労働者1人の死に罰金92億ウォンを払わせよう
[寄稿]人を殺しても処罰されない『企業に良い国』
パク・ヘヨン(労働健康連帯) 2012.09.20 11:18
ある研究者が労災の予防政策を研究するためにスウェーデンに行った時、労災
を減らす対策を尋ねた。政府関係者が驚いて問い返す。「なぜ人が働いて死ぬ
のですか?」昨年一年の統計で把握された死者数1万2114人。不動の労災共和国
のタイトル世界1位を誇る韓国の研究者は残念さを隠せなかった。
▲去る11日、京畿道安養市LSタワーの前で開かれた『溶鉱炉労災死亡事故責任要求』 1人デモ[出処:労働健康連帯]
最近相次いで起きる大型労災死亡事故は、この社会が『企業に良い国』である
ことを、そして『人が暮らしにくい国』であることを端的に見せる。8月13日、
GS建設が施工した国立現代美術館の火災で4人が命を落としたのに続き8月23日
にはLG化学清州工場の爆発事故で現在までに8人が死亡した。そして数日前、
LS電線では溶鉱炉の銑鉄で20代の青年二人が死亡した。大企業が労災死を主導
する。全国で一日に6人以上が労災で死ぬ大韓民国の現在進行形の現実だ。
私たちも同じ質問ができる日が来るだろうか?
「なぜ人が働いて死ぬのですか?」
なぜ労災死亡事故が絶えないか?
会社の安全管理、そして処罰と言えないような処罰の実態を調べれば答が出る。
今回の溶鉱炉の死亡事件が起きた工場は、LS電線の系列会社だ。工場を運営す
るために一定の費用をかけて、その費用を人件費と資材費、運営費などに分け
て会社を運営する。問題は、費用に『安全に関する支出』が殆どないという点
だ。特に事業の段階が下がるほど、安全のための余力はない。そうして非正規、
下請、派遣労働者は危険にさらされる。
では安全管理はどうしているのか? 今回の事故が起きた時に、会社があらゆる
報道機関の出入りを止めた理由はただ一つだ。会社の過失をできるだけ隠し、
安全に関する書類を整理したり、何かを隠そうとすること。このようにして、
わずかな罰金も避けようとする『工作』だ。現行法が規定する各種の書類さえ
ちゃんと揃えれば、今回の事態で会社は少しの罰金だけでやり過ごせる。こん
な状況なので、人が死なないようにする措置をする必要はない。昨年合井洞で
発生したGSザイ・アパートの建設現場で労災死亡事故がおきた時も、救急車は
すぐ作業現場に入ろうとしたが、現場側が入口を閉じて何かの行動をしたため、
救急の救助行為が長時間遅れたことがあった。まさにこれが現場での安全管理の
現実だ。そして事故がおきる可能性は相変らずそのまま。
では処罰の実態を見よう。イーマートの冷凍倉庫で働いて死んだ22歳の青年が
いた。事故が起きた場所に作業を発注したイーマートは、この事件でいくらの
罰金を払ったのか? 事故の直後、労働健康連帯はイーマートを告発し、これに
よりイーマートは罰金100万ウォンを課された。約40人が死んだ利川冷凍倉庫は
せいぜい罰金2千万ウォンを払っただけだ。利川物流センターの新築工事現場で
9人が死んだ時も、GS建設はせいぜい700万ウォンの罰金しか払わなかった。
安全措置をすれば金がかかるので、それよりは罰金を払ったほうが良い状況だ。
その上、労災の事実を隠せば驚くほどの恩恵が与えられる。サムスン半導体で
白血病などによる労災死亡労働者がいるという事実が明らかになった時、労災
はないと主張して一年に143億ずの労災保険料の減免を受けてきたサムスンは、
払うべき金を計算していたのかもしれない。10年で150億、処罰よりは恩恵、
これが一つの国で施行している制度なのだろうか?
