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約束を守れず天国に行ったサムスンマン

サムスン半導体白血病、貴重病、サムスンLCDまで

チョン・ジェウン記者 2010.06.22 08:44

社会が忘れた頃になると爆発する。パク・チヨン氏の死亡以後、サムスン電子 半導体事業部で働き、白血病をはじめめとする職業病ガンなどにかかった被害 情報提供者は55人に増えた。そのうち17人が死亡した。

さらに、半導体事業部だけでなく、サムスンLCD事業部でも被害者が発生した。 半導体労働者の人権と健康守備パノルリム(以下パノルリム)によれば情報提供 者のうちサムスンLCD事業部に勤務して白血病などの珍しいガンになった人は、 6人にもなる。現在までに2人の労働者が死亡し、4人が闘病中または稀な病歴が あると集計された。半導体事業部で勤務していなくても安全ではない。

縦隔悪性新生物≠肺ガン

故ヨン・チェウク氏は、サムスンLCD事業部の湯井工場(忠南道天安市)に5年2か 月勤務し、昨年7月に『縦隔悪性新生物(縦隔部位に発生した悪性新生物で、腫 瘍の種類は生殖細胞腫)』という珍しいガンにかかり、発病から1年5か月で亡く なった。

サムソン電子側が関連疾病はサムスン電子とは無関係、勤労福祉公団は関連疾 病は労災ではないと主張しているが、被害者は連日増加している。その上、サ ムスンLCD広報担当者はメディア忠清との電話通話中にヨン氏の死亡原因は『肺 ガン』ではないかと問い直した。

「兄さんはガンの診断を受けた時、腫瘍がとても大きくて、坑癌治療を何回か 受けた後に大きさを小さく氏、腫よう除去手術をするだといいました。坑癌治 療に入れば精子がすべて死ぬのであらかじめ採取しなければならないと検査を 受けたのですが、検査の結果『無精子』と出てきました。他の白血病被害者も 生殖能力に問題が起きたという話を聞くので、関連性があるのではないかと思 います。常にりりしかった兄さんは、赤ん坊を持てないという話を聞いてガー ルフレンドのところに行って『なぜ自分にこんなことが起こるのかわからない』 と初めて泣いたそうです。」

ヨン・チェウク氏の妹ミジョン氏は、兄さんの死亡原因を明らかにするために あちこちで努力した。兄さんの同僚と会い、サムスンLCDラインについて勉強し、 パノルリムを訪ね、兄さんのノートパソコン、メールを見て、関連の証拠を探 したりもした。『自分たちが分かるまで話す』という同僚は、パノルリムと母 親が事業場まで訪ねて行ったが、突然残業と会議があると言って出てこず、連 絡できなかったこともあった。しかしミジョン氏の努力で同僚から兄さんの勤 務環境について、一部聞くことができた。

「うちの兄は2004年6月、サムスン電子湯井工場LCD事業部に入社しました。同 僚に電話した結果、兄さんはLCD TFT(7ラインDRY-ETCH工程)でずっと働いてい たということが分かりました。そのラインを担当し、セットアップと、維持保 守をしてきました。機械の事故がない日は機械を点検し、事故があった日には 事故原因を明らかにして処理結果を書き、報告していました。兄さんが働いて いた工程では、イソプロフィルアルコール(IPA)等を使っていました。IPAは基 準値以上に露出すれば中枢神経や目と皮膚に深刻な影響を与え、肺鬱血と目の 損傷などの症状を起こす危険物質です。また、LCD工程の中でTFT工程は半導体 製作工程と非常に似ているといいます。半導体事業部で働いて白血病で亡くなっ たファン・ユミ氏も、兄さんが働いていたエッチング工場で勤務していました し、IPAなどの有害物質を使いました」。

しかしサムスンLCD側は言う。一部似た工程もあるが、LCD 7ラインは2004年以 後の最新ラインで、有害物質は機械の中だけで使われるから流出の危険はないと。

妹のミジョン氏は病床の兄さんが笑顔で「妹のミジョンが一番しっかりしてる」 といった言葉がまだ耳元で響いている。

▲妹のミジョン氏は病床の兄さんが笑顔で「妹のミジョンが一番しっかりしてる」といった言葉がまだ耳元で響く。

命値段=駆け引き?

