山形映画祭 : 中国の労働争議に関する二つの作品「蟻の蠢き」「炭鉱たそがれ」 | |||||||
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〔レイバーネット国際部・I〕 山形国際ドキュメンタリー映画祭2021で上映された中国の労働争議に関する二つの作品を リモートで観ました。「蟻の蠢き」と「炭鉱たそがれ」。どちらもこの10年ほどの中国の 国有企業の話でした。勉強になりました。 https://www.yidff.jp/2021/program/21p2.html ★「蟻の蠢き」(原題:蝼蚁动力学) 中国電信というNTTみたいな全国的企業の陝西省商洛市の労働者らが、08年の労働契約法 施行で労働契約が変更され、定年後の年金などさまざまな不利益変更に対して異議申し立 てをしようと奮闘する。そこに北京で活動する芸術家らが支援に入って、冒頭の饅頭パフ ォーマンスなど、さまざまなアピール活動などを記録。ただ、全体的に分かりづらい。背 景説明が不明瞭なのか、争議案件が分かりづらいのか、芸術センスのない僕のせいなのか 。あとこの時期に国有企業労働者への支援を意識的に行ってきた主義者らの影響もあるの か、やや説教くさい感じもしないでもなかった。とはいえ渋いシーンが続く中、「虫けら 」(原題の「蝼蚁」は「蟻」というよりも「虫けら」的なニュアンス)のように押しつぶ されようとする老工人らに寄り添いながら創られた作品。 こちらのサイト( https://bit.ly/3DzwBUy )によると2016年に雇用契約解除の攻撃を 受けた陕西商洛市の中国電信労働者が17年秋に裁判所に提訴し、北京で活動する芸術家の 王楚禹さんが故郷の商洛市に帰郷したときにパフォーマンス・アートのスタイルで労働者 らを支援し、その一年後に撮影クルーらをつれて戻ってきてとられたのがこの作品。形は 違えど、同じころにNTTの定年50歳引き下げ大リストラに抗した電通労組の組合員の姿と 重なった。上映後、監督2人とのトーク(日本語訳あり)では映像の意図が分かっていろ いろ勉強になります。 https://www.youtube.com/watch?v=hb13AYSagCA ★「炭鉱たそがれ」(原題:我跟着你) こちらは安徽省淮南市の炭鉱で生まれ育った20代の監督が炭鉱で働く父親や仲間、友人 らを追った作品。監督の母親や義理の母(干娘)など力強い女性たちの姿も。ここも中国 電信と同じように国有企業なので労働者と会社とのあいだでの雇用契約をめぐる軋轢が描 かれている。ひさびさに「買断」=雇用契約の解消という言葉を聞いたが、中国の特色あ る早期リストラ政策は今もなお健在なのか。それとも炭鉱という斜陽産業ゆえなのか、ち ょっと不明。もちろん早期退職にはそれなりの補償が政策としてあるが、そのかなりの部 分を会社がくすねたり幹部だけがいい目をみるというのは世界共通だが、「社会主義」を 標榜する国にあってはなおさら悲劇。20年生まれ育った炭鉱や炭住なので地下800m の坑道まで撮影している。ルポ『安源炭鉱実録』(于建嵘、集広舎、2014)にも調査に入 った社会学者の著者が鉱夫らと一緒に地底深くの坑道に入っていく一幕があり思い出した 。『安源炭鉱実録』はちょうど監督が生まれたころの安源炭鉱のリストラの実態を記録し た素晴らしいルポルタージュだが、映画「炭鉱たそがれ」もそのような雰囲気が流れてい る気がする。こちらも上映後に監督とのインタビューが公開されている。 https://www.youtube.com/watch?v=5Dvq-fjJfRI + + + + + どちらの作品も1990年代から2000年代にかけての反民営化闘争が敗北した焦土のうえで創 られた作品なので、どうしても結末は重苦しいものになってしまうのだが、中国の特色あ る資本主義のグローバル化に内部から抗ったこの時期の労働者のたたかいを記録し、つぎ の抵抗の火種につなげるという意味はあるだろう。 2010年のホンダストライキに象徴される農民工とよばれる若い世代の産業労働者らのたた かいも、2015年冬の労働NGO一斉弾圧や2018年夏のJasic争議での敗北、そして「世界の工 場」からグローバルサプライチェーンを通じて全世界に拡大したコロナ禍を受けて厳しい 冬の時代を強いられている。 Created by staff01. Last modified on 2021-10-13 16:05:00 Copyright: Default |