レイバーネットTV第139号詳細報告/変わりつつあるマスメディアの現場 | |||||||
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レイバーネットTV第139号報告〜変わりつつあるマスメディアの現場報告=笠原眞弓4月17日(水)放送 特集: マスメディアの危機と私たち 1,動画ニュース この1か月のホットな情報。コーナー司会=尾澤邦子 ●4月5日「国民の知る権利を守ろう銀座デモ」があった。それに先駆けて先月行われた官邸前集会の効果があり、質問の最中の妨害は少し良くなったなどの報告も。組織ジャーナリストやフリーの人たちが連帯して新しい環境を作っていく第一歩だということだ。 ●コンビニ問題。3月31日東京日本橋のセブンイレブンの閉店作業があった。そこから見えてくるフランチャイズ契約による悲惨。コンビニは日本の働き方(日本の経済)を支えてきたと聞いたことがあるが、いかにそれが危ういバランスの上に成り立っていたかが最近露見してきた。家族の死を伴った会社の追い詰めに、怒りを覚えると同時に、改善を求めていきたい。 ●整理解雇という名目で首を切られたユナイテッド航空の客室乗務員の、解雇不当の裁判の判決が3月21日あった。判決文は、たったの3秒、しかもにやにやしながらという。4月12日、判決に抗議するデモが銀座で行われた。日本語のシュプレヒコールと英語のアッピールに、沿道の人たちも関心を示してくれたとのこと。この闘争は、控訴審に移る。 2,ザ争議・ユナイテッド闘争団 世界一の航空会社「ユナイテッド航空」と「コンチネンタル航空」の合併劇のなかで3年前に整理解雇された日本人の客室乗務員たちは、現職復帰を求めて、闘っている。今日は組合員のお一人、吉良紀子さんにいらしていただいた。 2万人を超える客室乗務員のうち、日本で採用されたコンチネンタル航空の子会社、コンチネンタルミクロネシアの成田ベースの20人のみが解雇された。それは国籍差別・組合差別の解雇だと訴えている。 解雇理由は、20年前に正社員を辞めて5年満期の契約社員になれと言われ、その時労組のなかった会社だったので、労働組合を立ち上げて勝利した。それが尾を引いているのかもという。現在は入社と同時に入る労組AFAがあるが、入社時にしか入れない。 解雇理由を突き詰めていくとすべて根拠がなく、会社も企業秘密だからと明言を避けた。つまり企業秘密解雇ということになる。これは労働者として、どうしても飲めない。 裁判で会社側証人として出てきたのは、直属の上司で「私にはわかりません」「権限がありません」「わかりません」の3つのフレーズのみ繰り返していたという。 合併の時ユナイテッド航空の400人いる成田ベースが彼女たちを吸収すれば、全く問題はなかったのに、会社はしなかった。 さらに会社は狡猾で、「新しい会社と労組AFAとの労働協約を作っている。それが解決したら働けるようになるから、我慢してくれ」と待たされたが、その協約ができる3カ月前に解雇となった。その協約にはAFAに入っていないと飛行機乗務はできないという一項があったそうだ。 裁判官はその不合理を見逃し、今年3月の東京地裁で「解雇容認」の不当判決が出た。しかし原告4人で起こした訴訟は負けてはいない。「私たちを空へ戻せ!」と闘いを続けている。 会社は解雇の際、地上勤務または退職金の割り増しを提案してきたが、12人がそれをけって闘いを続けてきた。3年の間には事情も変わり今は4人である。 生活はどうしているのだろう。貯金の切り崩しだという。アルバイトを始めると、気持ちが集中できないからという。もちろんカンパもあるし、物販などもしているという。 現在は月1回、成田空港のユナイテッド航空のチェックインカウンターでアッピールをしている。会社は逃げ隠れできないし、外国人や日本人の反応も良く、効果的だという。 また、4月12日の銀座デモをしたが、やはり観光客にとって銀座は特別な場所、そこでのデモは効果があるという。 今日も会社は、地上職にならないかという話があったという。ユナイテッドは、今でも日本の路線の拡充に備えているのに、なぜ彼女たちを雇えないのか。