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サムスン、たった4億で「ノブレス」を買う

[もうひとつのニュース]李富真の「善行」、どの記者も取材しなかった

イ・サンウォン記者 2014.03.21 11:29

鳥肌が立った。 3月19日、一日中、新羅ホテル代表の李富真(イ・ブジン)氏の名前がポータル人気検索語に露出し続けた。 「ノブレス・オブリージュ」、「善意」、「太っ腹なオーナー」などの修飾語がついた記事があふれた。 好奇心で検索を始めた。 19日一日で、関連の記事でどれほど溢れかえり、マスコミはこの事件をどう再生産するのかを調べようと思った。 しかしおかしな点がいくつか見えてきた。

  1. 事件は2月25日に発生したのに、李富真氏の「善行」は、なぜ今になって伝えられたのだろうか?
  2. なぜすべての報道機関が引用するタクシー運転手A氏の発言はすべて全く同じなのだろうか?
  3. なぜよりによって李富真氏の「善行」を真っ先に報道した報道機関が朝鮮日報だったのか?

疑惑1、記者が書かなかった記事(?)
朝鮮日報の最初の報道以後、関連記事だけで397件...ほとんどがコピー記事、
どこの記者も「取材」をしなかった

真っ先に思ったのは、この「善行」は偶然に、または記者の取材で明らかになったものではないなということだった。 事故が発生した2月25日から3月18日までの関連記事を検索してみた。 検索語は「新羅ホテル」と「タクシー」。 関連記事は25日から27日まで合計65件検索された。 報道の方式は単純事故のベタ記事。 27日の後は関連記事がない。 だから27日からはホテルの関係者の他には事故そのものを忘れていたと見るのが正しいと思われる。

ところが不意に事故から1か月が経とうとする頃、朝鮮日報は3月19日付31面の人セクションで「李富真ホテル新羅社長の『太っ腹な』配慮」という題名で報道され、オンラインでも朝鮮ビズを通じ、19日の午前8時に「新羅ホテルぶつかったタクシー運転手、李富真が救った」という題名で真っ先に記事を掲載した。

朝鮮日報の報道以後、関連記事だけで19日の一日に397件(直接「タクシー」に言及していない記事が16件あったが、新羅ホテルとソウル市教育庁の業務協約記事の数件を除き、すべて関連記事と見てもいいゴシップ記事だった)があふれたが、 このうち朝鮮日報を直接引用し、いわゆる「ウラカイ(訳注:取材をせず他社の記事の焼き直しをすること)」で作成された記事が71件あった。 そうではない記事も、ほとんどが朝鮮日報の報道内容以上ではないコピー記事だった。

つまり、記者が直接取材もせず(百歩譲って、朝鮮日報の記者は取材したとしても)、朝鮮日報の初めての報道だけで関連記事が一日397件生産された。 初めての報道(午前8時)の後、深夜12時までの16時間、約3分に一回の割合で記事が出た。

朝鮮日報の記者の取材も疑わしい部分はある。 タクシー運転手のA氏という発言を 「ホン氏は涙を流しながら『私が行って謝罪しても足りないのに、とてもありがたい』と話したという」と引用表現しているためだ。 「話した」という直接表現でなく、「話したという」という引用表現は、記者がA氏に直接会って話を聞いていないという意味だ。 また、朝鮮ビズの報道内容のうち、A氏の発言「新羅ホテルに被害を与えた」で検索した結果、87件の記事が検索されたが、これらの記事はすべて助詞一つ違わず同じように朝鮮ビズが報道したA氏の発言を引用していた。 これは他の言論もA氏に直接会って話を聞いていないということだ。 つまり、今回の記事が記者の取材によるものではなく、他の誰かによって作られたという疑惑を抱かせるものだ。

事実、誰かが作った記事、つまり官公庁、企業などが配った報道資料をそのまま記事にするのはマスコミでは珍しいことでもなく、これが特に問題になるわけではない (スローニュース、天才(?)が作った報道資料、意図のとおりにもてあそばれたマスコミ)。

▲李富真社長に関するニュースは相変らず多い。ポータルサイトのネイバーで「李富真」で検索した結果

疑惑2、新羅ホテルは報道資料を配ったのか?
3月、大企業の株主総会シーズン!
サムスン李富真登記理事に再選任…役員報酬限度額100億値上げ、株主配当は凍結

では、この記事は新羅ホテルが作成した報道資料から作られた記事の可能性が高いということだが…なぜ新羅ホテルは1か月も前の事件をまた記事化したのか? 観光、サービス産業体の新羅ホテルが、あまりイメージの良くない「事故」を単に代表の好感度を高めるために記事化したのだろうか? なぜ? 好感度が下がることがあったのか?

