アジア記者クラブ通信8月号～「特集マレーシア航空機撃墜事件」

＜「アジア記者クラブ通信」８月（２６４）号のタイトル＆リード＞
※本文は通信でお読みください。

「特集　マレーシア航空機撃墜事件」

■定例会リポート（２０１４年６月２６日）
思想統制・異分子排除で劣化する裁判制度
『絶望の裁判所』の筆者が語る
瀬木比呂志（明治大学法科大学院教授）

　警察、検察に比べて報道量が少なく、ドラマの舞台になることもあまりない。市民に
とってヤミに包まれたような裁判所の内部について、当事者がその実態をつづった書籍
が２月に刊行され、次々と版を重ねている。裁判官として東京地裁、最高裁などに勤務
した瀬木比呂志氏が上梓した『絶望の裁判所』（講談社現代新書）。ダンテ『神曲』を
引用して「この門をくぐる者は、一切の希望を捨てよ」と裁判所の利用者に呼びかけた
同書は、メディアにも大きな衝撃を与え、書評欄などを席巻した。最高裁を頂点とする
日本の裁判システムはどう動き、裁判官は何を考えているのか。瀬木さんをお招きし、
同書の内容を踏まえて“法服の世界”を語っていただいた。（編集部）


■ネットを積極活用して民主主義再生運動を展開　　　　　　　　　　
第２の建国目指す米草の根運動
ケビン・ジーズ（政治アクティビスト）
マーガレット・フラワーズ（Its Our Economy共同運営者、小児科医）

　１７７６年の米国独立宣言を読めば、それが啓蒙思想を基盤とするイギリス帝国主義
への反乱だったことを改めて認識できる。それから２４０年近く経って、米国はダブル
スタンダード（２重基準）、否トリプルスタンダード（３重基準）の“怪獣”国家と化
した。前者は「自由と民主主義、法の支配」を錦の御旗としながら、巨大多国籍企業に
支配される政府が裏舞台でその旗を足蹴にしていている事実を指す。後者には、これに
加え、世界中の反米主義者・運動家の政治殺戮を隠然と行っている「テロ国家」という
側面が加わる。こんな中、ローリングレベリオンと呼ばれる、建国の精神を取り戻し、
腐敗し尽くした２大政党制を打破すべく、新たな憲法起草に向けた草の根の反抗運動が
全米で展開され始めた。その特色は、インターネットを介して憲法の起草を委託する、
クラウドソーシングを核としながら、各地で抗議とデモを実施していることにある。こ
の米国の草の根運動は、６９年前の敗戦による「上から与えられた民主主義」の上に構
築された戦後日本が砂上の楼閣の如く瓦解しつつある今、日本人一人ひとりに突きつけ
られている課題にもなっている。（編集部）


■親ロシア派勢力の犯行との“定説”を覆す証拠あり　　　　　　　　　
危険空域へと導かれたＭＨ１７便
ミシェル・チョスドフスキー（ＣＲＧ編集長）

　昨年末からのウクライナ動乱は今や新段階に突入した。ロシアと米・ＮＡＴＯとの新
冷戦の構図が決定的なものとなったからだ。その起爆剤の役割を果たしたのが、ウクラ
イナ東部を実効支配する“親ロシア勢力による７月１７日のマレーシア航空機撃墜事件
”だった。西側主流メディアは一貫して、ロシアのプーチン体制が後ろ盾となっている
親ロシア武装勢力の犯行を前提として、すべての事象を説明している。その説明のほこ
ろびは隠されたままだ。筆者は①ＭＨ１７便がウクライナ南部を通る通常の飛行コース
を出て、高度を下げ、同東部の危険な戦闘空域へと進入した、②同便を追いかける形で
ウクライナ空軍のＳＵ－２５戦闘機が接近し、危険空域へと導いた、と指摘。ＳＵ－２
５は空対空ミサイルを装備しており、１７便の撃墜が必ずしも地上からの地対空ミサイ
ルによるものではないと示唆する。一方、米国防総省のサイト「globalsecurity.org」
は異例にも７月２２日付でＳＵ－２５の異常接近を報じたロシア・ＲＴの報道を転載し
た。その翌日に「ウクライナ機が親露派に撃墜される」との報道がなされており、ＳＵ
－２５はＭＨ１７便狙撃の囮（おとり）だったとの見方も可能だ。いずれにせよＭＨ１
７便は新冷戦構造の定着に利用されたとみるべきである。（編集部）


■まず「プーチンの責任を追及」との結論ありき　　　　　　　　　　　
米国が介入した？２つのＭＨ大事件
ジャソン・キスナー（カリフォルニア州立大学・犯罪学）

　確かにマレーシア航空ＭＨ１７便はウクライナ東部の戦闘空域に進入して、撃墜され
た。ここまでは西側主流メディアと筆者の見解は一致する。問題は戦闘空域への進入が
、通常のものであったか否かにある。主流メディアが無視するデータに基づき、筆者は
ＭＨ１７便が通常の安全な飛行コースから外れ、危険な空域へと向かうよう“強要され
た”とみるべきだと示唆する。それは南シナ海上空の通常の航路を北京に向かって飛行
中に突如インド洋方面へとＵターンし、失踪した３月のＭＨ３７０便の動きと類似する
。本稿は事件発生の「７月１７日」という日付がさまざまな観点から意図的に選ばれた
とみて、２つのマレーシア航空機を巡る大事件は謀略であると推論している。国際政治
の裏舞台は陰謀、謀略そのものであり、米・ＮＡＴＯが絡まずして事件は起こりえない
と考えるのはむしろ常識とみている。はじめに「プーチンを陥れる」との結論があった
のだ。（編集部）


