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リビア革命はいかにして奪われたか?

[進歩論評]帝国主義と日和見主義者に強奪されたリビア革命

パク・ソクサム(進歩戦略会議) 2011.11.06 15:20

10月20日、カダフィの死によりリビアの内戦は終わった。だが、この戦争の 勝者は誰か、そしてそれはリビア民衆にとってどんな意味を持つのか?

カダフィ権力の性格

1969年、親英のリビア王朝を追放し権力を握ったカダフィは、石油産業を 国有化し、医療と教育分野などの一部に進歩的な分配政策を取り、進歩勢力 と労働運動は徹底的に弾圧する権威主義的かつポピュリズム的な体制だった。 だが1990年代からは新自由主義開放政策を展開し、公企業の特典廃止と私企業化、 外国人投資を誘致するための法改正、WTO加入などを進め、2000年代には、 帝国主義者に石油利権を売ってわいろを受け取り、各種の補助金と失業手当を 廃止した。この過程でカダフィ一家は1500億ドル(165兆ウォン)の財産を集めた。 国家は裕福だが、人民は貧しい国だったのだ。

カダフィは『反帝』の修辞を乱発したが、イタリアやフランスなどの帝国主義 者と深い友情を結んでいた。特に、イタリアなどのEUで捕まった未許可の移住 労働者を受け入れて本国に送還する悪名高い収容所を運営し、EU国家の喜び組 役を果たした。この収容所はCIAと英国対外情報部M16はもちろん、エジプトの 情報警察も参加し、イラクの捕虜を拷問する場所に使われた。

42年間のカダフィ独裁は、真にあくらつだった。カダフィは国家を部族連合に 編成して人民委員会を作った後、その中で自分の忠誠派で形成された革命委員 会を運営した。革命委員会は、学校や官公庁、軍隊、工場など、あらゆる所で 情報部員の役割を果たした。ここには朴正煕時期の中央情報部と似たISA(国内 安全部)があった。インターネットや電話も常に監視される、大変な情報独裁社 会だった。政党を作ったり加入すれば死刑になるかもしれないこの国では、ど んな政党や運動体も生き残れなかった。市民社会や人権もなく、情報警察によ る拉致、顧問と殺人が横行した。2月にリビア民衆が蜂起したほとんどの都市で 警察署、革命委員会、ISAなどの建物を燃やし、彼らを処刑したのは彼らへの 怨念がいかに高かったのかを語っている。

リビア民衆抗争の発端

隣国のチュニジアとエジプトで独裁者を通報し、カダフィの42年間にわたる 過酷な独裁に苦しんだリビア人も、カダフィを追放することができ、追放し なければならないと考えた。FaceBookで2月17日を『怒りの日』に決めてデモを しようという提案があった。

2月15日、カダフィは有名な人権弁護士であるテルビルをベンガジで連行した。 カダフィは、1996年にブスリム刑務所で、主にベンガジと東部出身の収監者 1200人を虐殺したが、テルビルは犠牲者の家族を代弁する弁護士だった。テル ビルの連行が伝えられると、ベンガジ市民は警察署で抗議デモをした。翌日に はバイダをはじめ東部のさまざまな都市に抗議デモが広がった。

2月17日にベンガジへとデモが広がり、保安隊(軍隊ではなく、鎮圧警察と情報 警察)が銃を撃ち、8人が死んだ。その翌日には葬儀の行列に銃を撃ち、14人が 死に、これに怒ったデモ隊は警察署と保安隊に火をつけた。保安隊とカダフィ 忠誠派(彼らは主に革命委員会に所属する)は、中心街の軍部隊があるカティバ 団地に後退した。近隣の都市では武器庫が襲撃され、武装した所もあり、ベンガジ のデモ隊も、離脱した警官の支援で一部が武装した。

2月20日、デモ隊は飛びかう弾丸の中、ガスボンベをのせてカティバ団地の正門 を爆破した。そのため内務長官のユニス所長は特戦旅団を共にベンガジにきて、 デモ隊と交渉し、カダフィ忠誠派を安全に撤収させ、自分は反カダフィ勢力に 合流した。多くの警察と保安隊、そして軍人がカダフィを離脱し、反政府勢力 に合流した。トリポリでも2月20日にデモが起きた。保安隊が射撃し、デモ隊は 保安隊と『人民の殿堂』の建物に火を付けた。内務長官に続き、法務長官の ジャリル(過渡国家委員会NTC代表)も離脱して、国連駐在次席大使のダバシを はじめ、権力の核心が続々と離脱した。