彼女たちの闘いは続く。 ◇ジョニーHの替え歌と乱鬼龍の川柳は、新元号に関してだった。 いつも通り、軽快なそしてユニークな替え歌を披露。 川柳は「命令と打って呼び出す令の字を」「令和フィーバー主権在民ほっとかれ」 3,特集・マスメディアの危機と私たち ここ数年のマスメディアの状況は、目を覆うばかり。そこで朝日新聞の編集委員を経て大学教授となり、この3月に晴れて定年を迎えフリーになった竹信三恵子さんを聞き手に、現役記者で新聞労連委員長の南彰さんの近年のマスメディア状況を伺った。 2016年の高市総務相のテレビの「電波停止」発言に続く各局の看板報道番組のキャスター降板問題があり、批判が出てきている。 人々は新聞を読まなくなっていて、学生もテレビのニュースも見ていないのに、「マスごみ」という言葉を使うくらいぐちゃぐちゃになっていると竹信さんは話始める。 そして起きたのが官邸記者クラブの質問制限問題。世界の報道自由度ランキングで見ると、日本は2012年の野田政権後、第2次安倍政権の始まったあたりから急落している。政権による締め付けで現場がびくびくしている状況になってきた。それがこの自由度に端的に表れていると竹信さん。 そして南さんに今問題になっている質問制限問題は何なのか尋ねる。官邸が制限の対象にしているのは望月衣塑子さんで、2017年5月17日に加計学園の「総理のご意向」という文書が報道された。それを官邸が、怪文書のようなものだと嘘をついたことからはじまっている。これをめぐる一連のやりとりが続き、1カ月後くらいに望月記者が官邸記者会見で嘘であることを証明せよと迫った。それからである。質問を最後に回す、回数を制限する、簡潔にしてくださいなどと質問を邪魔する。答えもなおざりにするなどが起きた。 始まりは昨年12月26日の、辺野古の赤土についての質問。2日後この質問について官邸から事実誤認だとし、「そのような質問は不適切だから、記者クラブとして共有してください」と記者クラブに張り出した。 菅官房長官の役割は記者の疑問に答えることなのに、それをしていないことが問題だし、また、赤土は確かに広がっていて、官邸の方が明らかに間違っているということである。 質問に枠をはめ、ぶら下がり取材(1日2回出来た)もできなくなっている。菅直人、野田佳彦の時に首相のぶら下がり取材が中止になったばかりか、総理会見もしなくなった。加計問題以降首相会見もガクンと減らし、総理に聞けない状態になって、国民の知る権利が侵されていった。 4月1日に新元号が発表になり安倍が記者会見場に現れたが、あれが今年になってはじめての記者会見場での会見だったという。 望月さんに対してのほかの記者たちの反応は、微妙なものがあると南さん。望月さんの取材手法で、自分たちの取材現場が荒らされるとか……。彼女のせいで機嫌を損ねられては、自分たちの質問に答えてもらえないなど。 もともと日本のマスメディアでは、記者会見の場で聞くことは、評価対象になっていなかった。独自に取材してきたものをさらして意味があるのかということだ。それは上の世代ほどそう考えている。 個人的な関係を作り、密室で取材する日本の文化の異常さも竹信さんは、フランスで政府高官に「夜回り」をかけたら、警察を呼ばれたという知人の話を例に語る。 南さんも記者の長時間労働の対策から、この習慣を変えていく方向に踏み出したと語る。まず、夜討ち朝駆けはやめること、そのためには政府の「会見でまともに答えない」「公文書を請求してもまともに出てこない」を変えていかなければならないという。 会見でまともに答えないことが中央で起きると、全国の自治体でそれをまねるのではないかと地方が心配している。官邸前集会で現役記者が7人も実名で訴えたのは、画期的とか。 ある面進歩だと竹信さん。記者は表に出るなとかセクハラ受けても黙っていろといのは当然だったのに、ここで変わってきたので、新しいことがはじまるという期待も持てるという。 この問題が表に出てきたきっかけは、財務省のセクハラ問題だったと竹信。それまでメディアの人間も騙されていたともいえる。