本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:[チャムセサン企画]文在寅100日を語る(2)朝鮮半島
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item moon100_2
Status: published
View


続く朝鮮半島ジレンマ、主体的な解決だけが答だ

[チャムセサン企画]文在寅100日を語る(2)朝鮮半島

ペ・ソンイン(韓神大) 2017.08.23 09:12

[編集者 注]文在寅(ムン・ジェイン)政府の発足から100日、 キャンドル・デモに力づけられて発足した政府に対する期待はどのあたり留まっているのでしょうか? チャムセサンは「文在寅100日を語る」という企画で各界の社会運動専門家たちの声をのせます。 政府の成果と限界、そして運動陣営の課題に注目する今回の企画に読者の皆様の大いなる関心を望みます。

[連載順序]
労働 |キム・ヘジン(撤廃連帯)
朝鮮半島 |ペ・ソンイン(韓神大)
教育 |カン・ドンジン(フォーラム社会福祉と労働)
言論・メディア |クォン・スンテク(言論連帯)
文化 |パク・ソンヨン(文化連帯)
医療、福祉 |イ・ヒョン(全教組正しい教育研究所)
女性 |韓国性暴力相談所
政治 |イ・グァンイル(聖公会大)

[出処:資料写真]

文在寅(ムン・ジェイン)政府発足から100日間、70%より下がったことは一度もない高い支持率は、それだけ国民の国政運営に対する満足度が高いという意味だ。 それでも最も低い評価を受けて憂慮される部門は、最近の「朝鮮半島8月危機説」でも現れたように、対北朝鮮政策を含む朝鮮半島問題であった。 それは東北アジア情勢の躍動的な変化に対する安易な姿勢と認識不足により、安保のジレンマに陥ったためだ。

情勢認識が不足する文在寅政府

文在寅政府は北朝鮮に対する制裁と対話を併行しながら完全な非核化を平和的方法で追求し、 朝鮮半島に恒久的平和を定着させるという対北朝鮮構想を打ち出した。 北朝鮮が核を凍結すれば、韓米の要求である非核化と北朝鮮の関心事である終戦協定、体制保障、北朝鮮・米国との関係正常化をパッケージで扱うというのが核心の内容だ。 それで離散家族対面や冬季オリンピック参加など、簡単な分野から南北関係を再開しようと提案した。 だがこうした接近は、この8年間、独自に生存してきた北朝鮮にとって全く魅力的ではなく、新しくもない旧態の方法であるため、南北関係を再開する何の理由もない。

オバマ政権の「戦略的忍耐」は、同じ時期の李明博(イ・ミョンバク)-朴槿恵(パク・クネ)政権8年間の南北関係断絶と連動して、北朝鮮の生存能力を向上させた。 北朝鮮の生存能力は、核保有そのものであり、ひたすら突き進んだ。 北朝鮮が米国から体制の保障を受けるためには核能力を高度化し、核保有国の地位を持たなければならなかった。 そのために5回の核実験を敢行し、運搬手段を確保するために、暇があればミサイルを発射した。 今まで北朝鮮と国際社会は同じパターンを繰り返している。 北朝鮮の核・ミサイル試験に国際社会は制裁を加えても、北朝鮮はそれとは無関係に核・ミサイルの試験を行い、 国際社会はまた制裁するというパターンを繰り返している。 結局、今年になってICBMの開発が最終段階に入り、東北アジア地域の安保環境が根本的な変化を迎えるようになった。

その上、米国と国際社会はずっと「歴代最強の制裁」を加えたが、結局期待していた成果は上げられず、 新しい条件を出すしかないという自家撞着に陥った。 制裁と圧迫で問題を解決することはできないことが明らかになったのだ。 このように情勢が北朝鮮に有利な状況で、直ちに南北関係を再開する必要はなかったのだ。

それでも文在寅大統領は就任100日記者会見で 「北朝鮮が再び挑発すればさらに強力な制裁措置に直面することになり、耐え難いことになる」とし 「少なくとも北朝鮮が追加の挑発を止めることで対話の雰囲気が作られる」と発言したが、 こうした南北対話論は適切な発言ではない。 制裁と圧迫で北朝鮮が屈服するだろうとか、対話さえ成立すれば問題が私たちの思い通りに解決するという期待は、すべて希望的思考に過ぎない。 情勢をいかに認識するかが重要だということを新たに気付かせる。

