Tweet

●映画紹介 NO LIMIT,YOUR LIFE「ノー リミット,ユア ライフ」
治らない難病を治したいの一念〜筋萎縮症を生きる
笠原真弓

©2023ノー リミット,ユア ライフ

障害児・者の水泳指導をはじめて、もうかれこれ40年を超える。そこで数年前、始めてAL
S（筋萎縮性側索硬化症）の青年を受け持つことになったので、この映画には特別な関心
があった。

ドキュメンタリーである。つまり、実話！
主人公の武藤将胤（まさたね）さんは、もともと積極的な性格で、大学時代は次々普通で
は思いつかないイベントを発案して周りを巻き込み、楽しみ、楽しませていた。

そんな彼が、木綿子（ゆうこ）さんに出会い、連絡先を交換する指先の、不随意の震えが
止まらなかった。最初の病気の症状が出たのだ。27歳だった。その後、病名が分かりそれ
でも二人は結婚する。だからといって平穏な日々ではない。ある時は気持ちのすれ違いも
ある。当然だ。でも彼らは修復しつつ将胤さんの強い希望「いつか治る病気にする」に邁
進していく。医学研究ばかりでなく、現代の技術とのコラボを積極的に推進し、様々な不
自由を乗り越え、同病者に提供していく。自分の不自由を周りも一緒に解決の方向に向け
ていく。指先が動かなくなる、声が出なくなる、それでも残った機能を最大限に生かすシ
ステムの開発に取り組む。その努力に、何度涙があふれた事か！

同病者のリーダー的存在だった、先輩との交流も欠かさない。ほぼ反応しなくなったよう
に見える彼とも、目のわずかな動きでコミュニケーションをとる。
気管切開で音声を失う前にその準備も始める。目視で文章を打ち込み、平坦な声で再生す
るのは聞いたことがあるが、彼はまだ話ができるときに音声を録音し、AIを使って本人が
話しているように人工音声で会話をする。彼と研究者の努力が結実したのだ。

彼が取り組むのは病状対策ばかりではない。若い時からやっていたクリエイティブな舞台
もこなしていく。作詞・作曲、ファッションデザイン、そしてバーチャルの彼は舞台で何
の不自由もなく踊る。

木綿子さんは、最近新たに仕事をはじめる。彼はそれを歓迎している。10年、前向きに生
きている二人。人生は、まだまだ続く！

あゝ、いま、20歳を超えたばかりの私の水泳の生徒に、やろうと思えば、何でもできるよ、
希望を持とうねと抱きしめたいと思った。
とは言え、彼は積極的だから結果が出せた。ある時何の泳ぎを練習したいかと聞くと「バ
タフライ」と。慌てた私。お手本ができない。3かきくらいしか泳げない。で、理屈で教
えた。水泳は「理屈」なのだ。なんとか泳げるようになったところで、PCで映像を見るこ
とを勧めた。ある時彼は25mを息切れもせずに泳いだ。「やりたい気持ち」が成功を生ん
だのだ。　　　　　　　　　　　

監督：毛利哲也　99分
T・ジョイPRINCE 品川2023/6/23から　／丸の内東映　7/7から