それは違うと言わなければならないし、同じことを繰り返してはいけないと気がついた。先輩女性記者たちが、自分たちが黙っていたために、若い人たちが今後も嫌な思いをすることに気づいて、女性たちが声を上げた。 話は宴会政治に移る。宴会取材も2つに分ける必要があり、記事につながるなら自腹での会食取材はありだが、経営陣が総理と会食をするという類は(費用はメディアが払っているはず)、記事になるわけでもなく、報道機関の信頼性が危ぶまれることになるというのは南さん。 政権にコントロールされてきたのを記者たちが押し返しているように見えるが、その時味方になるのは、取材者 、情報を出す側、その情報を読んで取材者を支援する側の3者の力関係がどう動くかが問題だという。 いまや素人でさえSNSで発信しているのに、マスメディアの方が遅れている。編集局長をするくらいの人は、twitterのフォロワーが10万人くらいいて、社名だけでなく、個人としても社会に対して説明できるようでなければならないと続ける。 読者と対面する力、発言力、発信力が幹部の側に足りないのは大きなことという竹信さんに同意し、固定客(お金を払う側)しか相手にしないのはおかしい。つまり対話能力が欠如しているといえると南さん。 マスメディアに生きている人たちが、視聴者、読者を味方につけなければ、政権に対峙できないし、それをしていかなければならないということだった。 会場からの質問: Q:朝日の読者だが、新元号令和の批判的なものがなかったが、やっと昨日出た。朝日は、社説は感心しないものが多いが、読者の投稿や1面を使ったインタビューなどはいいのが多い。どうしてそうなるのか。 南:2001年に採用試験受けたが、そのとき社説はともかく、「言いたいことが言える」と言われた。確かに朝日新聞は自由度が高いです。幅のある方がさまざまなことに対応できるので、その方がいいのではないか。 Q:ネット上のジャンク情報より、紙媒体の方が信頼できると思っているが、最近はスポーツや芸能をことさら大きく取り上げているような気がする。本当に伝えるべきことを伝えているのかと危惧する。見極めるには、何が報道されていないかに敏感になるにはどうしたらいいか。 竹信:幅広く読むことでは。メディアは、信じるものではない。記者はそれぞれの偏見で見ている。多様な記者が偏見で書いたものを集めるとこの辺が見えてくるということ。 Q:望月さんのことで、今の新聞記者はサラリーマン化していることが問題ではと言う意見に、なるほどと思ったが、どうか。 南:以前はサラリーマンではなかったかというと、ちょっと異論はある。ただし、最近大きく変わってきているのは確か。デジタル化していて、いやおうなしに個人がさらされる。記者会見の様子もネットで流れるので、個人が注目を集めざるを得ない。称賛もあるし、たたかれるリスクもある。その中で支えあうネットワークを作る段階にきている。これまでの会社単位だけでは救えないという状況になってきたので、望月さんのことでは、新聞、出版などメディアの各労連がタグを組んで支援している。それはジャーナリズムとして、連帯を作っていかなければならないという問題意識があるから。今は何かと攻撃されているが、横につながればよくなっていく可能性があるともいえる。上は現場の状況を知らずに「うまくやってくれよ」という。そんな状況では、若い記者がチャレンジできない。いま、安心して挑戦できる環境を作ろうとしている。 沖縄問題に関する質問があったが、それには望月さん一人が頑張っていると思うのは違っている。自分だけが注目されているとは本人も思っていないし、思われたくないだろう。たくさんの人が、同じように頑張っているし、彼女を支える人がわらわら出てきている。つながっていこうとの途上にあるということだ。 ●次回放送は、5月22日19:30から。特集は「No Weapon!ー死の商人はおことわり」をお送りします。 *写真=小林未来 Created by staff01. Last modified on 2019-04-24 11:53:53 Copyright: Default |