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松本昌次のいま、言わねばならないこと〜アメリカにはヘイトしない「在特会」
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 第8回(2013.11.1) 松本昌次(編集者・影書房)  

アメリカにはヘイトしない「在特会」

 去る10月7日、京都・朝鮮学校に対して街宣活動を行った「在特会」に、街宣活動禁止と1225万円の賠償を命じた京都地裁の判決は、当然のことながら、相次ぐ台風襲来のあとの秋晴れの青空を久しぶりに仰いだような、爽やかな感動を覚えた。しかし「在特会」は、判決を不服として控訴するという。またネット上では、「朝鮮人を殺せ」とか「ガス室にたたき込め」などというヘイトスピーチが、前にも増して大量に溢れかえっているという。スピーチというにはなんとも幼稚な強迫で、いまさらナチスでもあるまいに、顔赤らむ思いである。


*イラスト=壱花花(2013.4)

 だが、考えてみると、「在特会」をはじめとする日本における人種差別、特に在日韓国・朝鮮人に対する際立った排斥運動は、実に根深いものがある。ここでそれらについて詳しく書く余裕はないが、日本の近代を底流する欧米に対する劣等意識と、その裏がえしとしてのアジアに対する優越意識から、敗戦という無残な経験を経たにも拘らずいまだに抜け切れない日本人が、上は政府自民党から下は「在特会」に至るまで、ウヨウヨいるということなのである。つまり、彼等は、「大日本帝国」が、中国の侵略戦争に敗北し、朝鮮の植民地支配にも敗北したことを心底認める勇気がないのである。そしてかつてのアジアの「盟主」としての見果てぬ夢をおびえながら見つづけているのである。

 従って、「在特会」などは、戦争中、原爆や空襲で民間人を大虐殺し、いまは沖縄に基地をはりめぐらし占領しているアメリカ、核弾頭をロシアとともに1万7千発保有しているアメリカ、戦後、朝鮮・ベトナム・イラクなど外国で700万人を殺害したといわれるアメリカ、イエメン・パキスタンなどを無人機で攻撃、イスラム教徒を無差別に殺しつづけているアメリカには、目をふさぎ、いささかもヘイトを覚えないようである。一方、朝鮮の人工衛星打ち上げ、韓国・中国との竹島・尖閣諸島をめぐる領有問題となると、猛然とヘイトの限りをつくすのである。朝鮮が人工衛星といっているのに、それを「事実上のミサイル」とつけ加えて朝鮮の敵視政策をあおる政府自民党、それに追従するメディアにも呆れ返る。領土問題では、かつて日本が朝鮮・中国などの領土をどれだけ武力で収奪したかの反省は、ひとかけらもない。一人の生命も犠牲にすることなく、話し合いで解決する道を選ぶのが日本のとるべき道である。

 「在特会」などが平気で跋扈する現状には、結局、日本がアジアに対する植民地支配・侵略戦争の歴史を直視してこなかったことに原因がある。間もなく任期を終えるという駐日ドイツ大使のフォルカー・シュタンツェルさんは、インタビューに答えたなかで、「私たちは侵略者でした。戦後になると、周りの国すべてが私たちの犠牲者でした。」と、はっきり語っている(朝日10.3付)。「ご迷惑をおかけした」とか、「遺憾の意を表します」などではない。日本の歴代の政治支配者、そして天皇が、一度でも「私たちはアジア諸国への侵略者でした」と言いきったことがあるだろうか。また、アメリカ人の東洋文化研究者のアレックス・カーさんは、ドイツでは、戦争の過ちを法律・教育その他で示しているのでドイツを恨む国はないとのべつつ、日本は、日清戦争・韓国併合・第2次世界大戦に至る近代の歴史に関し、「教育の場で『空白』箇所が多く、歴史をぼかしたり、政治家が軽率な発言をしたりしたツケが回っている」と語っている(朝日10・10付)。政府自民党よ、「在特会」よ、心して聞け、といいたい。

 おわりに、前回、高く評価した森達也氏のことばをとどめとしよう。この国は、「失敗も大きい。そんな歴史を繰り返す。つまり過去に学ばない。……この国は世界の反面教師となる定めなのかもしれない」。(「自然と人間」11月号)

*「在特会」=在日特権を許さない市民の会の略称


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