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病院看病、清掃労働者...『エイズ注射針』に無策

ソウル大病院労働者3人、続々と事故...『看病労働者』は労災も不適用

ユン・ジヨン記者 2011.12.07 19:33

病院で働く清掃、看病(付き添い)労働者が『注射針』の恐怖に苦しんでいる。仕事でエイズ 患者の注射針で刺す事故が相次いで発生していて、不安感は簡単に収まらない。

特に『特殊雇用労働者』に分離されている看病労働者は、注射針を刺したり 業務中に事故に遭っても労災処理さえ受けられない。労働権はもちろん、 健康権さえ死角地帯から抜け出せない。

捨てられた注射針で傷付く労働者たち

去る9月5日、ソウル大病院り清掃労働者A氏は業務中にエイズ患者注射針が刺さ る事故に遭った。集中治療室の床に落ちていた紙を拾ったところ、紙の下にあっ た注射針で指を刺した。

[出処:チャムセサン資料写真]

その後A氏は9月5日から10月5日まで、勤労福祉公団から療養の承認を受けた。 薬品治療をしたが、不安感は消えなかった。医療連帯ソウル大病院分会は「A氏 は注射針事故の後、寝ている患者の顔が夢の中に現れる悪夢に苦しみ、注射針 を見ただけで恐怖に震えた」とし「またエイズにかかりそうな不安感で注射針 を刺した指を切りたくなる衝動まで感じた」と説明した。

そのためA氏は神経精神科で『エイズ露出への不安と憂鬱による適応障害』診断 を受け、現在も精神科の治療を受けている。11月18日には勤労福祉公団に追加 傷病申請をして、12月2日に『外傷後ストレス障害』で療養承認を通報された。

だがA氏の事故後も清掃、看病労働者の注射針事故は続いている。9月5日以後、 ソウル大病院清掃、看病労働者3人が相次いで注射針を刺す事故にあった。その うち二人はエイズ患者の注射針を挿し、また1人はどの患者が使用した注射針な のか確認できず、不安に震えなければならなかった。

この他にも労働者がこの仕事で注射針を挿すケースは一二度ではない。2010年、 医療連帯ソウル大病院分会アンケート調査によれば、注射針を刺した清掃労働 者は125人中37人に達した。特に今年だけで13人の清掃労働者が注射針を刺した という。

特殊雇用職の『看病労働者』...エイズ注射針を刺しても自費で治療

看病労働者の場合、状況はもっと深刻だ。看病労働者は勤労基準法の特殊雇用 職に分類され、労働者として認められない。だから彼らは労働災害保険法や 勤労基準法などで労働権の死角地帯に放置されている。

介護人をはじめバイク便運転手、代理運転手、ダンプ、掘削機運転手などは、 労働現場での労災発生率が高い高危険職種に属する。そのため労働界では特殊 雇用職への労災保障をはじめ労働三権の保障を要求してきた。だが政府は彼ら の賃金と労働力が事業主ではなく顧客から受け取る『自営業者』だと主張して いる。看病労働者は、勤労基準法では『家事使用人』に分類される。

特殊雇用職の労災適用を要求する声が高まったため、政府は7月に宅配、バイク 便運転手の労災保険拡大適用対策を出した。だがその対策は労働者に労災保険 料の半分、あるいは全額を負担させる方式だったため、議論の火種を大きくし ただけだ。その上、政府は労災保険拡大業種から看病労働者を除外した。

労働災害未適用者に分類されるため、現場で事故が発生してもその責任はすべ て看病労働者が担う。エイズ患者の注射針を刺した清掃労働者は、労災処理を 受けたが看病労働者は自費で治療費を支払った。

看病労働者は、患者から病気が感染する場合だけでなく、腰ディスクや筋肉痛 にも苦しむ。希望看病ソウル支部のチャ・スンヒ支部長は「感染したり靭帯が 伸びても、100%介護人本人が負担する」とし「患者の一番近くで病院業務をそっ くり受け持つ看病労働者を『労働者』と認めない政府と、看病労働者が病院の 職員ではないとし、事故を無視する病院の両方に責任がある」と強調した。

医療連帯ソウル大病院分会の関係者も「2010年に労使が注射針対策を立てると 約束したが、まだ対策が出てこない」とし「注射針事故の後の10月にも元請の 病院は看病労働者問題は自分たちではすべて解決できないとし、対策作りに 消極的な立場だった」と批判した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


