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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(9/9)/「学校連携観戦が『0』にならなかったのは残念」と教育委員
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●根津公子の都教委傍聴記(2021年9月9日)

パラリンピック「学校連携観戦が『0』にならなかったのは残念。今もそう思う」と教育委員

  今日の議題は、議案がア.「今年度都教委の権限に属する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価(昨年度)」 イ.「都立学校における柔道事故に伴う損害賠償について」 ウ.「教員等の懲戒処分について」。報告事項がエ.「夏季休業明けの都立学校の追加の対応について」 オ.「東京2020大会におけるオリンピック・パラリンピック教育の取組みについて」 カ.「教育庁職員の懲戒処分について」。エ、オ以外は非公開議題。

オのオリ・パラ教育の取組みについては——。
学校連携観戦を都教委が強行する中、8月18日の夜に行われた都教委臨時会で、出席した4人の教育委員が観戦に反対した(欠席した北村教育委員は観戦に反対しない、もしくは賛成することを紙面で提出した)が、報告事項だからとして教育長は議案としなかった。続く8月26日の都教委定例会で、遠藤教育委員は、「なぜ反対意見を言っただけで、止められなかったのか思い悩んできた。決議事項にしてくださいと言わなければいけなかった。(地域住民の意見を教育行政に反映する)レイマンコントロールの原則を実現できなかった」と反省の思いを述べた。山口、新井教育委員もそうした発言をしたという(東京新聞27日付)。

だから、学校連携観戦を強行したことについての教育委員の発言を聞きたい。そう思い、コロナ感染を危惧しつつ傍聴に向かった。報道関係者の傍聴席は満員で、会場の入りきれない記者もいた。

以下、オについてのみ、報告します。

まずは指導部からの報告。
「パラリンピック競技観戦(学校連携観戦)」は8月25日から9月5日まで。観戦「参加校数及び幼児・児童・生徒数」は新宿区・渋谷区・杉並区・八王子市で114校・9337人、都立学校6校・231人。直前の8月24日の調査では、3区1市の121校・20094人、都立学校6校・489人だった。直前になっても辞退が続いたということだ。

私が住む八王子市でも、辞退は直前まであった。市教委がバスを借り上げて3校86人が観戦したのだが、その2日前に私たちが市教委に「学校連携観戦をやめる」よう申し入れた際には「350人が観戦を希望している」と市教委担当者は言っていた。八王子には小・中学校107校がある。

指導部は「PCR検査機会の提供」などの「安全対策をとった」と安全策を並べたが、PCR検査をしたうち、「感染者数4人 陽性者は観戦には参加していない」と言った。参加しなかったのは当たり前であって、観戦を希望する児童・生徒や引率する教員に陽性者が出たことは、気にも留めていない様子だった。陽性者が出た学校で、検査翌日あるいは翌々日に感染者が広がる危険性は考慮しなかったということだ。千葉で観戦に参加した教員と生徒が感染したとのニュースが報じられたにもかかわらず、である。ここには、学校連携観戦を実施した、という「実績」を残すことが都知事や都教委にあったということだろう。

そして、参加した児童・生徒・引率した校長の、プラス評価の感想を報告。直接観戦はできなかったが、最新テクノロジーを使っての「バリアフリーVR観戦」や、テレビ観戦しながら他校とオンラインで交流する「テレビ観戦・オンライン交流事業」、アスリートへの応援メッセージ動画をつくって「みんなの声をアスリートに届けよう!」に取り組んだ学校数の報告。

最後に、残り半年間に行なう今年度のオリ・パラ教育の総仕上げ・取組みについての提案・報告。手前みそ感たっぷりで、教育委員5人のうちの4人が観戦に反対する中、それを強行したことについては触れずじまいだった。

報告を受けてまず発言したのは遠藤教育委員。「ご苦労様でした。18日の臨時教育委員会で感染リスクを避けるべき、観戦はマイナスのアナウンス効果となってしまう、と私(たち)は発言したが、観戦が『0』にならなかったのは残念。今もそう思う。千葉で中止にしたことを都では議論したか。/VR観戦など、素晴らしい。直接観戦しなくとも、これでよかったのではないか。/日常生活の中で、共生の概念を育てていくべき」と。指導部の答弁は、「千葉とも連絡を取って、検討した。さらに安全に気をつけようとなった」。

新井教育委員は「万全を期すためにコスト増があったと思うが、それを調べる必要がある。マイナスの面についても客観的なことを残すのは都教委の使命だ」。山口教育委員は「観戦に参加した各学校は、どういうプロセスで観戦を決定したかを検証し、残していくべき」と。

3人の発言に指導部は謙虚に耳を傾け、論議し総括すべきだ。
3人の教育委員の発言は、コロナ感染拡大防止・人命最優先からの、至極当然の発言ではある。でも、石原都知事時代の2000年以降、扶桑社歴史教科書や育鵬社・自由社の歴史・公民教科書を採択し、実教出版日本史教科書を実質採択させないことに手を貸してきた、以前の教育委員たちをこれまでずっと見てきたから、パラリンピック学校連携観戦に反対した教育委員の皆さんに、敬意を表したい気持ちにかられる。教育委員の仕事は、学校教育が子どもたちの人格形成に寄与するよう事務方の施策に対して意見し提言することである。今後とも、今回の姿勢で仕事をしていただきたいと切に思う。

ところで、オリンピックは学校連携観戦も中止としたが、パラリンピックではそれを強行した。そこには、障害者の活躍に触れることでのレガシーは大きい、との判断が都教委にはあったのではないか。学校連携観戦をやりきるという都知事の強い願望に沿うこととともに。

都教委は「重点的に取り組むべき5つの資質」の一つに「障害者理解」を挙げる。「優秀な障害者」を観戦しても「障害者理解」にはつながらない。「優秀ではない障害者」については理解しなくていいことになり、差別は拡大するだけだ。幼・保・小学校の入園・入学時から一緒に生活すれば、自然と「障害者理解」はできる。教育委員たちに、インクルーシブル教育についてわかってもらいたいものだ。


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