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石川源嗣のコラム : 犯罪と労働組合
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東部労組の石川です。

東部労組機関紙2014年2月号のコラム<二言三言>に下記の文章を掲載しました。
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犯罪と労働組合


*テレビ報道から

 水産大手マルハニチロ子会社の群馬工場での農薬混入事件で契約社員が逮捕された。

 かつて彼は「正社員になれるよう頑張っている」「しかしこんな給料じゃ、やっ ていけない」と愚痴をこぼしていたという。労働条件に不満を持っていたことは間違 いないようだ。

 ここから、秋葉原大量殺傷事件や中国の毒入り餃子事件を連想する人は多いだろう。

 私はこの種の事件が起こると必ず思い出すのがもう10年ほど前になるが、名古屋立 てこもり爆発事件である。

 小型トラックで荷物の集配をする個人事業主の委託労働者が契約会社の名古屋支店に 包丁などを持って押し入り、人質を取って立てこもって、「社長に会わせろ」と要求し たが、床にまき散らしたガソリンが爆発、炎上し、本人と支店長、警官の3人が死亡、 窓ガラスが飛び散り、大勢が負傷するという大惨事であった。

 「無断欠勤ゼロで有休もほとんど消化せず、無口でまじめ一筋」だった犯人を凶行に 駆り立てたのは何か。配達用のバンを月賦で買わされ、「説明会では、月収40万円は 見込めるといわれたが、実際は仕事が少なく約8万円だった」、その支払いも遅れてい たという証言もある。本人のブチ切れた様が目に浮かぶ。

 何の解決策にもならないことは本人もよく分かっているにもかかわらず、それでもな おやらずにはおれないほどの仕打ちや消し去ることのできない屈辱を与えられ、その怒 りが行動に駆り立てたであろうことは想像に難くない。

 「貧しさのために、労働者には、餓死か、自殺か、犯罪かの選択肢しかない」「労働 者の抵抗の最初の、もっとも粗野な、そしてもっとも効果のない形態が犯罪であった」 というエンゲルスの言葉は残念ながらまだ時代遅れになっていない。

 抑圧者に対する労働者の憎悪は正当である。「抑圧者と制度にたいして、燃えるよう な憎悪の念をもつときだけ、人間らしい感情をもう一度もつことができる。彼らは支配 階級にたいして怒りを感じている限りにおいて人間なのである」(同前)。「階級的憎 しみ」は闘争の必要条件である。

 しかしその方法を間違えてはならない。犯罪によって現状を変えることはできない。

 私たちのスローガンは「労働者にとって最強のセーフティネットは労働組合!」、「労 働問題を労働組合加入で解決しよう!」である。

 しかし毎日の労働相談で、そのような発想と出会うことはまれだ。だからこそ労働組 合で解決するという考え方をもっと広めなければならないと思う。(石)


Created by staff01. Last modified on 2014-02-05 18:02:58 Copyright: Default

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