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「天皇メッセージは憲法違反」〜天野恵一氏ゲストにディスカッション

     佐々木有美

 天皇のビデオメッセージを受けて、いま政府は有識者会議を作り、「生前退位」の本格的な検討に入ろうとしている。そうしたなかで、9月28日夜、レイバーネット日本の例会「みんなで話そう天皇制−生前退位をめぐって」が開かれた。会場の新宿・竹林閣には30人が集まった。ゲストは、天野恵一さん(反天皇制運動連絡会/写真左)、コーディネーターは山口正紀さん(ジャーナリスト/右)。


 *最初に11分の「天皇メッセージ」(お言葉)を見る

 天野さんは、今回のビデオメッセージは、たいへんな違憲行為だとまず断言。しかし、現状、このことを、憲法学者も婉曲にしか言えないという。以下、発言要旨を紹介する。

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 1989年即位のときの天皇の「憲法順守発言」は、明らかな政教分離違反(天皇即位は宗教儀式)だったが、当時、小田実をはじめ多くの天皇制批判派が「感動した」などと発言して、天皇擁護にまわった。これが今回繰り返されている。

 戦前の大日本国憲法では、天皇は国家の重要時すべてにかかわる大権をもち戦争に突っ走った。現憲法は、国民主権原理と象徴天皇制が並立しているが、天皇の暴走をコントロールするため天皇のやってよいことは厳密に儀式的・儀礼的行為(憲法第7条 天皇の国事行為)に限った。ビデオメッセージの中の「象徴的行為」というのははじめから憲法違反で、合憲のためのへりくつ。たとえば、憲法で定められた国事行為以外に、天皇の国会開会の「おことば」がある。これは戦前から行っているからという理由で、やっていいことになった。こうしたことは準国事行為(公的行為)と呼ばれ、私事でも国事でもない「公務」と呼ばれている。憲法ではやってはいけない「皇室外交」「被災地・戦跡訪問」などが、こうしてどんどん広がった。

 「生前退位」は、皇室典範を変えなければ実現しない。法律を変えろという天皇メッセージは、政治的行為で許されない。間違いなく憲法違反だ。

 戦後の憲法学者たち、針生誠吉や横田耕一らは、デモクラシーで天皇の暴走に歯止めをかけようとしてきた。憲法に定められた国事行為を広げないように厳密に守らせる限定的解釈がそれだ。しかし現在の学者には、その自覚がなくなってしまった。

 一部リベラル派といわれるメディアが、天皇をかついで安倍政権の改憲と対決しようとしている。“天皇の元首化”をうたう自民党の新憲法草案は、大日本帝国憲法への逆戻りではない。天皇条項では、アキヒト天皇が今まで自分の解釈でやってきた公的行為を憲法の条項に入れてお墨付きを与えている。内田樹などは、戦前の憲法のニュアンスに近いと読み間違え、“陛下とともにたたかう”などと言っているがそれはありえない。

 「生前退位」について出ている意見の中には、天皇に人権を認めよというのがある。人権論で考えるということに反対はしないが、まず考えるべきことは、貧困にあえいでいる多くの人々の人権ではないか。その上で、憲法が人権のない人を作り出すのは許されない。また、天皇に離脱の権利を認めないのは、憲法違反ではないか。

*天野さん「即位の時に貝原浩が描いたこのイラストに全てが表現されている」
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 コーディネーターの山口さんからは、「マスコミ報道の“敬語”が天皇制を支えている。敬語によって“尊敬するもの”“敬意を示す対象”というイメージが強力につくられ、批判を許さない存在にされている。これでは、権力チェックなどできるわけがない」という意見が出された。

 参加者からは、活発な質問、意見があいついだ。「メッセージを、老人問題として国民に同情させるのは、メディアのミスリード。このメッセージの一番の主張は、象徴天皇制を持続させることに尽きる」「天皇に合わせて憲法を作ったのだから無理があるのは当然。いっそ、天皇条項を憲法からはずして、天皇家にはNPOにでもなってほしい」という意見も。

 天野さんも、「天皇と憲法には原理的矛盾がある。政治性を持たない天皇制はありえない。天皇制の廃止を言うと護憲派から“足をひっぱるな”と言われるので、控えてきたが、いまは言うべきときだと思う」と結んだ。

 天野さんの「天皇メッセージ」違憲論は、あいまいさを残さず明快だった。学者、知識人、メディアの混迷のなかで、頼るべき指針にしたい。

*レイバーネットではこうした例会を今後も適宜開催したい。本記事への感想・企画提案などこちらへお寄せください。(ウェブ編集部)


Created by staff01. Last modified on 2016-09-29 22:15:04 Copyright: Default

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