看病労働者、「エイズ注射針を刺した瞬間...」

[インタビュー]ソウル大病院看病労働者キム・グムジャ氏

ユン・ジヨン記者 2011.12.07 19:36

「忘れて暮らそうとしているのですが、こうして度々思い出すと、本当に ノイローゼにかかりそうです」

ソウル大病院で看病労働者として働くキム・グムジャ(仮名.62)氏はまだ10月 21日に発生した恐ろしい事件から抜け出せない。インタビューの最初から、 キム氏はただ『忘れたい』と言い、その時の記憶を消したいようだった。

彼女は10月21日の午後、面倒を見ていたエイズ患者が保護者と外出するのを助 けるために、注射器がかかっている点滴台を移動かした。その時、突然手に鋭 い痛みが走った。刺さっていなければならない患者の注射器が抜けていて、そ の注射針がキム氏の手を傷つけた。

「注射針が刺さった瞬間、空が黄色く、土地も黄色くなって。ああ! 私もエイ ズだな、そんな考えが突然浮かびました」

[出処:チャムセサン資料写真]

病院『職員ではない』とし治療拒否...自費で治療解決

びっくりして応急処置をしたキム氏は、医師と看護師から正式治療をしなけれ ばならないという話を聞いて応急室に向かった。だが看護師は応急室は夜間に しか運営しないとし、『職員安全保健課』に行けと言った。足を返して、職員 安全保健課に到着したキム氏は、また空が黄色くなるような話を聞いた。看病 労働者は病院職員ではないから治療ができないという話だった。

「われわれは職員ではないから治療もしないというのです。気持ちは焦ってと ても恐いのに、そんな話を聞いてどんなに佗びしかったか... 私がその時どれ ほど泣いたか分からない。しかたなく教授様のところに行って話を聞き、また 職員安全保健課に行って教授の名前を出して『教授が治療しろといった』と話 すと、その時初めて治療してくれました」

やっと治療をして、薬の服用を始めたが、治療費はすべてキム氏の負担だった。 『特殊雇用職』に分類され、勤労基準法が『家事使用人』と命名する看病労働 者は、労災保険の適用が受けられないからだ。治療だけで約40万ウォンの金を 支払った。特に最低賃金法も適用されない彼らの時給は2500ウォン〜2700ウォ ン程度だ。彼らにとって治療費の40万ウォンは生活に直結する程の大金だ。

「治療費に40万ウォンほどかかりました。車に乗って行って接触事故を起こし ても弁償するのに、病院で24時間働く私たちを関係ないと無視するので、とて も残念です。病院に介護人がいなければ仕事が出来ません。必ず必要な業務で、 看護師の業務の代わりをすることも多いのに、職員ではないと言って、怪我を しても責任を負わないというのはひどいでしょう。特にわれわれはほんのわず かな月給で暮らしているのに、働いて怪我をしても自分の金で解決しろと... 本当にくやしいです」。

キム氏以外にも、9月以後、3人の看病、清掃労働者がエイズ患者の注射針を刺 す事故に遭った。だが病院側は対策どころか、何の後続措置も予防教育もしな い。希望看病ソウル支部のチャ・スンヒ支部長は、「看病労働者を管理する看 護行政課に教育を要請したが、一度も予防教育を実施せず、私達が実務教育や 制度教育をしている」とし「もし教育をすれば、病院が元請としての責任を負 わなければならないから、これを回避するため」と批判した。

キム氏は今でもあの時の事件を思い出すと、恐れを振り切れない。孤独に感染 を見守り、治療を受けた過程もまたキム氏には大きな傷だった。特に疾病発生 の心配もある。今後も業務でどんな事故が発生するかも知れないのに、何の補 償も受けられないことを考えればはがゆい。

「私がこの仕事を5年してきました。その間、病気の人を慰め、その人々を助け るのがうれしくて、辛くても楽しく働きました。それなのに今回の事故を体験 して、家族にも話せず、友人にも話せず、とても恐くて憂鬱で孤独でした。幸 い、労組や希望看病の人々と話せて憂鬱症は避けられたようです。

でもまだ恐いです。本当に一生懸命働いた労働者が怪我をしても、それを無視 するのは非人間的ではありませんか」。

注射針事故、ウイルス感染など高危険群の『看病労働者』

看病労働者はそれこそ3D業種の代表だ。一週間、日曜を除き週6日、24時間勤務 をする。月給も、勤労環境も、待遇も劣悪だ。休憩空間がなく、配膳室で立っ て食事をする勤務環境はよく知らされた事実だ。だが全てが劣悪な彼らにとっ て、さらに荷が重いのは業務の危険性だ。

患者と共に24時間生活する彼らは、エイズ注射針を刺す以外にも、患者が抱え るさまざまなウイルスに感染する可能性が高い。キム氏の場合も注射針事件が 発生する約3月前の7月、患者が病んだ『疥癬』に伝染した。疥癬はヒゼンダニ (Scabies mite)により発生する伝染性が強い皮膚疾患だ。

