軟禁日誌第2章(2)コロナ第2波でさらに進む自由の侵害、マクロン専制政治 | |||||||
Menu
おしらせ
・レイバーフェスタ2024(12/25) ・レイバーネットTV(11/13) ・あるくラジオ(10/10) ・川柳班(11/22) ・ブッククラブ(10/12) ・シネクラブ(9/1) ・ねりまの会(10/12) ・フィールドワーク(足尾報告) ・三多摩レイバー映画祭 ・夏期合宿(8/24) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第96回(2024/11/15) ●〔週刊 本の発見〕第368回(2024/11/21) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2024/11/14) ●川柳「笑い茸」NO.157(2024/9/26) ●フランス発・グローバルニュース第14回(2024/10/20) ●「飛幡祐規 パリの窓から」第95回(2024/9/10) ●「美術館めぐり」第5回(2024/11/25) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・choose life project・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合・NPA-TV・こばと通信
|
軟禁日誌第2章(2)コロナ第2波でさらに進む自由の侵害、マクロン専制政治*11月17日国会前のデモ。「ぼかされた民主主義」「警察があなたを監視している」 ●11月1日(日) 明日月曜は秋休み明けで、保育園〜中等教育の学校は再開する。子ども(11歳以下)は新型コロナの被害を受けにくく無症状が多いとこれまでの調査で出ているが、子どもの感染力については、大人より低い/同様 と科学研究の論考は2説ある。フランスの小児科医の組織と政府は、感染力が低いという説をとった。9月の新学年に向けて、空間に対する生徒数を減らすための教室増加やネットの併用、換気の改善と消毒増強の措置、マスク配布などは一切行われなかった。新学年が始まってすぐ、学校でもクラスターが発見されて閉鎖されるクラスが出たが、リベラシオン紙に載ったクリスチャン・レマン医師の記事(さまざまな教員たちの証言を記載)によると、その後は閉鎖を避けるために規定が甘くなり、「接触者」の十分な追跡が行われなかったようだ。(「学校におけるコロナ:沈黙の掟と否認」) 月曜はサミュエル・パティの追悼が学校で行われる。ロックダウン前の教育省と教員組合との交渉により、1)教員どうしが話し合える時間を取り、2)子どもの年齢に応じて各教員の自由なやり方で、この事件と表現の自由について生徒と語り合う時間が取られた上で(教育省は参考文献を提供)、3)(子どもの年齢に応じた)追悼というやり方が決められた。ところがロックダウン初日の夕方、教員どうしの話し合いの時間と各教員の自由なアプローチの時間はキャンセルされ、教育省が選んだジャン・ジョレスのテキスト(10月22日参照)を読んでから1分黙祷せよ、という指示が出た。そして今日、教員たちをさらに驚かせる(怒らせる)ことが発覚した。ジョレスのテキストから、彼が教員それぞれの自由な教育のやり方を擁護し、評価(テストの結果)ばかり重要視する教育制度を批判している部分など、興味深い段落3つが削除され、「誇り」という言葉が「断固とした態度」に変えられているのだ。ジョレスのテキストは長いし、中学低学年までの子どもには難しいだろうが、だからこそ教師による解説なしに朗読するだけでは何の意味もない。抜粋をするなら各教師がやるのが適切だろう。教員と教育の自由を制限してきたブランケール教育大臣とマクロン政権の強権的なやり方をよく示すエピソードだ。
