美術館めぐり:ビキニ水爆被災70年 山内若菜展 | |||||||
Menu
おしらせ
・レイバーフェスタ2024(12/25) ・レイバーネットTV(12/11) ・あるくラジオ(10/10) ・川柳班 ・ブッククラブ(2025/1/11) ・シネクラブ(9/1) ・ねりまの会(10/12) ・フィールドワーク(足尾報告) ・三多摩レイバー映画祭 ・夏期合宿(8/24) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第97回(2024/12/10) ●〔週刊 本の発見〕第370回(2024/12/12) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2024/12/19) ●川柳「笑い茸」NO.158(2024/10/26) ●フランス発・グローバルニュース第15回(2024/12/24) ●「飛幡祐規 パリの窓から」第96回(2024/12/5) ●「美術館めぐり」第6回(2024/12/23) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・choose life project・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合・NPA-TV・こばと通信
|
志真斗美恵 第6回(2024.12.23)・毎月第4月曜掲載 ●ビキニ水爆被災70年 山内若菜展 ふたつの太陽 命を紡ぐちいさな生き物たち(都立第五福竜丸展示館) 絵は絶望を希望に変えることができる今年は、第五福竜丸がアメリカの水爆実験で被災して70年になる。今年のノーベル平和賞は日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が選ばれた。結成のきっかけになったのが「ビキニ事件」だった。マグロ漁船・第五福竜丸は、いま、夢の島公園(東京都江東区)にある。そこで「山内若菜展」が開かれている。この展示を見るため、私は久しぶりに都立第五福竜丸展示館を訪れた。 船首に第五福竜丸と記された全長30メートル・高さ15メートルの木造船が、天を突くような大きな展示館に収まっている。第五福竜丸の周囲に、資料や写真が展示されている。 「ふたつの太陽」は、その左舷につるされていた。大作である。作品は、横15・2メートル・縦3メートルの大きさである。その絵が、すでに白いペンキが剥げ落ちた第五福竜丸の船体を覆っている。和紙に描かれているが、近づくと補修の跡がわかる。 左右に太陽がある。ひとつは広島の原爆、もうひとつは第五福竜丸をおそったブラボー水爆の光である。波に揺れる船も原爆ドームもはっきり描かれている。が,ふたつの太陽は、明るい。近づくと画面には小さな生き物がうごめいている。死の灰が降った海面にはプランクトンがいる。実物の落ち葉もある。絵の細部には、さまざまな生き物がいる。それらは明るい未来への「希望の光」でもある。 「《ふたつの太陽》――《讃歌 樹木》と《第五福竜丸》」(山内若菜)の詩も掲げられている。「時を超えてふたつの太陽は現れた/はじまりはもっとも小さな声/命の発露/広島の町を歩いていると、たくさんの被爆樹木たちが踊っているようだった//ここに生き続ける被爆樹木は力強く/微生物たちは、原爆の劫火に焼かれてなお/命の連鎖を黙々と続けていたことを思う/爆心地に向かって矢を放つように踊る木//微生物・プランクトン/ふたつの生命の光か/滅亡の光 地上にうまれおちた灯/私は生命の光、希望のあかりをとりたい/夜明け玉は光る そして僅か少しずつ大きな光へ/希望の黎明から赤い朝焼へ/植物プランクトンが産み出す膨大な量の酸素/炎となりひかりとなり太陽となり/第五福竜丸となり光に灯に/わたしはふたつの太陽をかかげた/ここに生きるすべての命への讃歌を謳いたい」 「ふたつの太陽」が掲げられた船体の反対側には、「992隻目指して描いた小さき船たち」が、ハガキ大の白い額に、一隻一隻、並べられている。 「金屏風に描いた船たち」もある。そこには、作者の文が添えられていた。「迷いながら、船は多様な生命体を乗せて世界を航海しています。/今年は第五福竜丸がアメリカの水爆実験で被災して70年。/核なき世界への航海へ向かうように浮かぶ船たちを体感してほしい―第五福竜丸以外の船もたくさん被ばくしました。私の住む神奈川県にある三崎港を母港とする漁船も、数多く被ばくしました。第十三光栄丸の漁師が息子のようなマグロを捨てざるを得なかったときを思い浮かべながら、そんなたくさんの船たちと航海をするような体験ができるようにと、旅する船です。一緒に海を感じ漂い、荒波を感じて頂けたら幸せです。」(展示館の外には、被爆したマグロを埋めたことを記憶し続けるための「マグロ塚」がある)金屏風と言ってもちょうどお雛様の背後にあるくらいの大きさで、そこに被爆船が描かれている。幾枚もの屏風に描かれたそれらの船から、波にもまれる漁船の様子が伝わり、作者の思いも伝わる。 ちょうど作者の山内若菜さんが来館された(写真)。「ふたつの太陽」について伺っていると、彼女と旧知の広島大学の女子学生2人も来館した。彼らは広島で知り合っているのだった。 この展覧会からしばらくして、12月5日、労働者文学会主催の映画会で、劇映画『第五福竜丸』(新藤兼人監督・1959年2月公開)を見ることができた。被爆した年に亡くなった久保山愛吉さん夫妻(宇野重吉、乙羽信子)の話が中心になっている。前半で第五福竜丸の乗組員23人の日常が、記録映画のように描かれていて興味深かった。山内若菜さんの描いた、金屏風の船や小さな船には、生き生きと働く船員たちが乗船していた。 展示館には、「牧場 放つ」「刻(とき)の川 揺(ゆれる)」「天空 昇(のぼる)」の三部作も天井からつるされていた。これは、広島、長崎、福島を題材にして「命」への思いを込めた作品で、「今だからこそ、命の大切さを感じてほしい」と描かれた。 出版されたばかりの『いのちの絵から学ぶ――戦争・原発から平和へ』(山内若菜著・彩流社)の「はじめに」は、「殺処分される馬たちは私自身だった」と題されている。彼女は、武蔵野美術大学短期大学・専攻科を出たものの、15年間、早朝から深夜まで「ブラック企業」で働き続ける。彼女は、派遣で働いていたハム工場で、寒さのあまり、商品のハムを積み込んだラックごと転倒した。ところが上司は、怪我をして血を流している彼女でなく、まず、商品のハムを心配した。福島で被爆した馬たちの姿は、「さんざん働いて使い捨てにされていく社畜の私自身の姿と、重なって思えました」と彼女は書く。それから、彼女は「いのちとは何か。生きるとは何なのか」と深く考え、画家の道を選択した。 「絵は絶望を希望に変える」と著書の最後に記されている。〈表現は希望〉〈絵は希望だ〉と繰り返し述べている。彼女は今、中学校での授業や講演会、ワークショップも開いている。そこで生徒たちの生きづらさに寄せて「あなたのいのちは地球とくらいに大きい」と伝え続けている。 (2025年1月19日まで 都立第五福竜丸展示館で開催・入館無料) Created by staff01. Last modified on 2024-12-24 17:03:19 Copyright: Default |