韓国:サムスン職業病被害者の父ファン・サンギ氏が江南で座り込む理由 | |||||||
Menu
おしらせ
・レイバーフェスタ2024(12/25) ・レイバーネットTV(12/11) ・あるくラジオ(10/10) ・川柳班 ・ブッククラブ(2025/1/11) ・シネクラブ(9/1) ・ねりまの会(10/12) ・フィールドワーク(足尾報告) ・三多摩レイバー映画祭 ・夏期合宿(8/24) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第97回(2024/12/10) ●〔週刊 本の発見〕第370回(2024/12/12) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2024/12/19) ●川柳「笑い茸」NO.158(2024/10/26) ●フランス発・グローバルニュース第14回(2024/10/20) ●「飛幡祐規 パリの窓から」第96回(2024/12/5) ●「美術館めぐり」第6回(2024/12/23) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・choose life project・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合・NPA-TV・こばと通信
|
「サムスンが約束を守らないので座り込みをします」サムスン職業病被害者のお父さんファン・サンギ氏が江南で座り込みをする理由
ムン・ジュヒョン記者 2015.10.30 17:25
大韓民国の国土が赤く染まる秋は、紅葉の季節だ。 日常に疲れた人々は週末には山へと向かう。 雪岳山(ソラクサン)がある江原道東部はこの時期は登山客を迎えるのに忙しい。 江原道束草で暮らすファン・サンギ氏はタクシーの運転手だ。 束草のタクシー運転手にとって、秋は雪岳山を訪れる山客のために最大の盛需期だ。 しかしファン・サンギ氏は盛需期の雪岳山を後にして、 1週間に3回はソウルに向かう。 彼が訪問する所はソウルの中心、江南。 そこでも一番中心にあるサムスン電子の瑞草社屋だ。 「ソウルで一番高価な土地、5つ星級のホテルで眠ります」▲10月7日からサムスン職業病問題の解決に対しサムスン電子が真摯に対応しろという内容でパノルリムが座り込みを始めた。座込場が設置されたソウル江南駅8番出口サムスン電子社屋の前の姿[出処:パノルリムSNS] ソウル江南駅8番出口、サムスン電子瑞草社屋の前の広場にある野宿座込場。 雨をしのぐ覆い一つないここを彼は5つ星級のホテルだと表現した。 「半導体労働者の健康と人権守備隊、パノルリム(以下パノルリム)」は、 10月7日からここで座り込みをしている。 多くの人々が別名「紅葉狩り」と叫んで心の慰安を山に求める時、彼はここで気持ちを固める。 誰よりも愛していた娘を奪ったサムスンからの謝罪を8年間、受けようとしている彼だ。 今はその行動に終止符が打たれることを希望している。 ファン・サンギ氏は故ファン・ユミ氏の父親だ。 映画「もうひとつの約束」で世の中に知らされたサムスン半導体職業病被害者の家族だ。 2007年3月6日、サムスン電子半導体器興工場で働いていた故ファン・ユミ氏は、 22歳で急性白血病により息をひきとった。 器興工場で働き始めてから1年8か月で白血病の診断を受け、約2年の闘病生活をした。 そして父親が運転するタクシーで息をひきとった。 大企業に就職したことだけでも大きな喜びだったことがあった。 その喜びだけを考えて、あまりにも娘の苦しみに思いをはせられなかった父、ファン・サンギ氏は、 今もその罪悪感で座込場へと向かう。 ▲サムスン職業病被害者家族のファン・サンギ氏。彼は江原道の束草でタクシー運転をしながら時間を作ってソウル座込場に合流している。彼は8年間、サムスン電子の心からの謝罪を要求してパノルリムと共にたたかっている。