あす(11日)開かれる特別国会の首班指名で、日本共産党はおそらく立憲民主党の野田佳彦代表に投票するだろう。総選挙で共産党に一票を投じた有権者・支持者への背信行為だ。
共産党は、天皇が「お言葉」なるものを述べる国会開会式に出席したり、機関紙「しんぶん赤旗」に元号表記を復活させるなど、目に見える変質を続けてきた。
また、「天皇制廃止」「日米安保条約廃棄」「自衛隊解散」など従来の中心政策を軒並み実質棚上げしてきた。今回の総選挙政策では、「安保条約廃棄」だけでなく「軍事費削減」の旗まで降ろしてしまった。これは一見して分かりづらいが、より深刻な変質だ。病膏肓(こうこう)に入る。
しかし、それでも共産党にこだわる。
共産党に入党したのは、大学2回生の1974年だった。ちょうど半世紀前だ。
卒業後は専従活動家(共産党中央委員会勤務員)になった。約20年間の共産党員生活は、文字通り「党と革命の事業」に心血を注いだものだった。
その間、公私にわたって失ったものは小さくない。最大の後悔は、ものの見方・考え方が狭くなったことだ。「民主集中制」という組織原則が根源にあるが、自分の不勉強・努力不足ももちろんある。振り返れば後悔の多い20余年だった。
それでも、共産党にこだわるのはなぜだろう。
友人の多くが共産党員であることは大きな要素だが、それだけではない。
友人たちを含め、共産党員には、自分や家族の幸福を社会の民主的な発展の中で実現しようと考えている人たちが少なくない。そういう人たちが大半と言って過言でない。そうでなければ共産党員にはならないだろう。その人生観は間違いなく貴重で尊い。
いまの日本・世界に明るい展望を持つことは難しい。残念だが、展望が切りひらけないまま人生を終えることになるだろう。子や孫の世代に申し訳ない。
この閉塞した世の中を変えることができるとすれば、いや、変えなければならないのだが、その力は、やはり、自分の生活を社会のあり方に繋げ、自分や家族の幸福を社会の、世界の人々の幸福につなげる思想とそのための行動だろう。「幸福の連帯感」(哲学者・真下信一の言葉)だ。
だからこだわる。日本共産党の党員と支持者にこだわる。その思想と行動の可能性に期待する。