●11月5日(木) 奇妙なロックダウンの1週目が終わろうとしている。マクロン政権は10月17日の政令で、春に続き公衆衛生緊急事態令を2度目に施行し、それを法律で2月16日まで延長する意向だ。今回はさすがに、野党の保守「共和党」も国会における討議をあまりに無視する政権のやり方に怒り、緊急事態令を12月14日で終わらせる修正案を11月3日の国民会議で提出し、左翼議員も賛成票を投じて可決した。与党「共和国前進」の議員が少ない時を狙った作戦勝ちだが、政府(ヴェラン健康大臣)は議員に向かって「ここから出ろ」と叫ぶほど怒り、翌日の4日、修正案を無視して採決できる方法を使い、過半数の与党を動員して可決させた。マクロン政権になった2017年7月以来、議会は野党の修正案や法案・提案を全て退け、過半数で政府の意向を可決する王政さながらの「勅令登記所」になりさがった。過去にはたとえ与党が圧倒的多数になった時期があっても、議会民主制の原則(野党の少数意見の尊重、討議の重要性)が少しは働いていたが、マクロン党と政府には民主主義の実践体験(政治、市民団体、日常生活などにおいて)に全く欠ける人しかいないから、自分たちが反民主的な行為をしているという自覚がない。「国防理事会」が公衆衛生危機の決定を下すことの異常さ(憲法から逸脱する行為)をメランションが指摘しても、問題点がわからない(わかっても無視する)ほど政治の教養・理解に欠ける。 一方、一般市民はそうした知識がなくてもここまで基本的な自由が奪われる異常な事態に対して、説得力のある説明がされない行き当たりばったりのやり方にますます不満を募らせている。だから2度目のロックダウンでは街には人出が多く、商店は非論理的な閉鎖に怒り、教員は抗議し、衛生対策の不備に抗議して学校封鎖を試みる高校生も出てきた。その高校生たちや取材に来た独立ジャーナリストやカメラマンに対して、治安部隊は催涙ガスや暴力で応えた。高校はブランケール教育大臣の改革によって従来の「クラス」がなくなり、大学みたいに各自が自分が選んだ科目の授業に出るシステム(選択が主流)になったから、大勢の生徒と交わるし、「クラスを半分に分ける」時間割編成は複雑すぎて不可能だ。 治安部隊といえば、ジャーナリストや個人が彼らの映像を流布するのを罰し、ドローンを大々的に使うなど、個人と報道の自由を大幅に制限する法案をマクロン党は提出し(政府の意向)、昨日から審議が始まった。これまで治安部隊による不当な暴力によって負傷したり刑を受けそうになったりした市民の中には、それら警官の不当な暴力や態度を証明するビデオのおかげで訴訟で刑を免れた例がいくつもある。マクロンの側近・ガードマンだったベナラの不当な暴力行為も、ビデオがなかったら発覚しなかった。治安部隊と異なり、デモ参加者やジャーナリストは武器を持っていない。ビデオ・携帯電話は市民の唯一の武器なのだ。ジャーナリストと弁護士を中心に反対運動(署名やビデオの拡散)が始まったが、今日「人権擁護官」も報道と個人の自由、民主主義に反する法案だと警告した。 フランスのこのロックダウンは個人の外出や行動の自由、営業や集会、社会生活の自由を著しく制限するが、そんなことは第二次大戦以降一度もなかった。それが国会でまともに討議されず、自治体、職業団体、労組、科学者、市民との議論・交渉はなく、「国防理事会」の秘密決定(内容は国防機密で公表されない)により施行される。書店や小売業者がアマゾンや大手スーパーだけ営業できる不公平を訴えたら、政府は4日火曜、大手スーパーに書籍のほか花や化粧品、洋服など「必要不可欠」でない商品の売り場を閉鎖させる決定を下した。新聞・雑誌はいいが本とレコードはダメ、ビデオゲームはいいがおもちゃと贈呈用品はダメ、シャンプーやハンドクリームはいいが美容(コスメ)はダメ、大工用品はいいが植物、シーツ類、食器、洋服、ジュエリーはダメ。フレデリック・ロルドンの「私たちを統治するバカ者たち」という言葉がちらつく。まるでかつての共産圏の国のようだが(食品だけは腐るほど豊富だが)、経済における自由と個人の自由を信奉し主張してきた人たちが、ここまで平気で自由の制限に突き進む姿にはめまいを覚える。いや、くらくらしている暇などない。メランションは、個人の基本的な自由、信教、思想・良心の自由の領域にまで泥足で踏みこみ制限するマクロン政権の政治を、専制への移行だと国会で警告した。「国防理事会」が公衆衛生政策を決定することは憲法に反していると。 第2波の後には第3波、第4波が来る可能性を疫病学者などが言っているが、人々も社会もこんな自由の剥奪に何ヶ月以上も耐えることはできないと彼は指摘する。失業者や倒産がこれ以上増えるのを待たずに、ロックダウンの代案を練るべきだと。アマゾンに一人勝ちさせずに小売営業を継続させる方法、公共交通機関のラッシュを防げる通勤の仕方、感染防止対策を強めた授業のやり方など、市民の日常生活を知らない大統領と「国防理事会」が勝手に決めるのではなく、人々の共同の知性と工夫にもとづいてつくる代案を。 ●11月10日(火) フランスのコロナ感染による死者は42000を超え、ここ1週間以上300-500人代の死者を数えている。