韓国:非正規職キル・ライムの夢と財閥3世の連帯 | |||||||
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非正規職キル・ライムの夢と財閥3世の連帯正規職化熱望とぶつかったスタントウーマンの熱望
キム・ヨンウク記者 2010.12.20 16:10
ロシアの民俗学者で芸術理論家のウラジミール・プロップ(Vladimir Propp)は 『美談の形態論』(1928)という本で、各国の映画に含まれた話の構造を整理し た。彼は映画の中に現れた繰り返される話の構造を人間の欲望に始まったと見 た。それぞれの映画の人物は違っても、その人物がする根本的な行為の目的は 同じだということだ。 彼は登場人物それぞれの行為がその話の全体でどんな機能をしているかを見て、 話の構造の中にある機能(function)を31に分類した。こうした話の構造論によ ればシンデレラのような構造を持つ話は、時代と背景が違っても、現れるたび におもしろくならざるをえない。 最近の人気ドラマの一つがSBSの週末ドラマ「シークレット・ガーデン」だ。 このドラマも典型的なシンデレラの話の構造が基本だ。現実に差別され苦しい 生活を送る主人公が王子と出会い、身分上昇をするという話の構造は、資本主義 時代の非正規職女性と財閥3歳の童話のような愛の物語に再構成された。 貧しいスタントウーマンのキル・ライム(ハ・ジウォン)と財閥家3歳のチュ・ウォ ン(ヒョン・ビン)の不確かな愛はそれぞれが属する階級的現実と二人の欲望が 交差する地点で話が続く。 ウラジミール・プロップは各国の映画に含まれた2つの基本的な欲望を発見した。 一つは物質への欲望で、一つは性への欲望で、話というものは二つの欲望(快楽 原則)を制限する現実原則との葛藤構造として現れるという。したがっておもし ろい話とは、ほとんどが現実原則が快楽原則を抑圧しており、それは正しいか どうかを無意識的に反省させる。現実原則は現実として守るべき倫理と風俗、 道徳、法律などだとすれば、快楽原則は人間の基本的な欲望の通りにすること だ。二つの原則が絶えず衝突する時、話は新しい対立を呼び結末に向かって 前進して行く。 ▲アクション俳優経歴7年のキル・ライムは低賃金非正規職の典型だ。[出処:SBSシークレット・ガーデン キャプチャー] 者所有者の倫理の前に夢を勝ち取ろうと闘うキル・ライムキル・ライムにとっての現実原則は、資本主義的な倫理だ。ほとんど演技者に とってアクションスクールという徒弟システムは、雇用安定や労働災害の死角 にある。絶え間ない雇用不安と低賃金に苦しむ助演とエキストラ、スタント 俳優が差別される現実は、いつかはスターになるという欲望に隠されている。 それで彼女にとってホルモン焼きは80年代の映画、ストライキ前夜に現れた マッコリ一杯にキムチという低賃金の疲れた労働の象徴と重なる。 アクションスクールのような非正規職雇用は本当に厳しい雇用だ。キル・ライ ムが、もうやめるという6期後輩に「これまでしてきたことを悔やまない自信が ある?」と聞くと、後輩は「惜しいけど、これからのことを考えるほうがずっと 恐いんです」と言う。キル・ライムは「みんなが同じ夢を見ることはできない? どこで何をして暮しても、胸が躍ることをして、それが夢じゃない?」と、夢を あきらめる現実を残念がる。 こうした夢の欲望は25日間蔚山現代車第1工場を占拠した非正規職労働者にも現 れた。寒さと飢えの中で25日間座り込みを続けた蔚山現代車非正規職労働者の 相当数は、携帯電話のワンセグで「シークレット・ガーデン」を見て週末の夜 の空腹に耐えた。 シークレット・ガーデンを楽しんだ非正規職は法と原則という現実原則を越え、 自分の欲望に忠実であろうとした。彼らの欲望は非正規職の悲しみと差別が呼 んだ強烈な熱望であり、苦しい闘争に自分を投げ出した。 現代車の非正規職が5年から10年以上差別される下請に耐えたのは、それまでの 仕事が惜しかったからだ。彼らが闘争を始めたのは今後も苦しみ差別されそう だったからだ。 キル・ライムはアクションスクールに入る前にも非正規職労働者だったことが 19日の放送分で出た。キル・ライムの経歴は現政府が2020国家雇用戦略で推進 する低賃金短時間パートタイム雇用だった。消防署員だった父の下で育ち高校 を卒業しただけのキル・ライムは、食堂サービス6ケ月、ネットカフェカウンター 3ケ月、ハンバーガー調理担当5ケ月、カーセンター洗車2ケ月、補助出演3ケ月 といった雇用だけを26か月間、転々とした。キル・ライムのスタント経歴が7年 で、劇中の年齢が29歳であることを考えると、キル・ライムは学校卒業と同時 に非正規職の道ばかりを歩いた。その上、キル・ライムにアクションスクール のスタントウーマンは夢のような雇用だが、これもやはり自身の労働力を担保 にした低賃金・長時間労働の典型だ。 現代車非正規職相当数もキル・ライムと同じように現代車社内下請業者に入る 前に社会に第一歩を踏み出し、低賃金に夜間交代勤務という下請業者や多様な アルバイト雇用を体験した。 