トランプ行政府の二重的な東アジア政策

これまで韓国政府の対北朝鮮政策は、米国の東アジア政策によって規定されてきた。 オバマ政権のいわゆる対北朝鮮「戦略的忍耐」で、米国は北朝鮮が米国本土を攻撃する能力を持たないと判断したため、当面の危機を感じなかったのだろう。 しかし今は事情が違う。 したがってオバマ政権の対北朝鮮政策を「失敗した外交」と規定したトランプ行政府は、 中国をテコとして圧迫と対話を併行する戦略を駆使したのだ。

だがトランプ行政府は発足の初期から現在まで、北朝鮮の核能力についてはっきりとした立場を示していない。 トランプ大統領の即興的な発言と情勢的な対応は、参謀をはじめとする側近を当惑させ、 後始末に汲々とさせている。 これは北朝鮮の核能力をめぐり、内部の意見調整と立場がまとまっていないことを意味する。

過去の「朝鮮半島8月危機説」の背景になった「言葉爆弾」は、 米国で北朝鮮の核開発が小型化し、ICBM能力が再進入装置(RV)の能力確保で完成段階だという分析が出てきたためだ。 この分析が正しければ、北朝鮮は核保有国の敷居を越えたと評価される。 これはトランプ米国大統領が暗黙的に設定したレッドラインを越えることでもある。

残ったことは、いつ米国がこれを認めるかだ。 米国が北朝鮮の核能力を認めれば、北核問題が米国の危機に広がったことを意味する。 核兵器の大量生産が可能だということだ。 中国とロシアが提示した「対中断(北朝鮮の核凍結と韓米連合訓練中断)」を受け入れなかったトランプ行政府にとって、 対北朝鮮対話の前提条件である北朝鮮の非核化はいまや有効ではないことは明らかに見える。 むしろトランプ行政府は米国本土に飛んで来かねない北朝鮮のICBM級ミサイルを阻止しなければならないという切迫性が生まれる。 もちろん過大評価をしてはならないが、その可能性は充分だ。 われわれは以前の北朝鮮の「グアム包囲射撃」発言で、彼らの能力を一次的に確認したためだ。 北朝鮮は、韓国、日本に続いてグアムまでミサイル打撃範囲に入っていることを実証し、 米軍の朝鮮半島接近阻止能力を示した。

しかしトランプ行政府の対北朝鮮政策には二重の布石が敷かれている。 北朝鮮に対する圧迫と対話を併行しつつ、 窮極的には中国に対する経済的圧迫を強化するということだ。 これは米国内の政治や経済と直結しており、死活的だ。

実際、8月12日にトランプ大統領が「朝鮮半島危機説」が高まっている中で、習近平主席との通話で秘蔵のカードのスーパー301条を持ち出した。 1974年制定された貿易法301条をスーパー301条と呼ぶが、 米国政府が相手国の不公正行為に報復措置を取ることができる内容になっている。 トランプ大統領が8月14日に行政覚書に署名したことで、中国の知的財産権違反に対する調査に着手したのだ。 今回の調査は北朝鮮を口実として米国が中国の牽制に出たという側面と、 知的財産権侵害に対する対応という次元を越え、 北朝鮮の挑発を抑さえるようにと中国への圧迫を強化する次元だと解釈される。 もちろん中国が北朝鮮問題と両国貿易関係を連係することに反発しているため、 これから米中帝国主義国家間の競争がどのように展開するかは予測できない。 これは文在寅政府が対北朝鮮政策をどのように構想するかが本当に重要だということを語るものだ。

不公平な韓米関係を再構成しなければならない

文在寅政府がこの100日間、 朝鮮半島情勢での無能と無対策を見せたのは、韓米関係のためだ。 百歩譲歩して現実的に韓米同盟の不可避性を認めるとすれば、 妥当性があり説得力がある論拠を提示しなければならない。 最低でも韓国と米国が対話と協議による協力的な関係を構築し、 これに基づいて政策的な協調が形成されなければならず、 役割分担が前提にならなければならない。 だが韓米関係は常に一方的で非対称的で、不均等な関係でしかない。