毎日の感染者数は昨日から2万代に少し減ったが、入院、重症患者は今後もしばらく増え続けるだろう。この期に及んで先週金曜(6日)、教育大臣はようやく高校はクラスの人数を半分にすると決めたが、前に書いた通り、高校の時間割編成は複雑だ。給食時の対策は相変わらずないが、教員補佐のスタッフAEDや清掃にあたる人員を増やさなければ、またドイツのように換気対策をやらなければ、効果的な防護はできない。防護対策を要求する高校生による学校封鎖(治安部隊が出動する)だけでなく、今日は労組が呼びかけ、小学校から高校までの教員によるストと集会があった。教育大臣はずっと学校での感染はごく一部で少ないと言い続け、6日にも生徒の感染数は3528人(11月2日〜5日の4日間)と言ったが、同時期のフランス公衆衛生局の統計を見ると、0-19歳の感染は約35000人。その中には生徒でない乳児や学校に行かない人たちがいるにしても、差が大きすぎる。つまり、大臣が依拠している教育省の数字には、親や地域圏公衆衛生局からの報告もれが多数あるということで、大臣は感染状況を把握していないことになる。11月1日に紹介したクリスチャン・レマン医師の「学校におけるコロナ:沈黙の掟と否認」は、統計からも裏付けられるわけだ。 さて、今日はファイザー社のワクチンについてのニュースが大きく取り上げられたが、それより重要なのは、デンマークで大量飼育のミンクが新型コロナSARS-CoV-2 の変異種に感染し、それが人間にも感染したため、1700万匹のミンクが殺処分になる(すでに100万匹処分)というニュースだろう。Reporterreに詳しくあるが、ミンクの最初の感染はオランダの飼育場で確認されたのは4月末だった。人間に感染することが証明されたので、オランダでは直ちに100万匹の殺処分を決定し、議会は毛皮のための動物飼育を禁止する採決をした。しかし、デンマークでは夏のあいだ対処しなかったために感染が広がった。11月4日にデンマークの首相は、ミンクの大量飼育が人間に新型コロナ変異種を伝えたと認めた。科学者によると、この変異種は現在開発中のワクチンでは予防できない新たなパンデミックになる恐れがあるという。確かなことは、動物の大量飼育がパンデミックを生むことだ。オランダに続きデンマークとポーランドもミンクの飼育を止めたが、アメリカのウイスコンシン州やユタ州、スペイン、イタリア、スウェーデンでもミンク飼育場で感染が認められている。
新型コロナの原因はコウモリからセンザンコウ、そして人間へと説明されていたが、今ではセンザンコウは関係ないのではないかという説が優勢だという。
●11月16日(月) 奇妙なロックダウンは続き、政権は公衆衛生緊急事態を2月16日まで、その後の「転換期」(でも政府が強権的にいろいろ決められる)を4月1日まで延長する法律を、両院での野党の修正案と反対を封じ込めて14日(土)に可決させた。国会・国民の監視を一切受けない「国防理事会」の決定を政府が執行する専制政治のもと、ナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」が実践され、市民の権利・自由を侵害するとんでもない法案が急スピードでどんどん可決されていく。新型コロナの死者は45000人を超え、入院患者数は春のピークより多い33000人代、集中治療患者は4900人を超えるという時に(毎日の感染数は減ってきたが)・・・。 明日17日火曜日、悪法が2つも国会の本会議にかかる。一つは大学・研究分野の改革(最悪の改悪)法案で、かなり前から研究者・大学教員が反対してきたが、高等教育・研究大臣は全く何の話し合いも受け付けず、ロックダウン中に強行採決。おまけに夜中の零時を過ぎて元老院に残った議員が10人くらいの時を狙い、大学教員・研究者の雇用・昇級を決める制度の修正案を通してしまった。これまで学術界の中、全国大学評議会CP-CNUがそれをやってきたが、それを無視して各大学が好きに准教授などを任命できる(学問的な資格がなくても)ようになる。さらに、大学構内への不法侵入を犯罪化する修正案も加えた。現政権にとっては、68年5月革命の時大学に乗り込んだサルトルなどは犯罪人なのだ。明日17日から再度討議して最終的に採決する。この法案は修正案を抜きにしても、フランスの大学と教員の独立性と研究の自由を奪う(市場経済や政治権力に委ねる)一連のネオリベラル改革をさらに徹底的に進める(2030年までの長期プラン)もので、若い研究者・教員の未来を奪い、優秀な分野や研究者を数多く持つフランスの研究を破壊するだろう(予算の引き上げを謳うが、からくりがあって実際には増えない)。