[出処:労働健康連帯]
会社には安全を考慮する理由がない。事業主の目標はたくさん金を稼ぐことで、
労働者が傷ついて死んでも誰も制裁しない。処罰されない彼らは現場を最大限
生産中心に、利益中心に配置する。労災は隠せば労災保険割引恩恵まで受ける。
そのように、韓国では大企業が労災死の先頭走者であり、核心だ。労災死亡事故
が減る理由がないのだ。
付け加えれば、労働部と産業安全管理公団では昨年の2114人の労災死亡労働者
の話を笑いながら広告を出している。全ては彼らのミスだと言ってである。
溶鉱炉の事故もミスで、国立現代美術館の4人も、LG化学清州工場の8人の死も、
みんな当事者のミスなんだそうだ。あきれたことだ。(広告映像:http://youtu.be/16pNiNYQLuo)
労働者1人が死亡すれば罰金92億を払わせよう
果たして可能だろうか? 一人死亡に罰金150万ウォン程度の韓国の状況と、
下の状況を比較してみながら判断してみよう。
1995年9月、米国労働安全衛生局(OSHA)がサムスン重工業のグアム支部格だった
Samsung Guam、Incに賦課した826万ドルの罰金。当時、OSHAはグアム国際空港
(Antonio B. Won Pat International Airport)の工事現場で1人の韓国人労働者
が死亡した事件に対する調査を行い、合計118件の違反事実を発見し、これによ
る罰金として約800万ドル、韓国の金にすれば92億ウォン以上の罰金を賦課した。
参考までにOSHAが賦課した歴代最高罰金刑は、2009年BPに賦課した8134万ドル
だった。韓国の産業安全保健法では、法人に対して法定最高刑を賦課するとし
ても1億ウォンだ。
では、他の国はどうだろうか? 英国では新しく制度を作った。『Corporate
Manslaughter and Corporate Homicide Act 2007』(通称『企業過失致死および
企業殺人法』)の主な内容は、『労働者の安全のために必要な必須要素を履行せ
ずに労働者を死なせた企業主を犯罪者と規定し、拘束処罰』するということだ。
労災死亡の深刻性に比べ、労災死亡を放置した事業主に対する処罰が弱い現実
に対する共感が形成され、すでに1990年代中盤から企業の過失による労災死亡
を企業殺人(Corporate Killing)と命名し、これへの処罰を強める法を制定した
のだ。
企業殺人法で有罪判決を受けた最初の例は、小さな会社での27歳の青年の労災
死亡事件で、英国法院は企業過失致死の責任を問い、韓国ウォンで約6億9600万
ウォンもの罰金刑を宣告した。罰金150万ウォンと7億、そして98億もの罰金、
その間隙はいったいどこで発生するのだろうか?
企業殺人法が必要だ
▲歴代米国労働安全衛生局の罰金ランキング上位10位企業、2008米国労働安全衛生局白書:2008 OSHA FACT BOOK
私たちも企業に直接の打撃を与える賠償により、経営者が直接責任を取る方式
で処罰すればどうか? 外国のさまざまな研究によれば、労災死を減らすための
政策手段として最も効果的なのは、労災死亡を起こした企業の高位役員を強く
処罰することだと明らかにしている。労災予防がうまい企業にインセンティブ
をあたえる方式(現行)より、法を犯した事業主を強く処罰する方が労災予防に
より効果的だ。怪我をしたり死ねば罰金を多く払うので、当然安全管理に万全
を期すのではないだろうか? これを通じ、企業内部の政策決定の過程で労災死
の予防を優先させるように誘導するのが切実だ。
福祉国家が話題の今の時代に、まだ労働災害に対しては7〜80年代のマインドを
持つ政府とこの社会は、『働いて死ぬこともあるだろう』、『チェッ、また死
んだよ』、『ちょっと気をつけなきゃね』といった反応で労災死亡をながめる。
しかし考えてみよう。足を踏みはずせば墜落死する現場と、網にひっかかって
打撲傷程度の現場、あなたならばどちらで働くだろうか? 網も設置せずに人を
死なせた企業主に『未必の故意』による殺人罪を賦課しようというのは過度な
要求だろうか? (出処=チャムソリ)
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
Created byStaff.
Created on 2012-09-22 08:17:57 / Last modified on 2012-09-22 08:17:59 Copyright:
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