考えることを放棄した人間の怖さ/レイバーネットTVでオウム事件特集 | |||||||
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考えることを放棄した人間の怖さ〜レイバーネットTVでオウム事件特集10月3日にライブ配信されたレイバーネットTV特番「オウム事件・日本社会はどう変わったのか」は、あれから、そしてこれからの日本や世界の動向を示唆するものだった。この7月に死刑囚13人が処刑されて「オウムは終わった」とする一方で「これで幕引きですか?」という、釈然としない空気が流れている。ということで、もう一度考えてみようという企画であった。 ゲストは事件が起きた当初からオウムを追っていた作家で映画監督の森達也さんと、同じくライターとして関わりつづけてきた岩本太郎さん。キャスターをつとめたのは番組企画者でもある堀切さとみさん。堀切さんと岩本さんはオウム世代でもあった。 ●受け容れられなかった「オウム=普通の人」 当時のジャーナリズムが、オウム以外は話題にされなかった世情の中で、オウムと深くかかわるようになったきっかけを森さんは会社(フジテレビ)の仕事として、岩本さんは会社を辞めるきっかけになった社長の態度がオウムのように見えた、ということだった。二人のオウムに向かう姿勢は、売れるものだけを貪欲に追いかけるメディアの姿勢とはかけ離れていた。 ところが森さんのオウム=普通の人の日常を撮った映像は放送されず、会社も取材中止を宣言。仕方なく、自主映画『A』にした。岩本さんは、山形映画祭で森さんの『A』を見て震え、その後の『A2』の制作にも関わっていく。『A』は完成後、日本社会の空気、変化を如実に表す数奇(?)な運命をたどるのだが、その話はスリリングで、同時に怖くもあった。 ●破防法適用はまぬかれたが、社会の右傾化がはじまる 日本社会は、オウム以降確実に変わった。それは何故か? 森さんは、1999年、プロデューサーに引っ張られて、オウムのある施設に行ったところ、麻原の子どもを学校に受け入れないなど、地域のバッシングがひどく驚く。だがほとんどの人権団体は、黙っていた。上祐史浩が刑期を終えて出所することをにらんで、団体規制法(無差別大量殺人行為を行なった団体の規制に関する法律)が出来た年でもある。 当時、破防法(破壊活動防止法)をオウムに適用するかどうかで世間は揺れていた。番組では、ビデオプレスの当時の映像『破防法がやってきた』の一部が流され、市民の雰囲気を再現する。結果的に、適用は免れたものの危ういところだった。 ●「恐怖は人を群れたがらせる」と森さん 現在、世界は右傾化の流れの中にいる。その始まりは、アメリカの同時多発テロ、9.11だが、日本ではその6年前のオウムからと。人間は、恐怖を感じると群れて、支配の言葉を求めて考えなくなる。同時によそ者、分からないものを排除し、個人の自由に優先して管理、監視社会になっていく。その延長線に現政権がある。それは「恐怖に駆られた国民が求めているから」と指摘する。 岩本さんも同様に、オウムの周辺住民の動向を個人の自由を放棄しても監視を強め、安全を求めていると感じたという。今の社会は、自分に心地よいことを訳もなく信じる。つまり、フェイクニュースを信じようとする。オウム事件のいまに続くさまざまなことから学ぼうとしないのもわれわれだという。 ●フロアから フロアから出たメディアについての質問に、森さんは、メディアと社会は合わせ鏡。日本のメディアの質は世界的にみて低いが、それが国民のレベルである。メディアは企業なので、なかなか変わらない。だが、社会が変わればメディアは変わる。メディアが変われば、社会がさらに変わる。視聴者が育てていけば、質も上がってくるという。 もう一つの質問「死ぬことがわかっていたのに、なぜサリンを撒いたのか?」には、実行犯の中にはサリンに対しては疑問のある人もいたし、出来ないだろうと思っていた人もいた。でも実行した。指示を待つ体制の中で、尊師から「指示されたから」としか言えないと森さん。 考えることを放棄した人間の怖さを思う。自分自身を振り返らせる、ずっしりとした内容だった。〔笠原眞弓〕 *写真=小林未来 Created by staff01. Last modified on 2018-10-07 13:57:58 Copyright: Default |