今回の衆院選挙の見過ごせない特徴は、参政党(3議席)、保守党(3議席)の2つの天皇主義政党が初めて衆議院に議席を占めたことです。
比例代表の得票は、参政党が約187万票、保守党が約115万票、合計すると約302万票(得票率5・5%)で、日本共産党の得票数336万票(6・2%)に迫っています。
この2つの政党は、天皇中心主義(皇国史観)を公然と綱領に掲げている政党です(参政党については16日のブログ参照)。
保守党は、結党宣言(2023・10・17)で「日本ほど素晴らしい国はない。神話とともに成立し、万世一系の天皇を中心に一つの国として続いた国」とうたい、党綱領では第1の柱に「日本の国体を守(ること)」、第2の柱に「国防力の強化」を掲げる正真正銘の皇国史観の右翼政党です。
今回の衆院選挙でも、参政党は「日本の国柄を守る」「神話を学ぶ教育」「創憲」を、保守党は「日本の国体を守る」「皇統の危機」「憲法9条2項改正」を前面に掲げました(選挙公報より)。
人脈的にも、参政党の神谷宗幣代表は自民党の杉田水脈元衆院議員とつながりがあり、保守党創設者で代表の百田尚樹氏が安倍晋三元首相の盟友だったことは周知の事実です。
両党の議席はもちろん微小ですが、国会で発言権を得たことは軽視できません。彼らの存在が自民党や維新などの右派勢力に影響を与えることも考えられます。
また、今後の国政選挙(たとえば来年の参議院選挙)では、参政党とともに保守党も他の政党と並んでメディアで取り上げられることになります。
そしてなにより留意しなければならないのは、参政、保守の国会進出が、「戦争法(安保法制)」と「軍拡(安保)3文書」によって自民党政権が自衛隊の増強を強行している中で起こっていることです。
一般市民が日常的に天皇を意識することは多くはないかもしれませんが、自衛隊という軍隊は違います。自衛隊と天皇の結びつきは帝国軍隊(皇軍)が解体した敗戦後も自衛隊によって引き継がれています。
例えば、海上自衛隊、陸上自衛隊は皇軍の侵略戦争の旗印だった旭日旗を隊旗にしています。安倍晋三政権が2018年3月に創設した「日本の海兵隊」といわれる「水陸機動団」の旗印は「三種の神器」の1つの「草薙の剣」です。
かつて、天皇明仁は東日本大震災直後(2011年3月16日)に「ビデオメッセージ」を流しましたが、その中で「消防、警察」の前に「自衛隊」の名前を挙げて称えました。その順番を敏感に聴き取った陸上自衛隊東北方面総監(当時)の君塚栄治は、「あっと思い」「今まで以上に自衛隊が頼りにされている」と「感動した」と述べています(2014年4月28日付朝日新聞)。
自衛隊という日本の軍隊にとって天皇は今も精神的支柱なのです。
その自衛隊が、日米軍事同盟=安保条約の下で強大化し、日本の戦争国家化が急速に強まっているときに、皇国史観を掲げる2つの政党が国会に進出したことは絶対に軽視できません。