国際航空宇宙展を虐殺兵器展にするな！〜加担企業の出展阻止を目指すキャンペーン開始

竪場勝司

　「国際航空宇宙展を虐殺兵器展にするな！キャンペーン」発足の記者会見が９月１０日、東京都千代田区の参議院議員会館で開かれ、イスラエルの軍需企業や、パレスチナでの虐殺に武器を供給している欧米の加害企業の出展を阻止するため、さまざまな行動をしていくことが明らかにされた。

　キャンペーンは武器取引反対ネットワーク「NAJAT」などでつくる市民グループ。国際航空宇宙展は１０月１６日から１９日まで、東京・有明の東京ビッグサイトで開催される。

イスラエル最大の軍需企業や欧米の虐殺加担企業が出展予定

　会見では、NAJAT代表の杉原浩司さん（写真下）が、キャンペーンを立ち上げることになった経緯を説明。「日本で公然と武器見本市という形で、政府が後援しながら堂々とやるようになったのは、１０年前の武器輸出三原則の撤廃、言葉を言い換えて武器輸出に舵を切った防衛装備移転三原則の閣議決定以降だ。２０１５年５月にパシフィコ横浜であった海軍の武器見本市が最初と言われている。その後、千葉県の県営施設である幕張メッセで、４回武器見本市が行なわれている。知事がＮＯと言えばできないはずだが、ずっと知事がＯＫを出していて、来年５月に５回目がある。その都度、千葉の人たちを中心に反対の取り組みがされてきた。国際航空宇宙展は２０１６年、１８年に開催され、NAJATの呼びかけで初日に抗議行動などをやってきた」と振り返った。

　今回の展示に関して、杉原さんは「二重の問題点がある」と指摘。①２２年１２月の安保三文書の閣議決定によって、軍事費をGDP比で２％にし、防衛費を５年間で４３兆円まで膨らませていくという中で、国内外の軍需企業が群がるように武器を売り込んできている。展示が武器を売り込む一つの場所として機能している　②４万人以上が犠牲になっているイスラエルによるガザおよび西岸の大虐殺が今も進行している中で、今回の国際航空宇宙展にはイスラエル最大の軍需企業、エルビットシステムズが出展する。イスラエルの国際人道法違反に加担していると名前を挙げられた、アメリカのロッキード・マーチンやボーイング、イギリスのＢＡＥシステムズなど巨大軍需企業も出展予定に入っている、の２点を挙げた。

　また、６月にパリであった国際武器見本市では、フランス政府が停戦を求めたのにイスラエルが応じず、市民団体が裁判に訴えてイスラエルの軍需企業の出展を差し止めようする動きを見せ、結果的に７４社が出展予定だったイスラエルの軍需企業が、出展できなくなったことも紹介された。

　杉原さんは「憲法９条を持ち、憲法前文で世界の人々の平和的生存権を守ると誓っている日本が、何のチェックもしないまま、主催の日本航空宇宙工業会も、後援している防衛省、外務省、経産省、文科省、国交省も、官民一体で虐殺加担企業を堂々と出展させる、儲け口を与える形で国際航空宇宙展を開催することは、あってはならない。イスラエルおよび欧米の虐殺加担企業の出展を取りやめさせることを目標に、取り組みを進めていきたい」と訴えた。

必ず紛争に結び付く武器の製造

　続いて「幕張メッセでの武器見本市に反対する会」の谷口初江さんが「私たちの税金で造られた施設が、『死の商人』とも呼ばれる世界の軍需企業にビジネスチャンスの場を与えてはならないという立場で、抗議してきた。『我が社のミサイルの性能は戦地で証明ずみです』、『素人でも当たる銃です』、これらはこれまで行なわれてきた武器見本市のセールストークだ。こんな倫理感からかけ離れた見本市を、千葉県は家具やクルマの見本市と同じように扱っている。世界の戦争や紛争、とりわけガザの虐殺に加担しないために、この運動を広げていきたい」と語った。

　在日パレスチナ人のNoraさんは「私は１９４８年のパレスチナの民族浄化の孫だ。今回のジェノサイドが始まってから１１カ月が経ち、４万人以上のパレスチナ人が殺された。私の親戚、２８人が今まで空爆で殺された。ほとんどが子どもと高齢者だった。知り合いのパレスチナ人の中には、親戚を１００人殺された人も何人かいる。日本が今、イスラエルから攻撃型ドローンを購入すれば、もっともっと加担することになってしまう。私たち市民に残っているのは不買運動だ。それによってイスラエルへの投資撤退と経済制裁を目指すしかない」と訴えた。

　日本国際ボランティアセンター（JVC）代表理事の今井高樹さんは「JVCではガザにスタッフが１名いて、日々連絡が入ってくるが、本当に言葉を絶するような状況だ。８月１０日に学校に対する攻撃が行なわれて、１００人以上が亡くなった。攻撃に使われた武器がボーイング社製の武器だった。一般的にはボーイングと言うと、武器製造輸出会社のイメージは少ないかもしれないが、ボーイングも殺傷型兵器を造って実際にガザの多くの人たちの命を奪っていることを、改めて強く感じた。日本政府は、以前から進めてきたイスラエルとの軍事協力を見直す気配もない。人々の命を守るためには武器の供給を絶たなければいけない。世界各地の状況をみても、武器が多く製造されればされるほど、必ず紛争に結び付くと言っても過言ではない。そういった意味で、このキャンペーンは非常に重要だ」と強調した。

　キャンペーンでは、これまでも日本航空宇宙工業会に対する抗議行動を実施し、９月４日からは、虐殺加担企業の出展の禁止などを求めるオンライン署名も開始した。今後は、９月２３日にパレスチナ問題に精通している岡真理さんを招いた後援会、１０月３日に署名提出のアクションなどを予定し、国際航空宇宙展初日の１０月１６日には、会場前での大規模な抗議行動を実施することにしている。