「病院はその患者が疥癬であることを知りませんでした。初めの介護人がその 病気にかかりました。しかしその介護人に病院は『乾燥皮膚病』と診断しまし た。それから私にその患者を担当しろといいました。病院では私にその患者の 病気はうつらない病気だといいました。

それで私がその患者を担当し、ガウンと手袋を着用して患者をふいて世話しま した。ところがある日、患者をふいていると手に水がつく感じがします。それ で消毒もしましたが8日後にからだに皮膚病が出始めました。びっくりして病院 で診断を受け、その患者もまた診断を受けたところ『疥癬』でした。病院でも びっくりしたのでしょう。しかしどうします。もう時は遅い...」

明らかに病院の錯誤による事件だが、病院は看病労働者に治療費を支払わなかっ た。その上、キム氏は、患者と薬品を分けて使い、病気を治療したが、初めの 介護人はそっくり治療費を自費で解決した。病気にかかってもキム氏は一日も 仕事を休めなかった。伝染病を抱えている以上、簡単に外を歩き回ることが できないためだ。

「初め疥癬がうつった介護人は治療費もみんな自分で解決したのです。私の場 合も、初めはどうしようかと思いました。それで病院に『疥癬は伝染病なのに、 家族のところに行くこともできず、それでもサウナに行くともっと病気が広が るでしょうし、山にでもこもらなければいけないけれど私には行けない、私が 看病の責任を取るから処方してくれ』と要求しました。すると患者の名で処方 をした薬を分けて使うことになりました。患者と私と病室で共にからだに薬を 塗りました」。

キム氏の他にも看病労働者のユン某氏は去る5月、イニュド菌に感染した。50万 ウォンの治療費と検査費はすべてユン氏の負担だった。5月にもイ某氏が感染病 棟でウイルスに感染し、6か月に一回ウイルス検査を受けている。別の被害者、 イ某氏は、2008年5月、患者から皮膚病に感染した後、今も後遺症を抱えている。

高危険群『看病労働者』、労災除外が正当か

『特殊雇用職』の看病労働者は、社会でも、職場でも、彼らの権利を認められ ない。病院の指示で働く労働者だが、『労働者』と呼ばれず、24時間病院業務 を遂行するが、『非職員』の待遇を受ける。そして病院は患者と一番長く生活 する看病労働者だけに患者の医療情報を公開せず、彼らは自分たちがどんな 危険を持っているのか知らない。

[出処:ビーマイナー資料写真]

医療連帯ソウル支部の関係者は「最近ではあるエイズ患者の医療情報を公開せ ず、ある介護人が1年間自分がエイズ患者を看病していることを知らなかったケー スがあった」とし「これは労働者が自らを保護する最低限の措置も取れなくす るもの」と批判した。

また病院は、予防接種などの事前予防ではいつも看病労働者を除外する。 『職員』ではないという理由だ。チャ・スンヒ支部長は「新型インフルエンザが 流行した時、病院では職員すべてに予防接種を実施したのに看病労働者だけは 職員ではないとし、接種を拒否した」とし「労組が対応して注射を打ったが、 いつも流行性疾患などの予防接種で看病労働者だけが除外されている」と説明した。

感染の危険以外にも、看病労働者は腰ディスクや筋肉痛などを抱えている。過 剰体重患者、下半身マヒ患者、無意識患者を車椅子に移しながら、からだに無 理がくるためだ。2009年、公共労組医療連帯分科看病労働者実態調査によれば 労働者の90%以上が筋骨格系疾患を抱えていた。だが85.4%の労働者たちはこの ような負傷を一人で治療している。

それでも雇用労働部は7月、特殊雇用労働者労災保険拡大適用対策から看病労働者 を除外した。9月に発表した非正規総合対策も、特殊雇用職労働者は全面的な 労災保険適用対象から除外された。

特に特殊雇用労働者が他の職群より労災率が高いのに、労災保険が適用されな いことに批判の声が高まっている。2010年、平均労災率が0.7%だが、介護人や バイク便などの特殊雇用労働者労災率は41.3%にのぼる。韓国の平均労災率の34倍 を上回る数値だ。

チャ・スンヒ支部長は「看病労働者は特殊雇用労働者という職種に分類された 現代の奴隷」とし「週8時間勤務、賃上げ、元請直接雇用など、解決すべき問題 は多いが、まず彼らの人権のためにも、一日もはやく労災保険適用が必要だ」と 強調した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-12-08 10:43:57 / Last modified on 2011-12-08 10:46:25 Copyright: Default

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