[出処:パノルリム ホームページ] 「サムスンが白血病問題を解決? 歪曲報道です」10月21日、インターネットはサムスンが半導体職業病の被害者への補償を始めたという報道でしばらく熱かった。 「『サムスン白血病』解決局面」という題名が眼につく。 いよいよ解決するのか? ではサムスン本館前の「5星級ホテル」は消えるのだろうか? 結論から言えば、そうではない。 ファン・サンギ氏はこれらを「歪曲報道」だと表現し、 「サムスンは言葉と行動が違う企業だと感じます」と話した。 「5つ星級ホテル」は、サムスンが約束した「本当の解決」がなされるまで当分続く展望だ。 チャムソリは10月18日に座込場を訪問し、ファン・サンギ氏とパノルリムの関係者と会った。 彼らからサムスンが守らない「約束」と職業病被害者が望む「本当の解決」の意味を聞くことができた。 そして国家と国民から惜しみない支援を受け、世界的な財閥企業に成長したサムスンの社会的責任とは何かを察することができた。 10月18日、座込場には約10人の人々が集まって話をしていた。 「サムスン職業病問題社会的解決のための24時間リレートーク」イベントの時間。 この日は「財閥社内留保金還収運動本部」のイ・ジョンフェ代表が主人公だった。 ファン・サンギ氏も彼の話に集中しながら座込場を守った。 この行事はサムスン半導体職業病被害者をはじめ、社会の各界各層の人物が出てきてサムスンの社会的責任を要求している。 「韓国社会にはサムスンの貪欲が作り出したさまざまなとんでもない事件は多い。 そのうちの一つがサムスン電子労働者たちが白血病や希少病で死んでいく問題のようです」 「サムスンは鉄甕城のようだといわれます。 2005年のいわゆる『Xファイル』事件でサムスン共和国の実体が暴露された時も、 これを告発した人たちは国会から追い出されたり、放送局から解雇され、 キム・ヨンチョル弁護士の暴露の時も同じでした。 しかしこれからサムスンが勝手なことをするのはますます難しくなると考えます。 パノルリムの闘争がそれをよく見せていて、 サムスンの労働者たちが民主労組を作ってサムスンを下から揺さぶっていると考えます。」 トークイベントが終わり、簡単な食事を兼ねた席でファン・サンギ氏は 「8年前、この問題を提起した時と(サムスンが謝罪をして調整に入った)今、 サムスンが職業病問題を扱う方式は全く変わらなかった」と話した。 8年前、娘が闘病中に死を迎え、しばらく孤独な戦いを続けた。 工場の前から追い出されたり、警備に取り囲まれて侮辱されることも体験した。 今は本館前のデモや座り込みでそうした大きな摩擦はない。 「もうひとつの約束」を通じて世の中に知られもし、2014年5月にサムスン電子の権五鉉(クォン・オヒョン)社長が謝罪と補償、再発防止対策を用意するという意向を明らかにした後に態度は変わったかに見えた。 マスコミを通じて半導体職業病被害者を癒やすというサムスンの言葉とは違い、 現実は変わっていないとファン・サンギ氏は主張する。 「私が化学薬品問題を提起した時、サムスンは問題になる化学薬品は使ってもおらず、電離放射線もないといいました。 今でも約540種の薬品を使っているのに検証できませんでした。 どんな言及もないので、変わっていません。 労働者たちが作業場で病気にかかった原因と問題は、今も変わっていません。」 これまで何回か疫学調査がなされたりはした。 しかしファン・サンギ氏は被害者が認める産業医学専門医が入っておらず、 営業秘密を理由として大部分の内容が非公開になったため、 社会的な検証が行われたと見るのは早いと話した。 ▲パノルリム座込場でファン・サンギ氏が座込場を訪問した連帯者たちと話をしている。座込場でファン・サンギ氏の娘、故ファン・ユミ氏と闘病中に共に撮った写真を見ることができた。ファン・サンギ氏はサムスン電子職業病被害者に本当の謝罪をしていないと話した。