疑問を抱かせる興味深い記事が眼に触れた。 まさに2月末から主要大企業の株主総会シーズンが始まったという記事だった。 商法上、企業は毎年1回、一定の時期に計算書類の承認、利益配当に関する決議、役員選出などを議決するための定期総会を招集しなければならない。

サムスングループは3月14日、サムスン電子、新羅ホテルなどの上場企業17社すべてがいっせいに定期総会を開いた。 そしてこの定期総会で李富真(イ・ブジン)代表は、新羅ホテルの登記理事に再選任された。 今年の定期総会で、オーナー一家の登記理事職履行の有無は、政財界にとって興味深い観戦ポイントだ。 昨年11月、「資本市場と金融投資業に関する法律」が改正され、年俸5億ウォン以上の登記理事の個人年俸を公開しなければならなくなり、報酬の公開が負担になるオーナーの登記理事職辞任が予想されたためだ。

オーナーたちが登記理事職をやめる理由は、年俸の公開以外にも事業に関する責任を減らすためでもある。 株式会社の理事会に参加して議決権を行使する登記理事は、議決権がない不登記理事と違い、会社が決めた懸案が問題になると法的な連帯責任を負わなければならない。 そのためすでに企業の実質的意志決定権を所有しているオーナーは、経営はしても責任は免じるための小細工として、登記理事職を辞任することも多い。 サムスングループだけでも李健煕(イ・ゴニ)、李在鎔(イ・ジェヨン)親子は登記理事職にない(エコノミスト、登記理事にならない会長-経営は『OK』責任は『NO』)。

そればかりか、サムスン電子は今回の定期総会で役員報酬限度額は昨年より100億ウォン多い480億ウォンと策定したが、小額株主に支払われる配当が少ないという指摘には 「研究開発投資を着実に拡大しなければならず、企業買収・合併機会も見なければならない」と否定的な態度を見せた。 サムスン電子だけでなく、サムスンSDS、サムスン生命株主総会でも同じような指摘が提起されたが、サムスンは株主の意見を受け入れなかった(国際新聞、上場企業116社「スーパー株主総会デー」...速戦即決で案件通過)。

おもしろい点は、株主の配当引き上げの要求を「開発投資拡大」、「買収・合併準備」などを理由に拒否したサムスンの最近3年(2010-2013年)の社内留保金増加率が、10大グループで最高だということだ。 社内留保金は企業の当期利益金から税金、配当などで支出された金額を除き、社内に蓄積した利益余剰金と資本余剰金を合わせた金額だ。 社内留保金を納入資本金で分ければ社内留保率になるが、留保率が高いということは企業の投資活動が消極的だという意味を持つ。

サムスンは上場企業13社の社内留保率が3709%で全体社内留保率はロッテ、ポスコに続いて3位だが、2010年より1232%高まり、上昇幅は10大グループで最高だ。 社内留保金は2010年の108兆ウォンから162兆1千億ウォンまで増えた(聯合ニュース、10大グループ上場企業社内留保金477兆ウォン…3年間44%↑)。 3年間、蓄積だけしてきて今になって投資を拡大するという意味なのかもしれないが、とにかくサムスンは小額株主には7年間、週250ウォンを割り振り(サムスンSDS)、役員の報酬はしっかり用意している。

新羅ホテル(サムスン)がノブレス・オブリージュの称号が必要な理由
サムスン、わずか4億でノブレスを買う

数億ウォンの事故処理費用を貧しいタクシー運転手から受け取らなかったという美談は 耳に心地良い。

だが企業のオーナーは実質的な意志決定権を所有しつつ、責任を減らすために登記理事を避け、数兆ウォンの資本金を社内に蓄積したまま、株主の配当金引き上げの要求は無視し、その代わりに役員の報酬はしっかり用意するサムスンにノブレス・オブリージュの称号が必要な理由は、 実際、彼らが全くノブレスでも、オブリージュもないからだ。

今回の事件でサムスンはわずか4億ウォンで計算できないイメージを買った。 「もうひとつの約束」と「貪欲の帝国」など、サムスンの貪欲な内面を暴露する映画が封切られ、株主総会を経てその貪欲を公然と現わしたサムスンは、 本当に計算できない利益を今回の事件で得ることができた。

そしてサムスンの横には知っていてそうしたのか、知らずにそうしたのか、もてあそばれたマスコミがあった。 鳥肌が立つ。 サムスンが、企業が、資本が、いかに簡単に言論を弄び、世論を操作して、市民を愚弄するのか、リアルタイムで見ると本当に鳥肌が立つ。 ああ、相変らず李富真氏の記事があふれている。

この記事はイ・サンウォン記者のブログ(http://blog.naver.com/icarus0412/206565856)にも掲載されました。

付記
イ・サンウォン記者はニュースミン記者です。この記事はニュースミンにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-03-23 03:29:05 / Last modified on 2014-03-23 03:34:35 Copyright: Default

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