米国労働運動:2020年を振り返る パンデミックの重圧の下での労働者の闘い | |||||||
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〔解説〕レイバーノーツ誌の1月号は未曽有の激動の年だった2020年を振り返る記事を掲載している。コロナ危機の中で闘われた大統領選挙と人種的正義を求める闘いとの労働組合運動の関係に焦点を当てている。(レイバーネット日本国際部 山崎精一) 2020年を振り返る パンデミックの重圧の下での労働者の闘い2020年12月21日ダン・ディマジオ(レイバーノーツ副編集長) サウラヴ・サルカル(レイバーノーツ副編集長)
コロナウイルスの大流行は30万人の命を奪い、何百万もの雇用を破壊し、米国民の生活に存在する無数の不平等を拡大させた。いくつか明るい点があったにもかかわらず、これまでで最大の職場の安全衛生危機の中で労働運動は立ち上がろうと苦闘した。 年初の失業率は3.5%と半世紀ぶりの低水準で、労働者はこの有利な労働市場環境を利用して数十年間の譲歩で失われたものを取り戻せるのではないかと期待されていた。 しかし、米国は劇的なロックダウンは直ぐには実施しなかったが、それでも3月にはその期待はすべて打ち砕かれた。ワクチンを待つ間に経済を維持しようと、ロックダウンと経済活動の再開を交互に繰り返すシーソー手法をとった。 そのために莫大な人的犠牲が伴った。医療従事者は何ヶ月にもわたって過酷なシフトを続け、この新しいウイルスが被害者にもたらす大惨事を目の当たりにした。患者が最愛の人と最後の別れをオンラインでできるよう必死に努力した。その間、適切な防護服を得るために戦わなければならなかった。 「ほとんどの仲間は防護服を得られたが、中には感染して死んだ人もいる。」とジュディ シェリダン ゴンザレス、ニューヨーク州看護師組合の委員長は語る。全体では約55万人の医療従事者がコロナ・ウィルスに感染しており、その中には30万人の介護施設の労働者が含まれている。1600人の医療従事者が死亡した。 ●最も不平等な不況 失業率は4月に15%近くでピークを迎えた。9月には、アメリカ人の4分の1が世帯の誰かが今年仕事を失ったと言っていた。 11月には失業率が6.7%に低下したとはいえ、就業者数は1年前より900万人少なく、370万人が労働市場から去った。これらの労働者と非自発的なパートタイマーを含めた実質失業率は12%となっている。失業者のうち390万人が27週間以上無職の状態が続いている。 しかし、これらの数字でさえも、パンデミックの労働者への影響を十分には伝えていない。ワシントン・ポスト紙によると、これは「現代の米国の歴史の中で最も不平等な不況であり、上位またはそれに近い人々にはちょっとした景気後退だが、下位の人々は恐慌のような打撃を与えている」という。 黒人とラテン系の失業率は、白人労働者の5.9%に対し、それぞれ10.3%と8.4%である。小売業では2月から55万人、レジャー・接客業では340万人の雇用が失われている。 11月中旬には2600万人の成人が食べるものが十分にないと訴えており、フードバンクに車の列が何キロもできるのはありふれた光景となった。一方、大金持ちの財産は天文学的な成長を遂げた。3月にロックダウンが始まって以来、650人の米国の億万長者がさらに1兆ドルの富を積み上げた。 ●労働運動の大高揚? 突然、毎日仕事に行くという行為が生死に関わる問題となった。 そしてそれが一部の労働者を行動に駆り立てた。最初にデトロイトのバス運転手たちがストライキをして、車両の消毒と料金徴収の停止を市に要求して勝ち取った。西海岸でコロナの感染率が最も高い郡で密集して働くリンゴ摘み取り労働者たちは安全と危険手当を要求してストライキに入った。アマゾンの倉庫、食料品店、ファストフードの労働者は有給休暇を求めて闘った。 これらは、労働者が自分自身、仲間、そして地域社会を守るために行った何百もの行動のうちの一つであった。しかし、一部の人が予想していた大量ストライキの波とは程遠いものであった。これはパンデミックの影響で混乱していて、パンデミック以前にいかに組織化ができていなかったかを示している。 食肉加工工場では移民を中心とした労働者がコロナウイルスに驚くべき高率で感染したにもかかわらず、一年を通して営業を続けた。