東部はほとんど解放され、ミスラタなど西部も蜂起に加担した。この勢いでは カダフィは逃げるしかなかった。このように大衆が自らを解放する、すなわち 民衆主導の革命は、2月20日が過ぎたころから歪曲され始めた。

内戦への変化と帝国主義の介入戦争

2月の下旬からカダフィがアフリカの傭兵を動員し、デモ隊を虐殺して戦闘機と 軍艦も動員して火の海にしているという西側言論の報道は、世界の常識になっ た。集団虐殺(ジェノサイド)を行うカダフィを止めるために国際社会が『人道 主義的な介入』をすべきだという世論が高まった。そして帝国主義者たちは3月 17日、国連の決議を口実に、リビア内戦に介入した。しかし当時、はるかに多 くの非武装デモ隊を虐殺していたバーレーンやイエメンやシリアについては、 誰も人道主義的な介入を語らなかった。あるいは、パレスチナ市民を虐殺する イスラエルについては語らなかった。真実は何だったのか?

2月21日、トリポリではカダフィの子分が緑色広場に接近するデモ隊に射撃して いたが、飛行機は一機も飛んでいなかったその時間に、アルジャジーラは目撃 者を装って、トリポリとミスラタがカダフィの戦闘機とタンクそしてアフリカ 傭兵に虐殺されていると生放送した。本当にあくどいデッチ上げ放送だった。 西側のマスコミは、アルジャジーラの報道としてカダフィ虐殺の蛮行を全世界 に伝えた。米国務長官ヒラリー・クリントンは、『火の海』を阻止しろと相槌 を打ち、国際刑事裁判所の所長オカムポは1万人(当時の死亡者はベンガジなど の犠牲者を含み、200人にも満たなかった)が死んだと述べた。この報道は、3月 1日に米国防長官の記者会見で、記者からの追及により捏造だったことがわかった。

3月中旬、アルジャジーラはカダフィ軍の燃えたタンクから反乱軍が拾ったバイ アグラの箱を公開した。するとオカムポはカダフィが大量強姦を命令した明白 な証拠があると騒ぎ立て、ヒラリー米国務長官は、大量強姦ばかりか、処女性 検査も全国で起きていると謀略の先頭に立った。だが、焦げた痕跡が全くない 箱の事件も、初めから反乱軍とアルジャジーラが作り出した捏造であることは 明白で、米軍事当局と情報当局が強姦説については何の証拠もないと話したこ とは、すでにNBCニュースが明らかにしていた。

アムネスティのロベラは、2月26日から5月28日までの現場調査報告書で「強姦 された人にはひとりも会えず、強姦被害者を治療したというたった一人の医師 にも会えなかった」と言う。そればかりか「反乱軍が傭兵と主張する人の中で たった1人の傭兵も確認できなかった」と述べた。反乱軍のサイトに掲示された デモ隊への発砲を拒否してカダフィ軍に虐殺されたという軍人を写した動画は、 反乱軍が捕まった正規軍を虐殺したものだと明らかにした。

パトリック・コッバーンが指摘したように「アムネスティの調査は、カダフィ 政権が反対側を野蛮に抑圧した歴史を持つとしても、集団虐殺についての何の 証拠もないという、権威ある国際危機グループInternational Crisis Groupの 最近の報告書を確認できる。報告書は『多くの西側マスコミが事件の初めから デモ運動を全く平和だと描写して、政権の保安隊が安保に対するいかなる挑戦 も見られない非武装のデモ隊を理由もなく虐殺しているという、とても一方的 な視角を見せてきたと付け加えた」。

東部をはじめ、リビアのほぼ全域で民衆が公権力を追放し、解放する民衆蜂起 が絶頂に達した2月24日、カダフィを離脱した法務長官のジャリルは、部族長と 経済界と軍出身者を含む古い支配階級を集め、『国連介入を要請する代表団と して過渡国家委員会を作ろう』という会合を開き、3月2日には唯一合法政府を 自称し、NTCを作り旧王政の三色旗を振った。

政権や体制を否定することと、国家を否定することは違う。革命は、市民と公 権力の戦いだが、内戦は軍隊間の戦争だ。光州の市民軍がいくら武装をしても 内戦ではなく抗争だが、4.19革命の時に李承晩打倒にとどまらず、人共旗を振っ たり臨時政府を云々すれば反乱になる。ジャリルとNTCは革命を内戦に変えるこ とにより、カダフィに軍隊を使用する名分を与え、そして国際社会の介入を引 き出す名分を作るため緻密に活動した。離脱した軍隊の武装力だけではカダフィ のよく訓練された正規軍には勝てなかった。3月中旬、カダフィがベンガジまで 進撃してくると、NTCはもうすぐベンガジが『火の海』になるとし、帝国主義の 介入を哀願した。そして飛行禁止区域が設定され、フランスをはじめとするNATO と米国が9600回もの無慈悲な空襲を行った。8月20日にはトリポリで蜂起が起き、 結局カダフィを追放することができた。