現在30代初中盤の現代車下請労働者は、2002年以後20台中半分や後半頃現代車 下請に入社した。当時彼らには正規職雇用は至難だった。98年IMF経済危機が強 要した整理解雇と派遣法が正規職がいなくなった雇用を非正規職で埋めた。そ の後遺症は2002年から表れ始め、今は青年失業と雇用の二極化が社会問題になった。 現代車座込場で会った非正規職労働者は、これほど永い時間の下請生活で、非 正規職が一つの身分になったことを正確に認識していた。それである非正規職 労働者は自分の愛を実現するにも正規職というタイトルがとても切実だった。 雇用不安に苦しまず第4身分と烙印された非正規職から抜け出すために正規職化 という童話のような欲望を夢見た。 ▲キル・ライムの履歴書。キル・ライムの経歴は現政府が2020国家雇用戦略で推進する低賃金短時間パートタイム雇用だった。消防署員だった父の下で育ち高校を卒業しただけのキル・ライムは食堂サービス6ケ月、ネットカフェカウンター3ケ月、ハンバーガー料理担当5ケ月、カーセンター洗車2ケ月、補助出演3ケ月といった雇用を転々とした。 イタリアの職人が作ったジャージを着たチュ・ウォン、キル・ライムの夢を挫くのか?互いの身分を認識したのはキル・ライムとチュ・ウォンも同じだ。身分の差に よる現実をとてもよく知っていたキル・ライムは当初から二人の恋愛の可能性 を遮断したが、互いに異なる身分的な魅力に陥ったチュ・ウォンは自分の現実 を越えるかどうかの岐路に立った。 だからシンデレラの話の構造はいつも見る人をときめかせる。東洋と西洋を問 わず、シンデレラのような構造を持つ話は、身分上昇による童話のような幸せ な結末を与えるためだ。 だがシンデレラの話は現実と闘う人には致命的だ。白馬に乗った王子様やイタ リアの職人が腕によりをかけて作った数百万ウォンのブランド・ジャージを着 た財閥の息子が現れて、貧しく迫害される女性を現実から脱出させる夢を見さ せるからだ(王女と貧しい男の関係も同じだ)。王子や財閥と出会う前、女性は 自分の力で夢を実現するが、王子や財閥は夢を挫くが裕福な人生を約束する。 シークレット・ガーデンの話の構造は二人の身分の対立が闘争になって導く。 キル・ライムは愛のためにも夢のためにも、闘争のような毎日を暮さなければ ならないが、チュ・ウォンの闘争は複雑な家内権力の暗闘で、生き残りと既得 権を捨てることを決めなければならないという対立だ。 今まではキル・ライムはその王子が自分の夢を壊すことを拒否している。この ドラマがどんな結末になるのかは分からない。まだシンデレラの話の構造の公 式にいくつかのエピソードで解いていく機能はそのままだ。基本的なプロット は主人公の欲望を妨げる現実的条件をどう越えるかだ。 ▲蔚山現代車第1工場3階で座り込んだ非正規職は毎日夜正規職だけが自由に通えた階段の下に行ける日を夢見て寝た。[出処:合同取材チーム] 非正規職労働者たちは最高裁判決以後、法だけに期待していては正規職化の望 みが夢に終わるかも知れないという危機感で、現実を越える闘争を始めた。彼 らは自分たちの白馬に乗った王子である鄭夢九会長様にしがみつくだけではな かった。彼らの夢に決断を下せる人も鄭夢九会長だが、彼らは鄭会長にしがみ つかず、鄭会長に立ち向かった。彼らの闘争がどんな結末になるかは韓国社会 の大きな関心事だ。 キル・ライムもスタント ウーマンとして俳優になる夢を進む道に現れた障害の ような愛をどう解いていくのか気になる。チュ・ウォンも自分の夢には障害だ が、身分の差を確認させ、金の封筒を差し出すチュ・ウォンのお母さんはもう ひとつの暴力と差別だ。キル・ライムがこの暴力と差別という身分の問題とど う闘うのかがシークレット・ガーデンの観戦ポイントの一つだ。 二つの身分の差は映画の人魚姫のように、誰かは水の泡になるかも知れない選 択をしなければならない。それは財閥のチュ・ウォンにとっても同じだ。チュ・ ウォンの夢である身分を越えた愛の瞬間、自分の階級的地位を剥奪される。二 人にとって水の泡は互いの階級的現実をはっきり認識した象徴的表現だ。それ でキル・ライムはチュ・ウォンに『君の言うことはみんな正しい』と話す。 チュ・ウォンが絶えず身分の違いを認めてくれと要求するためだ。 このドラマの最大の観戦ポイントは自分が愛の水の泡になるというチュ・ウォ ンがキル・ライムの闘争に連帯するのか、自分の既得権に安住して適当に妥協 すかだ。闘争を始めた非正規職の家族が対策委になれば最大の力になるが、闘 争を止めさせれば正規職化の夢を挫く最大の障害になる。恋人も同じだ。 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2010-12-21 02:52:28 / Last modified on 2010-12-21 02:52:38 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ |