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かっこわるい人間が安倍と対決〜「横浜事件と言論の不自由展」で永田浩三さん

 「この大学にあなたのような教員はふさわしくありません。出て行ってください!」。武蔵大学の社会学部教授をしている永田浩三さん(写真上)だが、昨年、「戦争と人権」の授業のあとの「コメントペーパー」にこう書いた学生がいた。「ショックだった。でも慰安婦のことが『学び舎』などの教科書以外にほとんど載らなくなって18年も経つ。ネットを見ればフェイクと憎悪の情報が溢れ、韓国の悪口ばかり。そんな環境で『知らないのがわるい』とは言えない。時間をかけて丁寧に事実を教えていくしかないと思い、今年から授業方法を変えた」という。

 7月29日、東京・ギャラリー古藤で開かれている「横浜事件と言論の不自由展」の最終日、呼びかけ人でもある永田浩三さんのトークイベントがあった。会場は40人をこえて超満員。2001年に起きた放送史上最大のスキャンダルといわれた「NHK-ETV番組改変事件」がテーマだった。


 *シナリオの現物=削られた「天皇の責任」に関するコメント

 このとき永田さんはこの番組の「編集長」で、当時の政府高官だった安倍晋三らの圧力で、番組改ざんを強いられたのだ。「問われる戦時性暴力」というETVの番組は「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」を取材したものだったが、安倍らの干渉で「慰安婦の証言映像」や「天皇の戦争責任のコメント」など重要な箇所がばっさり削られてしまった。それもあくまでNHKが忖度した自主規制の形だった。

 永田さんは当時の状況を裏も表も含めて90分にわたって語った。「それは痛恨の出来事だった。おかしいと思ったが上司との人間関係もあり抵抗しきれなかった。定時番組が4分も削られたのは前代未聞」とのことだった。この事件以降NHKは萎縮し、その後現在まで17年間「慰安婦」問題を取り上げることはなくなった。永田さんは責任を問われる形で、本来の仕事を奪われた。一時は、専用の電話もない大机での作業になり、ドラマのために集めた小説類を倉庫の中で1日読んで過ごすこともあった。当時「仲間とすれ違っても目を合わせてくれなかったことが一番辛かった」という。そして退職することになる。

 その後、武蔵大学に就職することになり10年が経つが、「練馬・文化の会」の人たちに支えられてやっと立ち直った。いまは武蔵大学社会学部メディア学科の教授として学生を育て、また地域では「ギャラリー古藤」の企画メンバーとして活躍している。

 とりわけ大学の授業への思いは強い。「間違った情報が氾濫しているなか、よほど勉強しないと学生は真実にたどりつかない。でも時間はかかるが、一つひとつ調べて確かめていくことから真実に近づけると思う。『戦争と人権』という授業を毎年やっているが、いきなり戦争の話ではなく、“権力・メディア・性暴力”の伊藤詩織さんレイプ事件など身近な問題から入るようにしている」とのことだった。

 パワポを使ったこの日のトークでは、授業で実際に使っている資料を大写しにしたが、「慰安婦問題はウソと思っていた学生も、当時の証拠文書や東アジアに広がる慰安所の地図(写真下)を見せるととても驚く」という。

 そして永田さんは最後にこう結んだ。「いま間違いなく日本は『戦争の時代』に向かって動いている。横浜事件が示しているように戦争と言論弾圧はセット。横浜事件では戦争に異を唱える人間が引っ括られたが、今の時代ととても似ている。だからこそ今みんなで連帯して、よいよい社会をつくるために頑張るときだ。私は番組改変に手を染めたかっこのわるい人間だが、かっこのわるい人間が安倍政権と対決していることを学生に見せることが大事だと思っている」と。
 会場からは大きな拍手が起きた。〔松原明〕


Created by staff01. Last modified on 2018-07-30 10:21:57 Copyright: Default

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