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「移住労働者が雇用を奪う?」

[コラム]移住労働者雇用『クォーター制』を越えて

チョン・ヨンソプ(移住労組)/ 2010年05月02日16時28分

政府は毎年、雇用許可制クォーター調整により、国内の移住労働者数を統制し てきた。毎年年初に『外国労働者政策委員会』がその年のクォーターを決め、 これを発表する。2010年は3月31日、今年導入される数字を発表した。その数字 は2万4千人。2008年には13万2千人、2009年には3万4千人だった。2008年末の経 済危機の余波で2009年導入クォーターが前年度の4分の1に減っても、今年はさ らに1万人削減された。経済危機が去らなかったので内国人の雇用保護のために は移住労働者をさらに減らさなければならないということだ。

果たして移住労働者が内国人の雇用を代替しているのだろうか? 移住労働者が 雇用をめぐり、内国人と競争していて、はなはだしくは雇用を奪っているとい う政府の論理は正しいのであろうか?

まず、主に移住労働者が働く零細事業所等を見よう。これらの事業場は普通3D 業種と呼ばれる工場で、内国人が求職を忌避する所だ。それで事業主は移住労 働者より高い金を払い内国人を求めようとしても、うまく労働力を求められな い。実際に彼ら事業主のほとんどは、内国人労働力を得られず移住労働者を雇 用するという。農業や漁業のような業種はさらに深刻な状況だ。(ところが同じ 雇用許可制ビザでも農業や漁業で働く移住労働者には、休日や休憩時間、超過 勤労手当てのような勤労基準法条項が適用されず、低賃金と長時間労働の程度 ははるかに激しい。)

2008年12月、政府は事業場の環境改善に設備投資し、外国労働者を内国人力に 変えれば設備投資費を最大50%助成して代替し、雇用する内国人1人当り120万ウォ ンを支援する政策を出した。しかしこれまでこれが効果があったのかは疑問だ。 過去、IMFの直後も政府は外国労働者を内国人に変えれば1人当り100万ウォンを 支援したが、果たしてそうした政策が失業率の減少に効果があったのかは、全 く報告もされなかった。

さらに大きな問題は、こうした政府の政策は、移住労働者が雇用を威嚇してい るといった誤ったイデオロギーを助長することだ。政府と資本側が移住労働者 を導入するのは値段が安く、搾取と統制がしやすい労働力を活用するためで、 また彼らの劣悪な労働条件を全般的な下降圧力として作動させ、全体的な労働 条件を下げるためだ。これは政府が移住労働者導入クォーターを減らし、内国 人力をそうした事業場への就職を誘導するといったところでもあらわれる。

またこのようなイデオロギーは、未登録移住労働者の摘発を正当化することに も活用される。彼らが労働市場をかく乱し、雇用を蚕食しているので追放しな ければならないというのだ。しかし失業と未登録移住労働者雇用に関係がある という証拠はほとんどない。最近の地方中小企業アンケート調査でも回答企業 の93%が『外国人雇用を拡大したり現行通り維持する』と答えたという。また、 一部の製造業者は人材配分増員のため国会ロビーにも乗り出した状態だ。

結局、政府はクォーター制により需給を調節するという名分を打ち出すが、実 際はむしろ3D業種現場の人材需要も充足できず、内国人をそういう領域に移動 させることもできない。あとは内国人雇用を保護するという政治的イメージだ けだ。だから移住労働者は「私たちは必要な時に使って捨てる使い捨てか」と いう抗議を持続的に提起する。

資本側の側から見てもこれは効果的な政策ではない。低出産、高齢化による人 口・労働力不足が元に戻せない状況で、移住労働の受け入れは不可避だからだ。 最近のサムスン経済研究所報告書(『金融危機と外国人雇用環境の変化』)さえ 「不況で外国人政策が過度に硬直すると、今後の需給柔軟性回復はもちろん、 長期的な社会統合にさらに大きな費用を招きかねない」と指摘した。そして、 国連も韓国が労働力不足を解消するには2050年までに1159万人の移民を受け入 るべきだと展望すると付け加えている。

では争点はクォーター制の下で少し増やすか減らすかの問題ではなく、現行と 同じように数年使って送りだす短期循環式の移住労働を続けるのか、さもなく ば長期的な労働移民を受け入れるのかではないか? 東南アジア、西南アジアか らの移住民が10年、20年長期滞留し、家族も共にきて家庭を作り、この社会の 中で一塊になって暮すことを果たして韓国の人々は受け入れるだろうか? そう いう準備をわれわれはするべきではないか?

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-05-03 16:00:09 / Last modified on 2010-05-03 16:00:10 Copyright: Default

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