兄さんの死で、チェウク氏の家族の人生は根から変わった。ミジョン氏はサム スンエスワン器興工場で働いて2年8か月で止めた。パノルリムおよび市民社会 団体でサムスン白血病に関して宣伝戦をするときは、これを防いだ。ミジョン 氏は、兄さんの死の後にとてもその仕事を続けられなかった。

「兄さんが病気になる前は、パノルリムが何かも知らなかった。器興工場でサ ムスン白血病宣伝戦に来れば、ただ何も考えず待機して状況を見てしました。 私たちは休業も返却して待機しました。エスワン職員はこうした宣伝戦やデモ が嫌いで、面倒だと思います。兄さんが死んだ後、私の健康も急激に悪くなり、 しばしばデモしに来る遺族を見て、誰よりも彼らの気持がよく分かるので、一 方では罪悪感を感じていました。直前でデモをすれば私は後ろを向いて別の方 を見て立っていました。毎日兄さんを思い出して泣くお母さんを見て、もうこ れ以上はできないと思い、3月には進級も確定した状態でしたがみんな放棄して 辞表を出しました。」

両親も息子を失った悲しみで地獄のような日を送った。ミジョン氏の話を静か に聞いていたお母さんのチェ・スリョン氏もひと息ついて一言いった。息だけ はしているが、生きていても生きている気がしないと。

「ミジョンは神経性胃炎が激しくなりました。私とミジョンと、二人とも精神 科に通っています。私はチェウクが病気と診断されて、空が崩れたような気が しました。とても衝撃でした。この日この時まで衝撃です。眠ることもできず、 病院通いをするのが仕事です。夜に寝られず、ミジョンと私、二人とも憂鬱症 が激しく、治療を受けています。チェウクのお父さんは酒、タバコで歳月を送っ ています。」

▲勤労福祉公団天安支社から労災再審請求を終えて出てきた故ヨン・チェウク氏のお母さんチェ・スリョン氏は何も話さず遠くをながめるだけだった。

勤労福祉公団天安支社から労災再審請求を終えて出てきた故ヨン・チェウク氏 のお母さん、チェ・スリョン氏は、何も話さず遠くをながめるだけだった。

一家庭が破綻した。チェウク氏の死のためでもあるが、サムスン、勤労福祉公 団側の態度は、チェウク氏の家族に拭えない傷を与えた。チェウク氏が死んだ 後、家族は1月に労働災害を申請したが、3月に不承認を受けた。しかしパノル リムによれば、労働災害審査の過程で独立した機関の疫学調査もなかったばか りか、会社側の資料だけで一方的に不承認にしたと主張した。不承認の理由の 中には業務とは関係が少なく、家族歴があるということだった。お母さんが胃 ガンで治療を受け、母方のお祖父さんが肺ガンだったということだ。しかし、 これらの病気はチェウク氏の珍しいガンと関係があると断定するのは難しい。 結局彼らは14日、勤労福祉公団天安支庁を訪ねて、労災再審申請とともに疫学 調査を要求した。

「兄さんの健康保険療養給与内訳を見ると、2004年から2009年までの5年間、兄 さんが死ぬまで331回病院を利用しました。入院と来院日数は566日で入院日数 も合わせると平均3日に一回の割合で病院に行ったんです。腹痛、皮膚炎、食道 炎、筋骨格系疾患などの診療を受けた記録は25ページにもなります。そんなに 苦しくても家の初孫だからか、苦しそうな表情一つせず黙黙と働いていたよう です。」