振り返れば、2月21日に国連次席大使ダバシが『傭兵』と『集団虐殺』と『飛行 機』を理由に『飛行禁止区域』設定を哀願した後、黄色ジャーナリスト、アル ジャジーラと西側言論、オカムポとヒラリーをはじめとする多くの帝国主義者、 そしてNTC(過渡国家委員会)と反乱軍は、帝国主義による介入の名分を作るため に、戦闘機、アフリカ傭兵、大量強姦、集団虐殺などを言い立てて、あらゆる 謀略の先頭に立っていたことが分かる。これらすべては、地上戦が負担になる 帝国主義者が飛行禁止区域の設定という目標のために、いかに緻密に役割分担 をしたかが分かる。ニューヨークタイムズの報道の通り、CIAはオバマの承認を 受け、すでに2月の中旬からベンガジで諜報活動をしていた。今回のリビア革命 に介入するために、イエロージャーナリズムと帝国主義者が繰り広げた捏造劇 は、人類歴史上最大の詐欺だと言える。

帝国主義の介入の理由

なぜアルジャジーラや西側報道機関、帝国主義者たちは、こんな悪扇動をした のか? なぜ西側が介入したのかについては、多くの人が石油利権のためと主張 する。しかし、カダフィも石油利権は十分に保障していたので、実は西側の帝 国主義者たちと独占資本は、カダフィ体制に全く不満はなかった。ウィキリー クスには、ペトロ-カナダが30年間の石油採堀権を得た代価としてカダフィに 10億ドルを支払っていたことが暴露された。アフリカ不法移民にもカダフィは 徹底してイタリアとEUを満足させてきた。

チュニジアとエジプトで、帝国主義的寄りではない自主的な政府、または民衆 の顔色を伺って露骨に帝国主義に肩入れできない政府ができる可能性があると いう状況で、リビアだけでも西側、特に米国の軍事同盟にするか軍事基地とし て使用することは大変重要だ。またカダフィを支援し、この地域で反米や反帝 感情を悪化させるより、怒りの標的を捨てることで西側寄りの体制を維持する ほうがはるかに良い選択であり、そしてカダフィは常に中国やインド、ソ連な どとも取り引きするため、米国と西側は石油と軍事的影響力の排他的な確保の ために、バーレーンやイエメンの虐殺には目を塞ぎ、『人道主義的介入』を 口にしつつ、もうひとつの傀儡政権の創出に出たのだ。

堕落した革命

人口650万人のリビアは、人口の3分の1が黒人で、150〜250万人のサハラの南 から来た黒人移住労働者がいる。ロベラ報告書にあるように、反乱軍は多くの 黒人をアフリカの傭兵にして虐殺した。本当に汚い人種主義だ。反乱軍が掌握 した地域の自警団は、ベンガジだけで数十活動しているが、主にカダフィから 離脱した警察と保安隊出身者で、彼らはカダフィ忠誠派を見つけるとし、主に 黒人を殺害し、財物を略奪した。まるで李承晩の子分だった西北青年団のよう だ。こうして日和見主義者が横行すれば、素朴な民衆の自発性は萎縮するものだ。

カダフィは死んだ。平和デモを計画したことで6年から25年の懲役に送られ、多 くの人々を拷問して虐殺したカダフィは死んだ。しかし、その空席にはカダフィ を離脱した高官、軍の指揮官、部族の指導者、そして経済人など、旧支配階級 が帝国主義と反乱軍のポンビキ役をするために作ったNTCがある。反乱軍には、 明らかに民衆がいるが、その核心と幹部は、行政と組織経験がある離脱した軍 の幹部と警察と保安隊が掌握している。自警団も同じだ。

NTCは出発から、カダフィが帝国主義者と結んだすべての条約と利権を尊重する と堅く約束した。そして今、西側の指導者と投機屋が先を争って集まっている。 カダフィは、明らかに数十年間抑圧されてきたリビア民衆により追放されたが、 リビア内戦の最大の勝利者は米国などの帝国主義者であり、その次には彼らに あらゆる利権を約束したNTCの反動勢力と利権争いに汲々とする部族のリーダー がいる。そして彼らにこびる警察と保安隊出身者などの日和見主義者が一役を 狙っている。

結局、リビア民衆の革命は、帝国主義者や日和見主義勢力に強奪された『堕落 した革命』になったのだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-11-07 02:48:14 / Last modified on 2011-11-07 02:48:16 Copyright: Default

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