[出処:チャムソリ] サムスン電子社屋前に5つ星級座込場を設置した理由何よりもサムスンは、権五鉉社長が話した約束を守っていない。 サムスン電子は昨年5月14日、権五鉉代表理事名義で謝罪文を発表した。 「困難をあじわった当事者、家族などと相談して、 公正かつ客観的な第3の仲裁機構を構成するようにし、 仲裁機構が補償基準と対象など、必要な内容を定めればそれに従う。」 8年目に受け取った謝罪であった。 そして約束だった。 当事者と家族と相談し、客観的な第3の仲裁機構が構成されれば補償基準と対象を実施するという約束。 そして専門性と独立性を備えた機関を通じ、 安全保健管理現況などを診断し、その結果によって再発防止対策を樹立するという約束。 その後、パノルリムとは別のサムスン職業病家族対策委員会(家対委)が第3の調停委員会構成を提案した。 サムスンとパノルリムがこの提案を受け入れ、 キム・ジヒョン元大法官をはじめとする3人の調停委員会が構成された。 そして7月23日、3人の調整委員は1次仲裁案を出した。 「今回の調整事案は『個人的事案』を超えた『社会的事案』だと見られ...〈中略〉 社会的課題を解決するためには『社会的機構』が独立した主体としての公益的な機能を遂行する任務が与えられる。」 調整の議題と原則をこのように明らかにした調停勧告案は、 サムスン電子が1000億ウォンを出資して独立した公益法人を設立し、 公益法人が専門家を通じてサムスン電子の事業場を点検し、 改善方案を勧告するなどの内容を含んでいる。 また、被害者とその家族に対する公開謝罪も含まれた。 ▲7月23日、調停委員会が西大門の法務法人地平の会議室でサムスン電子-家族対策委-パノルリム3者の参加で調停勧告案を発表した。[出処:チャムセサン資料写真] しかしサムスンは8月3日、1次調停案に対する立場を発表し、 調停委員会が提示した公益法人設立案を拒否した。 サムスンは公益法人設立が解決法にはならないという立場だった。 そして9月から一部の家族と共に独自の補償委員会を構成し、補償を始めた。 10月21日、各マスコミが「『サムスン白血病』解決局面」といった論調で報道したのは、 独自の補償に関して発表したサムスンの報道資料が根幹だった。 パノルリム、家対委、サムスンが参加する調停委員会は、いつ会議が開かれたのか分からない状況に置かれた。 「10月7日に調停委員会が開かれました。 サムスンは出てきて、家対委は弁護士が代わりに出てきました。 サムスンは調停委が出した1次調停案を拒否するとは言えず、ずっと保留を要請してきました。 そのため調停委委員長が次の期日をいつにすればいいのかと聞いても、 それも言えない、保留だといった。 それで調停委の提案はどうなるのかと尋ねると、それも保留だといいます。 事実上、拒否でしょう。」 ファン・サンギ氏はサムスン電子の権五鉉代表理事が明らかにした約束を拒否したと考えた。 表面では交渉が難航を続けているように見えるが、サムスンが調整に誠実に応じていないと見た。 1次調停案が気に入らなければ、調停委員会で調整して交渉すれば良かった。 しかしサムスンは昨年の「客観的仲裁機構を通じて問題を解決する」という約束には答えない。 補償委員会はそのようにしてパノルリムが排除された状況で現在まで続いており、江南駅8番出口の5つ星級ホテルはこれに抗議する次元で設置された。 ▲サムスン電子半導体工場で働いて病気にかかり死亡した労働者を紹介するプラカードが座込場の周辺に設置されている。彼らの死、誰の責任だろうか? まだ社会はサムスンの責任だと自信を持って話せない雰囲気だ。[出処:チャムソリ] 「パノルリムは外部団体? パノルリムはサムスン職業病被害問題の当事者」ファン・サンギ氏は独自の補償委員会を通じた補償手続きに入ったサムスンの決定に対し 「一部の被害者と補償問題を話したといって補償を始めましたが、昔と同じ方式です。 被害者がサムスンに対して補償を要求すれば秘密裏に会い、補償をして終わるような形式でしょう」と話した。 