文在寅政府は去る7月1日の韓米首脳会談の最大の成果として 朝鮮半島問題に対する韓国の主導権の確認を上げている。 だが今回の「朝鮮半島危機説」にも文在寅政府は「戦争否定論」を叫ぶこと以外は何もできなかった。 戦時作戦統制権が米国にある状況で、妙案を出すことは相当難しいという意味だ。

それでも文在寅大統領は 「米国とトランプ大統領も、北朝鮮にどのようなオプションを使うとしても、 事前に韓国と十分に協議して同意を受けなければならない。 そのように約束した」と強調した。 米国優先主義者であり、人種主義者であるトランプ大統領は、 米国の領土でさえなければどこの空間で戦争が勃発し、何人が死亡してもかまわないという認識の持ち主だ。 過去、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領がブッシュ元米大統領を信頼して裏切られた歴史的事実を思い出せば、新しい韓米関係が切実だ。

むしろ文在寅政府は、 環境評価を理由として保留したTHAAD配置を北朝鮮のICBM実験発射を契機として電撃的に完了させることに決めた。 これは、文在寅政府が米国訪問を前後として自分の政策を反転させたという事実を立証すること以外の理由はない。 また環境影響評価などで時間を稼ぎながら「THAADが不要な安保環境造成」を試みた戦略も放棄したと解釈される。 政府が実質的な効果よりも米国政府と国内保守層を意識する態度を示したのであれば、本当に憂鬱だ。 THAAD配置は文在寅政府の外交安保政策の試金石だが、その線を越えた。 一方的な韓米同盟を維持しつつ、その核心であるTHAAD配置を強行するのは積弊を残存させるということだが、 後でその歴史的評価に耐えられるのか絶望的だ。

「朝鮮半島問題は私たちが主導的に解決しなければならない」という文在寅大統領の光復節の祝辞を現実的な政策にしたければ、韓米関係を再構成しなければならない。 今は強大国決定論から抜け出して、主体的な役割を強化し、拡張しなければならない。 トランプ行政府に役割分担を強く要求しなければならない。 金正恩(キム・ジョンウン)委員長を対話相手として認める姿勢はもちろん、 米国に対してTHAAD稼動中断を提案し、中国の協力を引き出すことが必要だ。 必要なら対北朝鮮に特使を送り、また6者会談を開こうという提案も必要だ (ペ・ソンイン、プレシアン、「THAADが不要な安保環境を作ろう」)。 何よりも文在寅政府はTHAAD配置を撤回して、 朝鮮半島問題を主導して東北アジアの安保環境に新しい変化を作らなければならない。

反戦平和運動の課題

朝鮮半島の安保は米国に依存することもできず、してもならない。 政治的主体として労働者民衆の反戦平和運動に作っていかなければならない。 優先的にはTHAAD配置反対運動を続けるために、大衆的な結集力を高めなければならない。 北朝鮮のICBM試験を名分として強行されているTHAAD配置が、韓国の安保とは無関係だということはすでに明らかになった。 ひたすら米国の利益のためにTHAAD配置を強行する何の理由もない。

進んで朝鮮半島緊張のもうひとつの原因である韓米合同軍事演習を中断させなければならない。 韓米両当局は、これを「防衛訓練」だというが、実質的には北に攻め上がる攻撃訓練だ。 今年はその規模を縮小したが、毎年最大規模を更新しており、 原子力空母や戦略爆撃機をはじめとする米国の戦略資産の結集により毎年 「最大危機を更新」している。 朝鮮半島の緊張を緩和するために、韓米合同軍事演習は中断されなければならない。

駐韓米軍撤収をはじめとする米軍基地汚染問題、 不公平な韓米行政協定(SOFA)問題、 戦時作戦権返還問題など、解決すべき課題は山積している。 何よりも朝鮮半島の平和体制のための平和協定締結に労働者民衆の積極的な集合行動が必要だ。 朝鮮半島非核化を実現するために、核兵器の開発と搬入、移動、使用を基本的に禁止する非核地帯設立を要求し、 国際社会との連帯も強化しなければならない。 それだけが朝鮮半島の核対決と戦争危機を克服し、 平和と平等、そして統一を実現する唯一の道だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-08-26 16:41:54 / Last modified on 2017-08-28 23:20:35 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について