書評 : 『戦後史のなかの国鉄闘争』/当事者の肉声から闘いの実相に迫る | |||||||
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【書評】『戦後史のなかの国鉄闘争』 当事者の肉声から闘いの実相に迫る元国鉄労働組合新橋支部組合員 久下格元高校教員で、自身長く労働運動に携わってきた友人から、『戦後史のなかの国鉄闘争』という大変な本が届きました。1987年から2010年にいたる国鉄分割民営化反対闘争の経過を、関係者の証言を丹念に追いながら検証した貴重な記録です。 何が大変かというと、まずそのボリューム。150mm x 210mm x 45mm。1,133g 。800ページ。超難敵です。私の手元には国鉄労働組合自身が作成した『国鉄労働組合70年史』 (168mm x 226mm x 60mm。1,595g。1,098ページ。)と『国鉄闘争・分割民営資料集』(230mm x 313mm x 64mm。1,015ページ。推定 3,000g。…家庭用秤では重量オーバーで測れん)もあります。この2冊は国労本部役員など大勢の人たちが編集にかかわっており、ページ数も大きさも、重さも(笑い)森さんの本より大きいし、資料として後世に引き継ぐための貴重な本に違いないのですが、森健一さんがたった一人で上梓された『戦後史のなかの国鉄闘争』の方が、圧倒的に面白く、圧倒的に考えさせられる本です。 何と言えばいいのか…、公式の2冊が国労本部役員の立場から書かれた無味乾燥な公式記録なのに対して、森さんの本には国労組合員、国労闘争団員と家族の肉声が溢れている。そして、闘いの方向を決めたさまざまな場面では、国労内に存在する各党派(「学校」と呼ばれる)のあいだで、どのような議論がされたのか、機関の幹部と闘争団員・家族がどのように考え、どのように発言し、どのように行動したのか、そうしたことを、当事者の肉声をできるかぎり丹念に収集して検証し、闘いの実相に迫ろうとしているからです。 例えば、「JRに法的責任はない」などの「四党合意」を受け入れる闘いの幕引きが図られた2000年の臨時全国大会。『国鉄闘争・分割民営資料集』では【解説】として、休会の経過が5行書かれているほかは、提案された本部議案が掲載されているだけですし、『国鉄労働組合70年史』でも、大会じたいの記述は「(集約の最中に)警備係の壁を乗り越え演壇に上がる者が出てきたため、議事は10分間にわたって中断した。騒ぎは納まったが、これ以上の議事運行は不可能と判断した副議長は『議長判断で休会とする』と宣言するに至った。」などと、こちらも5行しか書かれていません。 それに対して、『戦後史のなかの国鉄闘争』には、翌日の新聞報道を含めると11ページにわたって大会の様子が記録されています。記述は大会会場前に詰めかけた闘争団員と家族が、会場に入ろうとする本部役員に激しく詰め寄る場面から始まっています。これによって、私たちはこの臨時大会が、執行部と代議員だけで構成されていたのではなく、幕引きに反対して会場前に詰めかけた千人の人びともまた、大会の当事者だったことを知ることができます。 --------------------------------------
北海道音威子府闘争団家族会の藤保美年子さんの特別発言は2ページにわたって収録されています。「私たちの人生を勝手に決めないで下さい!」と本部に迫った発言は会場の空気を一変させ、受け入れを提案した側の本部副委員長上村隆志は壇上で「これで『四党合意』はなくなった、と思った。」とあります。もちろん、「四党合意」受け入れに賛成した側の「これは許されることではなく私はこれで国労は終わったと思いました」などの発言も採録されている。 内容に触れだすと延々と続きますし、だいいち、私自身、大冊を読み始めたばかりではきちんと評することなどできません。しかし、大変だけど(ほんと…笑い)一人でも多くの人びとが読み、そして、一人でも多くの人びとが、今日の格差社会へと続く、歴史の大きな転換点となった国鉄分割民営化政策のことを知ってほしいと思います。 国鉄闘争は42年間国労組合員であった私の人生そのものです。その人生をこんなに素晴らしい本にまとめてくださった森健一さんに心からお礼を申し上げます。 『戦後史のなかの国鉄闘争』は送料込み6,000円。購入は下記までメールで申し込んでください。 ------------------------------------------------------- Created by staff01. Last modified on 2021-01-15 11:36:22 Copyright: Default |