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浅井健治@週刊MDS編集部です。

ハマスのイスマイル・ハニヤ政治局長の暗殺について、当初「上空からの飛翔体」による
攻撃と報じられていましたが、きょうになって「滞在先に仕掛けられた爆発物による殺害
」とする報道が出始めました。

となると思い出されるのが、スティーブン・スピルバーグ監督の映画『ミュンヘン』(
2005年)です。1972年、ミュンヘン・オリンピック開催中に起きたパレスチナ武装組織「
黒い九月」によるイスラエル選手団襲撃・殺害事件と、その後のイスラエル諜報特務庁(
モサド)暗殺チームによる「報復」作戦=パレスチナ人指導者11人暗殺計画の実行過程を
描いています。

暗殺の手口に一切、情け容赦はありません。〈待ち伏せし拳銃で射殺〉に始まって〈電話
に仕掛けた爆弾で殺害〉〈ホテルの部屋のベッドに仕掛けた爆弾で、無関係の宿泊客も巻
き込んで殺害〉〈PLOメンバーの宿泊先アパートをイスラエル軍部隊とともに襲撃〉〈
手配した宿の一室で「バスク祖国と自由」の"テロリスト"を装って接触した標的のPLO
メンバーを抹殺〉と無慈悲を極めていきます。

そして、ついには暗殺チームメンバー自身が、見えない恐怖と狂気の中をさまよい、「わ
れわれは正しいのか? 果たしてこの復讐に意味はあるのか?」と問いかけるに至ります。

カナダの歴史学者ヤコヴ・M・ラブキン著『イスラエルとは何か』(平凡社新書)は、こ
の映画について「人間が武器の使用を恒常化させる過程でいかに高い精神の犠牲を払わせ
られるか、を克明に描き出した」「ナチスがユダヤ人大虐殺に注ぎ込んだ暴力性がイスラ
エル-パレスチナ紛争に引き継がれてしまったことを示す」「『シンドラーのリスト』が
ユダヤ人の物理的存続に焦点を絞った作品だとすれば、『ミュンヘン』はその同じユダヤ
人の道徳的な存続を脅かす危険を扱った作品といえる」と高く評価しています。

イスラエル国家が本質的に有する「暴力性」、それゆえの「精神の荒廃」「道徳的危機」
を余すところなく、しかもエンターテインメント性豊かなサスペンス・タッチで描き上げ
た『ミュンヘン』。"シオニスト政体"によるパレスチナ占領を終わらせる闘いへの確信を
つかむためにも、断然お薦めの映画です。 

Created by staff01. Last modified on 2024-08-02 23:33:56 Copyright: Default

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