最近の補償は、加害者が被害者の基準を定める形だとファン・サンギ氏は評価した。 このように物事が進められるのは、一部のマスコミの力も大きい。 サムスン職業病被害問題の解決のために被害者らと戦ってきたパノルリムを「外部団体」と規定し、攻撃するマスコミがある。 こうしたマスコミ各社はパノルリムを交渉の障害、パノルリムの代表性に問題があるという報道を発表した。 こうした報道を見るときはファン・サンギ氏はあきれる。 「パノルリムが第三者だというのは全く話になりません。 うちのユミが病気にかかって死んだ時、この問題を知らせたくて放送や労働界、政党、言論に情報を提供したが、誰も受け入れませんでした。 その時、水原の地域新聞の記者に悩みを打ち明け、それで出会ったのがパノルリムのイ・ジョンナン労務士です。 2007年8月、東ソウルターミナルの2階で会ってすべてのことを話し、パノルリムを作りました。 被害の受付から問題の原因が何かを暴きました。 サムスン職業病被害者家族の私もパノルリム会員です。 パノルリムは被害者組織であり、この問題に誰よりも一生懸命に取り組んでいる当事者です。 パノルリムをさげすんで排除したいサムスンの心理がパノルリムを第三者にしているのです」 [出処:チャムソリ] 現在、パノルリムと共に労災を申請して真相究明のために戦っている被害者はおよそ60人だ。 サムスンの独自の補償委員会構成に関する糾弾声明には55人の被害者と家族が共にした。 パノルリムを外部団体と見るのは無理がある。 ファン・サンギ氏はパノルリムの結成に決定的な役割を果たした。 被害者を組織して、労災申請などで初期対応をした。 家族対策委だけでなく、パノルリムも当事者と見ることが正しい。 何よりもサムスンが昨年、客観的かつ中立的な第三者機構を通じた補償と共に、 再発を防止するという約束をしたのは社会的合意であった。 サムスンはパノルリムがその機構に参加しなければならないとも話した。 10月30日現在、パノルリムの座り込みは24日続いている。 毎日毎日、サムスン職業病の被害者と家族は、これまでの世の中で認められてこなかった話をここでする。 すでに約10人の被害者がここに出てきて心情を明らかにした。 ▲ソウル江南駅8番出口サムスン電子社屋の前でパノルリムとサムスン職業病被害者らの野宿座り込みが今も続いている。この座込場には職業病被害者と家族、活動家が毎日交代で自分たちの話をする時間を持っている。半導体労働者の健康と人権守備パノルリムの活動家がサムスンに要求する三つの点を簡単に整理したプラカードの前に立った。[出処:パノルリム ホームページ] 「ユミが坑癌治療により、からだが小さくなった時、おばあさんがその姿を見て二日間、食事もできなくなって亡くなりました。 ユミの治療費のために、家を作るために私と妻がタクシー運転手と食堂の仕事をして貯めたお金も今は残っていません。 我が家はサムスンに入って潰れたようなものです。 それがなぜユミが悪いのですか? サムスン工場で働いて化学薬品と放射線のためだったのではありませんか? こうした被害者をこれまで治療もせず、費用を節減して社内留保金を何百兆を溜め込みました。 それなのに一言の謝罪なく、これ以上そんな患者を作らないという再発防止策も出さず、本当に腹立たしいことです」 他の何よりも世の中に伝えたい言葉がある。 サムスンが補償を始め、職業病被害問題が解決されたと報道するマスコミ各社が本当の報道すべきだということだ。 付記
ムン・ジュヒョン記者はチャムソリの記者です。この記事はチャムソリにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2015-11-07 12:48:04 / Last modified on 2015-11-07 12:48:05 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ |