぜ明らかに しないのかとても気になります。

下請構造で中間斡旋手数料を持っていく運送会社は、事務室に電話するだけで 金を稼ぐ。大企業から運送会社までただ座って金を稼ぐ。ところがわれわれは 1億5千万ウォン以上の車両費から燃料代、道路費、保険料などをみんな払わな ければならないじゃですか。ですからわれわれは金がないんです。

燃料代を払う金がない時も多いが、もし燃料代分割払いをキャピタルに1回支払 いできなければカードが止まります。最近金融コンピュータ・ネットワークが 統合されてAキャピタルの金を返せなかったことが記録されれば、Bキャピタル でも制裁を受けるでしょう。そのたびにたた金を借りなければならない。ここ にいる労働者のほとんどが事業者の名義を親戚や知人に貸して暮らしています。 そして平均的に一人当たり1億以上の借金を抱いて暮らしてます」

『路上の生』貨物労働者
長時間労働、労災に苦しむ...命は『蝿の命』

貨物労働者の人生は『路上の生』だ。一日中を道路の上で働き、3時間ほどの 一部分の睡眠も道路の上で解決することが多い。毎日夜間労働、長時間労働に 苦しみ、労働災害も多い。だが韓国社会は彼らの労働と労災を保障する最低の 安全網も用意していない。

「機会があれば深夜1時か2時に京釜高速道路や中部内陸高速道路のサービスエ リアに行ってみてください。トラックでぎっしり埋まっているでしょう。みんな そうして車の中で寝ます。完全に路上の生です。私たちも眠りたいです。でも 月曜に出てくれば土曜に家に帰ることが多いです。妻の暖かいご飯一食が懐かしく、 子供と目を合わせる時間がないのが残念です。

それほど働くので体も壊します。一日基本13〜18時間運転をするから、関節と 肩、腰、首は当然痛い。胃腸病も激しい。一番問題なのは、事故です。道路で 過労死したり、交通事故がおきることが多いのに、ほとんど保険恩恵を受けら れません。労災も受け取れません。だからわれわれは貨物労働者の命はハエの 命だといいます。保険会社は生命保険にも入れないと言う程度ですからね。

そればかりか、積載保険は平均1億〜3億です。しかし事故になり、10億の荷物 が破損したら、保険金は最高3億で、残りの7億はばく大な借金に残ります。 それだけではありません。車両破損から自分の怪我の医療費まで、いっそ死ぬ 方が良いです」

貨物労働者がストライキに突入すれば、政府と世論は攻勢的な世論戦を展開す る。個人事業者が自分の利益のために公共性を傷つけて食い扶持で争うという 非難だ。またそんなに嫌で苦しければやめれば良い、という声も大きくなる。 実状がよく伝わらないまま、『個人事業者』と規定される貨物労働者にとって、 世論はいつも不利だ。

「24年間、働くばかりでした。見て下さい。頭がみな白くなってしまったでしょ う。それなりに今、誰が受け入れますか。職種を変えるのはそんなに容易では ありません。まだ車分割払いも70万ウォンずつ払い、借金も多いのに、突然 仕事を変えるわけにはいきません。

実際、私たちがストライキをすると、みんなは外国製トラックに乗った貴族が ストライキをすると後ろ指を差します。しかしそれは本当の人の気持ちも知ら ない声です。国産トラックと輸入トラックの価格差は4000〜5000万ウォン程に なります。ところが輸入車の方がはるかに燃費が少なくてすみます。一度車両 を購入すれば寿命は8年から10年ほどですが、計算すると燃費が少ない方がずっと 得です。

それと、われわれは一生、ローンの奴隷になって暮らします。車両購入費とし て1億3千万ウォンを借りると1か月に70万ウォン払います。利子と元金と返す時 になれば、トラックの寿命が尽きて、また変えなければなりません。一生借金 の奴隷です。そんな人々を『貴族』だの『社長』だのと呼ぶんです。本当に、 他のことは何も必要ありませんから、人間らしく暮らしたいです。妻が作る暖 かいご飯を食べて、子供と毎日目も合わせ、事故の恐怖もなく、借金に苦しむ こともない、そんな暮らしです」

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-06-28 10:27:36 / Last modified on 2012-06-28 10:27:45 Copyright: Default

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