さすがに、保守的とされる法学部や大学評議会も含め、学術・研究の全部門の人々が反対している(評議会は大臣の辞職を要求した)ほどなのに、マクロン政権の常として、大臣は誰の意見も聞かず、組合や団体の主張・意見を全く無視して練った(誰が?)法案を、何が何でも通そうとする。一時が万事これだ、マクロン政権は法制化や政令を通して、これまで築かれてきたフランスの優れた価値をすべて壊していく。 もう一つの重大な法案は「全体的治安」と名打った基本的自由を侵害する恐ろしいものだ。詳しくは後日書くが、警官・憲兵の映像・画像の流布を禁じる(悪意に基づくと被写体当人が主張すれば犯罪になる)、つまり報道の自由と市民の基本的な自由を踏みにじる条項、ドローンで恒常的に大幅に市民を監視できる条項、顔認識システムの全般化など、「どこの独裁国?」と疑う内容で、国連の人権理事会からも警告が出た(11月12日)。フランスは人権宣言の国ではなかったのか? というわけで、明日の午後はロックダウン中だけれど二つデモに行く。今日は市民団体、労組、政治家など100人が、ロックダウン中に大儲けしたアマゾンに対する特別課税を政府に要求する声明が発表された。この多国籍巨大企業はタックスヘイヴンへの脱税など様々な手を使って、フランスには総売上額の0,04%しか税を払っていないのだ。欧州議会ではレイラ・シャイビ議員(屈服しないフランス、左派・北欧エコロジー左派GUE/NGLグループ)が、アマゾンやUberEatなどプラットフォーム・ビジネス労働者の権利を強める(労働法適用)指令を提案した。
●11月17日(火) 大学・研究分野の改悪法案の却下動議は退けられ、悪法は採択された。ソルボンヌ前広場には教員・学生など平和的な人々が集まったが、警察は周りの道を封じて「証明書」を見せなくては外に出られなくした。何の危険もないのに権力の濫用だ。それから国会まで歩いて「全体的治安」法案反対のデモに行った。弁護士団体は早くから集まっていたが、夕方18時を過ぎるとかなり大人数になり、治安部隊が不気味な雰囲気だったので早めに抜けた。案の定、治安部隊は参加者に放水、催涙ガス弾などで暴力的に応じたことが後でわかった。とりわけジャーナリスト(カメラマンなど)に対して攻撃的で、罵られ暴力を受けた人もいた。若いカメラマンの女性が不当逮捕された。まだ悪法は採択されていないのに、やりたい放題だ。 国会の中では野党「屈服しないフランス」のメランションが却下動議を提出した。「これはドローンで誰でも市民は撮影され、私生活まで見張られて自由を侵害されるのに、警官を撮影することだけを禁止する法律だ。国会では30年来、テロや犯罪防止、移民対策などと名打って69もの法律を通したが、国民の安全にどんな効果があったのか?その査定さえしていない。大臣は安全が第一の自由だと言うが、違う。安全の第一が自由だ。代表民主制においては、第一の自由は権力行使の監視・制御である。30年来市民の自由が後退したのに、今やあなたがたはその監視・制御の自由まで奪おうというのか。」 2年前の11月17日に「黄色いベスト」運動が始まり、以後、治安部隊による暴力はエスカレートした。メランションは68年5月革命の時に死者を出さなかったパリ警視総監グリモーに言及し、一方でマクロン政権下では治安部隊の暴力によって片手の喪失、失明、頭部その他への重傷者が多数出て、1000人もの黄色いベストが実刑(不当判決)を受けた異常さを強調した。しかし、マクロン党と保守はこの却下動議を退け、法案の討議が始まった。 討議は木曜まで続く。「人権擁護官」や他の人権機関、国連人権理事会が既に、この法案は自由を侵害し反民主的であると警告しているが、マクロン政権は聞く耳を持たない。しかし、他の民主主義国、とりわけ近隣ヨーロッパの国やアメリカのメディアからは批判が出るだろう。マクロンとフランス政府はテロに際してあれほど「言論・表現の自由」を叫んだのだから。 病院や介護つき老人ホームで続々と人が亡くなっていき、失業・倒産の不安やひもじい思いの人が増えているときに、なんとあさましい人たちなのだろうか。 飛幡祐規(たかはたゆうき) Created by staff01. Last modified on 2020-11-19 09:56:49 Copyright: Default |