■「ＭＨ１７便はウクライナ軍機により撃墜された」　　　　　　　　
ドイツ人機長の衝撃的レポート
ピーター・ハイセンコ（ドイツ・コンドル航空パイロット）

　７月１７日のウクライナ東部でのマレーシア航空機ＭＨ１７便撃墜事件発生の直後か
ら米・ＮＡＴＯ加盟国と西側主流メディアは一斉に「親ロシア派勢力によりロシア製の
地対空ミサイルで撃墜された」と断定、執拗にプーチン率いるロシアへ“言葉の弾丸”
を連射した。しかし、ボイス＆フライトレコーダーをはじめ事件解明のカギとなる物証
が英国など西側諸国に引き渡されるとともに、地対空ミサイルでの撃墜説は雲散霧消し
た感がある。撃墜が米・ＮＡＴＯの謀略であったことを示唆するかのように、原因究明
を巡り不気味な沈黙が続き、各種レコーダーの解析結果すら公表されないままだ。本通
信２６４号の「ＭＨ１７便事件特集第３弾」は、ドイツ・ルフトハンザ航空傘下にあっ
たコンドル航空のベテラン操縦士が「ＭＨ１７便は接近したウクライナ軍のＳＵ２５攻
撃機により操縦室部分を銃撃されて墜落した」と的確に指摘した衝撃的なレポートであ
る。筆者は操縦室の外壁の破片の映像を専門家の視点から科学的に分析しており、ネッ
トを通じ世界に静かながら、大きな波紋を呼んでいる。（編集部）


■イスラエルの子供たちは教育と軍事訓練で洗脳される　　　　　　　
パレスチナの「非人間化過程」
アリ・アブニマー（ＥＩ共同創設者）

　本稿はパレスチナ人とイスラエル人との“終わりなき”戦いの根源といえる占領、抑
圧、憎悪、暴力という負の連鎖がどのように間断なく種をまかれ、育成されているかを
子どもへの教育とリアルな写真から理解させようとするものだ。イスラエルの子どもた
ちは幼少時から教育、特にその中核となる軍事訓練でパレスチナ人への敵対と抑圧の心
情を叩き込まれ、洗脳されている。大人になればパレスチナ人との戦いは「正当防衛」
と位置づけられてしまうのだ。一方、パレスチナの子どもたちは父祖の地をイスラエル
に占領されたうえ、爆撃、殺傷を繰り返えされ、さらに理不尽な植民地主義と隔離政策
という組織的暴力によって日々心に深い傷を負っている。筆者は敵対し合う双方の子ど
もたちの成長に「非人間化へのプロセス」という概念を適用して、パレスチナ問題を考
察している。（編集部）


■殺害されているのは圧倒的にパレスチナ人だ　　　　　　　　　　
「ハマスの地下道」悪用するイスラエル
ピーター?ハート（activism director at FAIR）

　イスラエルは、パレスチナのイスラム急進派ハマスの掘ったイスラエル側に通じるト
ンネルが自国に多大な脅威となっている、として戦争遂行の理由の１つに挙げている。
筆者は、米国の主流メディアがこのプロパガンダに飛びつき、「無数に掘られたトンネ
ルから突如飛び出てくるハマス兵士の脅威にイスラエルの人々はおののいている。実際
、多数の無辜のイスラエルの市民や子どもたちが殺害されている」と仰々しく報じたこ
とを批判する。実際、７月８日以降の戦闘激化に伴うイスラエル、パレスチナ双方の７
月末までの死者数を国連などの統計数字で比較してみると、この報道が虚報（でっち上
げ）に近いことが判明する。パレスチナ側の死者１１０１人に対し、イスラエル側は５
８人で、パレスチナ側の被害が圧倒的だ。民間人の死者数に至ってはパレスチナ２７５
人対イスラエル３人である。この事実を無視した「トンネルの恐怖」報道が日本でも繰
り返された。（編集部）


■ロシア、中国、パレスチナは抹殺すべき「悪」　　　　　　　　　　　　
権力とメディア・プロパガンダ
ティモシー・アレクサンダー・グスマン（調査報道ジャーナリスト）

　既成メディアの劣化が指摘されて久しい。だが、筆者は米国の主流メディアの起源が
米西戦争を煽ったイエロージャーナリズムにあるとし、個々のジャーナリストが身の危
険を顧みず、事実の発掘に真摯に努め、権力と対峙した数々の事例をむしろ例外とみな
している。特に、最近、ネットでオルタナティブメディアが著しく台頭して、既成メデ
ィアは深刻な経営危機へと陥り、これがメディアをさらに権力にすり寄らせる悪循環に
陥っているとデータを挙げて批判する。「事実に忠実であるべき」ジャーナリズムはま
すます権力におもね、「結論が先にあり、事実を歪める」姿勢が露になっている。本稿
はその象徴としてウクライナでのマレーシア機撃墜事件とパレスチナとイスラエルの新
たな戦争を取り上げた。「ロシア、中国、パレスチナは抹殺すべき」との権力側の意思
を先取りし、データの収集と事実の検証というジャーナリズムの基本が意図的に放棄さ
れて、メディアがプロパガンダ機関に堕している現状を告発する。（編集部）


■伊藤孝司の平壌日記

■山崎久隆の原発切抜帖

■書評　吉田哲也・鳥畑与一ほか著『徹底批判　カジノ賭博合法化』（坂井泉）


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