貧困の現実を伝えることは貧困を止める力/ジャーナリズム大賞授賞式 | |||||||
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貧困の現実を伝えることは貧困を止める力〜ジャーナリズム大賞授賞式*宇都宮代表から表彰状を受け取る沖縄タイムスの篠原記者(右) 11月26日、東京・文京区民センターで「貧困ジャーナリズム大賞2020」授賞式とシンポジウムが開催された。今年はコロナ禍もあり、メディアの貧困報道は活発だった。大賞は、「沖縄タイムス」の連載「『独り』をつないでーひきこもりの像」、特別賞はコミック「虐待父はようやく死んだ」(あらいぴろよ)と映画「子どもたちをうよろしく」(隅田靖)の2作品、そして他に10作品がジャーナリズム賞に選ばれた。受賞者には交通費も賞金もなく、表彰状と花束と反貧困グッズのみ。それでもNHK・朝日・毎日など大手マスコミの記者たちは「メディアの賞はたくさんあるがこれが一番うれしい。光栄だ」と異口同音に語った。授賞式のあと、竹信三恵子さんの司会でシンポジウムが行われた。ズーム参加を含め10余人がずらりと並んで壮観だった。一人ずつ5分ほどのスピーチがあった。 大賞の沖縄タイムス記者・篠原知恵さん(写真上)は「カーテンの奥から全く出てこないひきこもりの人の声を聞くまで、半年以上かかった。この人は高校退学がきっかけだったが『助けて』がなかなか言えなかった。それが言えればもっと違っていたはず。『助けて』と言える社会にしないといけないと思った」と取材を振り返った。この報道が契機になって官民連携したひきこもり支援体制の動きがつくられたという。 映画「子どもたちをよろしく」を監督した隅田靖さん(写真上)は、「映画監督はほとんどが貧困である。私もいま警備会社で働いている。そこに35歳と45歳の正社員がいるが年収は300万以下で、彼女はいないし結婚できない。昼はパンかカップラーメンを食べている。こんな社会でいいのかとつくづく思っている」と語った。「子どもたちをよろしく」は子どもたちが直面している困難を正面から問う劇映画で、寺脇研・前川喜平氏が企画したもの。来春、劇場公開される。 だれかが「きょうは貧困のデパートのようだ」と言ったが、ジャーナリズム賞をとった作品のテーマは「ひきこもり、DV被害、非正規公務員、外国人技能実習生、福島避難者、やまゆり園事件、フードバンク、内密出産、派遣労働、生活保護」など、じつに多岐にわたっている。共通しているのは、時間をかけて深堀りした調査報道だったこと。ある記者は「一見普通に見える人が、じつはお米もない、お金がない、食べていけないという現実を知って驚いた」と取材体験を述べた。シンポジウムで見えてきたのは「いま日本には2つの社会がある。見えない貧困が広がり分断され、社会を支える力を失っている」ということだった。コロナ禍でその分断はますます加速しているのだ。 最初、受賞者の何人かは「頑張って報道しても変わらないので虚しい。無力感を感じる」と語っていたが、シンポジウムが終わるころには「同じ思いで報道している人と知りあえて励まされた。メディアの連携の必要性を実感した」と前向きの発言に変わった。最後に司会の竹信三恵子さんは「けして皆さんの仕事は無力ではない。貧困の現実を知らせることが貧困を止める力になる」とエールを送った。番組枠を確保する苦労話もあったが、マスメディアの中で日本の現実を伝えようと頑張っている人たちの姿をみて、清々しい思いがした。(M) *受賞作品は以下のとおり。なお詳細は当日のプログラム(pdf)をご覧ください。→コチラ ◎受賞作品 Created by staff01. Last modified on 2020-11-27 17:55:17 Copyright: Default |