サムスン側は個別にチェウク氏の家族を探した。しかし家族の胸には傷だけが 幾重にも積もっていった。

「(サムスンから)電話はものすごくたくさん来ました。家の前に訪ねてきたこ とは3回程度あります。家に入ってきて気楽に話をしようというのに、駐車場ま では来ても絶対家には入ってこないそうです。独立した場所に行きます。労災 が不承認になり、お母さんが正当な補償が必要だ、ラインを公開しろと言いま した。するとサムスン側は労災に準じる算出公式があると言って計算するとい いました。私たちがパノルリムと共に労災再審請求をすると言うと、わけもな くパノルリムと一緒にやって妙案があるのか? 生計も苦しいのに、払う金を受 け取れといいました。いつも同じ話をするだけです。最後には両親が訪ねて来 るなと言って、大声を出して泣きました。命の値段で駆け引きをするから... マスコミで報道されるとまた電話がきました。本当に労災再審請求をするのか と... すると言うとまた電話すると言って切りました。」

希望=結婚

湯井を通れば遠くからも一目でサムスン職員の社員アパート、夢の安息所『トゥ ラペリス』が見える。その道を通るときは、原野に怪物のように立っているア パートだと叱責する人々もいて、『いったいいくらなのか?』『管理費だけでも 高いんでしょう?』『あそこに入れば成功したと思われる』とうらやましそうな 目で一言ずつ言う人々もいる。

模範社員だったチェウク氏もトゥラペリスに『当選』する程頑張って働いた。 チェウク氏は高校の時から『サムスンマン』が夢で、サムスンに入社した時は 世の中のすべてを手にいれたかのように自負心を持ち、ミジョン氏にも良い会 社だと推薦した。

「兄さんが寄宿舎に入る時、母と私を招いて寄宿舎の中も見せてくれて、遊園 地のチケットも安く入手でき、兄と友だちが遊びに行ったりもしました。トゥ ラペリスは幹部が当選するのですが、社員は考課点が高い何人かが当選したと 喜んでいた姿が生々しいです。同期で自分が一番はやく進級したというので、 当選は当然でした。いろいろな提案をたくさん出して、提案賞も何回も受け、 いつも自分が一番よく残業して、一番たくさん月給を受けたと自慢したりしま した。アパートのモデルハウスに母、父、私を呼んで見物させながら、もうア パートに当選もしたし、結婚して自分が両親を世話して暮し、親孝行すると言っ ていたのに。結局トゥラペリスでほとんど暮らすこともできず天国に行きまし た...」

チェウク氏はミジョン氏との約束を守れなかった。ミジョン氏が嫁に行く時、 兄さんが直接作ったLCD TVフルセットを買ってやるというチェウク氏は、死ぬ 3日前に強い鎮痛剤を打ち、ついに遺言一言もできず苦しそうな悲鳴をあげて天 国に行った。チェウク氏が守れなかった約束はこれだけだろうか。ただ残った 者は、チェウク氏が日記に「希望=結婚」と書いた文句を見て、悲しむ暇もなく 涙をぼろぼろと流すだけだった。

被害者数が増えて、半導体事業部からLCD事業部まで被害規模が拡がっている、 別名『サムスン白血病』は、もはや社会的に解決すべき中心的な課題に浮上し た。この問題にあまり関心のない人も、サムスン白血病の件に接すると『また か?』と質問するのが常だ。これを無視できない理由は、被害者(家族)がいると いうだけではない。チェウク氏のお母さん言葉が十分に理解できる理由だ。

「チェウクのような人をこれ以上出してはいけません。たった一つの理由です。 これ以上の理由はありません。会社では労災再審しても承認されないだろうと いいます。私たちも会社から金を受け取って終わらせれば楽でしょう。それで も世の中に知らせなければなりません。私たちまで口を閉じれば、さらに多く の被害者が出るかと思って」。 (記事提携=メディア忠清)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-06-23 05:09:35 / Last modified on 2010-06-23 05:09:36 Copyright: Default

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