アイオワ州のタイソン社の食肉加工工場の工場長は、工場内で何人の労働者がコロナウイルスに感染するかを管理職たちと賭けていた。3分の1以上の労働者がコロナウイルスに感染し、5人が死亡した。一方、タイソン社の億万長者のオーナーはその財産が6億ドルに膨れ上がった。225人の食肉加工労働者がコロナで死亡したのに、労働基準監督署はほとんど対応しなかった。 いくつかの職場では勇敢な組織化が取り組まれている。 ●厄介払い ドナルド・トランプの再選を回避することが多くの労働組合員にとって一番の目標であった。 ジョー・バイデンが700万票の差をつけて勝利したが、選挙人制度が時代遅れで非民主的なために、今回の大統領選挙もハラハラドキドキだった。バイデンの選挙運動自体は戸別訪問の重要性を軽視していたが、うれしいことに少数の組合はこれに従わず戸別訪問を展開した。ホテルレストラン労組のUNITE HEREは、1,700人のほとんどが黒人とヒスパニックの組合員で、その多くが解雇されたホテル従業員を個別訪問に投入して、激戦州のアリゾナ州とペンシルバニア州で決定的な勝利に貢献した。 しかし、選挙前の世論調査で期待されていた大きな「青い波」で民主党が勝利することはなかった。労働法改革、グリーン・ニューディール、国民皆保険、連邦政府の大規模な景気刺激策と雇用創出計画を実現するために有利な状況をもたらす見込みは砕かれた。今後4年間で有権者の生活を実際に改善するような変革がなければ、2024年には右翼ポピュリズムに逆戻りする可能性がある。 ●黒人の命のために闘う労働組合 2020年のもう一つの大きな出来事は、ミネアポリス市の警官によるジョージ・フロイドさん殺害事件から始まった人種的正義のための立ち上がりだった。何百万人もの人々が、デモがめったに行われない小さな町を含めて街頭に繰り出した。多くの人が警察予算を削減し、他の社会的ニーズに振り向けることを要求した。 労働組合もその一端を担った。ミネアポリス市の多くの労働組合がデモを支持した。ミネアポリス市とニューヨーク市のバス運転手は逮捕されたデモ参加者の移送を拒否した。西海岸の港湾労働者は2度も港を閉鎖した。 ミネアポリス、デンバー、ポートランド、オレゴン、ロチェスター、ニューヨーク、シアトルの教員組合は、教育当局に警察との契約を打ち切らせた。キング郡労働組合評議会はシアトルの警察組合を評議会から追放し、警察官を組織内に抱えている他の労働組合も警官の組合加盟をどう扱うか議論した。 労働組合の指導者たちは、このような警察の人種差別について意見を表明することを躊躇することが多いが、今回は抗議行動を支持する声明を発表した。7月に8つの全国組合が支持した「黒人の命のためのストライキ」は150の都市で実施され、多くの参加者がフロイドさんを追悼して8分46秒の黙祷のために仕事を中断した。 都市交通労組の元副委員長のティム・シャーマホーンは、「今年復活した黒人たちの闘争のエネルギーと戦闘性を職場に持ち込むことが今の課題だ 」と述べている。 ●今、どこにいるのか? 以上のような状況の中で、2021年に向けての展望はどうだろう? ワクチンでどれだけの雇用が戻るのか分からない。黒人労働者の主要な雇用者である公共部門では、州や市の予算が減少しており、年金、医療、解雇、団体交渉権をめぐる争いが激化している。 過去1年間で、何千万人もの労働者が必要不可欠な労働者として歓迎され、ヒーローとして称賛されてきた。しかし、自分たちが消耗品であること、つまり自分の命よりも商品や生産の円滑な流れを確保することの方が重要視されていることも知っている。 「鶏肉のために命を危険にさらして働いています」と、パンデミックの初期段階でストライキに立ち上がったジョージア州の鶏肉加工労働者、ケンダリン・グランビルは言う。 「当局が気にしているのはゴミを収集することだけで、私たちの健康ことなど気にさえしていない」と、ピッツバーグの清掃労働者フィッツロイ・モスは、防護具と危険手当を要求する集会で語った。 このような労働者の多くが、この夏、人種的正義を求めて大規模な抗議行動で街頭に出た。パンデミックが収まった後、労働者が活動するための余裕が持てた時に、その経験はどのように反映されるだろうか? Created by staff01. Last modified on 2021-01-03 09:21:42 Copyright: Default |