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木下昌明の映画批評 : レイバー映画祭『渋谷ブランニューデイズ』『ザ・テイク(工場占拠)』
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「レイバー映画祭2012」開催
「非正規労働者」「原発問題」・・人の生きる権利と尊厳を問う

 “日本の今 世界の今”とうたって長短7本の映画を集め、今年も「レイバー映画祭」が催される。

 “日本のいま”では、遠藤大輔監督の「渋谷ブランニューデイズ」=写真=が見ごたえがある。派遣労働者で52歳になる宮沢徹雄がふとしたことで職を失い、アパートを追い出されてさまよったあげく、渋谷区役所の地下駐車場に寝場所を見つける。そこを拠点に、彼は仲間や支援者とともに「俺たちにも生きる権利がある」と声を上げるドキュメントだ。野宿者の締め出しに躍起の行政と対決する彼の姿勢が爽やかでいい。その原動力は、同じ野宿者から一個のパンを二つにして分けてもらったことだった―。

 映画は、戦後の日本経済を支えた「寄せ場」の歴史をとらえ、これと同じ境遇にある非正規労働者が職を失うとどうなるか、“すべり台社会”のどん底を照らす。

 東京では、渋谷区がスポーツメーカー・ナイキと提携して宮下公園を改修したのを機に、再開発名目で多くの公園施設から路上生活者が排除されている。映画は、強権をふるう行政に人間の尊厳をかけた抵抗の一本となろう。

 このほか、松原明の「64歳のデモデビュー」や堀切さとみの「原発の町を追われて」など、3・11以降の原発問題の現場に光をあてた4本からも最新の日本が見えてくる。

 “世界のいま”では、ナオミ・クラインとその夫アヴィ・ルイスの共作「ザ・テイク(工場占拠)」が見もの。ナオミ・クラインは、いまや原発のような大災害さえも儲けの手段でしかなくなったシステムを批判した『ショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)』の著者としてよく知られている。その彼女が「グローバル国家の残骸」と呼ばれたアルゼンチンに赴き、一度は工場から放り出された人々に密着し、彼らがゴーストタウン化した工場街を立て直していく姿をとらえている。貴重なドキュメントだ。(木下昌明 『サンデー毎日』2012.7.29号所収)

*「レイバー映画祭2012」は、7月21日、東京・田町交通ビル6Fホールで開催される。詳細

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レイバー映画祭2012〜世界のいま 日本のいま


 生活は根底から脅かされている時代に私たちは生きている。でも負けてはいられない。映画は教えてくれる。世界で日本で何が起こっているか、そして真実は何かということを。「レイバー映画祭2012」では、オキュパイ運動に大きな影響を与えた傑作ドキュメンタリー「ザ・テイク」を日本初上映する。その他、新作を満載。今年も田町で元気をもらおう。
7月21日(土)10.00〜17.15(開場9.30)
田町交通ビル6階ホール(JR田町駅「芝浦口」徒歩3分) 港区芝浦3-2-22 参加費(通し券) 一般当日1500円(前売・予約1300円)
     障がい者・学生・失業者は各200円引き
予約・問い合わせ レイバーネット日本
 173-0036 東京都板橋区向原2-22-17-108
 TEL03-3530-8588 FAX03-3530-8578
 メール予約 http://vpress.la.coocan.jp/yoyaku-labor12.html
事務局 labor-staff@labornetjp.org
 映画祭ブログ http://unionyes.exblog.jp/

●プログラム
 10.00 「Occupy バークレー」 35分
 10.40 「渋谷ブランニューデイズ」78分
 12.05  昼休憩 50分
 12.55 主催者挨拶
 13.00 <私たちが撮った3.11>
    「64歳のデモデビュー」30分
    「わたしたちは忘れない」33分
    「それでも種をまく」24分
    「原発の町を追われて」40分
 15.25 休憩 15分
 15.40 「ザ・テイク」87分
 17.15 終了
 *各回、制作者・関係者のショートトークあり
ーーー作品解説ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●「Occupy バークレー〜歴史は今よみがえる」(マブイシネコープ・2012年・35分)
ニューヨーク・ウォール街に始まったオキュパイ運動はまたたく間に全米各地へ拡がった。ベトナム反戦運動の歴史をもつカリフォルニア大学バークレー校でも始まったオキュパイ運動。市民全体に生き生きと広がる姿や2011年11月15日の1万人集会の息吹を伝える。
●「渋谷ブランニューデイズ」(遠藤大輔・2011年・78分)
一人の派遣労働者が仕事と住まいを失って、路上生活に陥った。宮沢徹雄さん、52歳。やむなき事情で野宿の身となり、渋谷区役所の駐車場で寝泊まりする人々。逆境の中で、互いに支えあいながら生きるささやかなコミュニティを1年半にわたって追った、夢と希望のホームレス・ムービー!

●「64歳のデモデビュー〜3.11が私を変えた」(松原明・2012年・30分) 女性の生き方がテーマのノンフィクション作家・松原惇子は、64歳まで一度もデモをしたことはなかった。しかし、3.11が何かを変えた。警察の姿に怯えながら踏み出した一歩。松原惇子が脱原発運動の中でみたものとは?

●「わたしたちは忘れない〜福島 避難区域の教師たち」(湯本雅典・2012年・33分)
原発事故で周辺の学校現場はどうなったのか。学校は休校となり、教師たちも避難を余儀なくされた。生徒たちはばらばらになり、教師には過酷な「兼務発令」が出される。知られざる避難区域の教師たちの思いを記録した。

●「それでも種をまく」(国際有機農業映画祭・2011年・24分)
福島で営まれていた有機農業。しかし原発事故による放射能汚染は、その基盤を暴力的に破壊してしまった。失われた生態系、地域や消費者とのつながり。有機農業者たちは「つながり」を取り戻すために「それでも」種をまこうとしている。撮影=笠原眞弓ほか。

●「原発の町を追われて〜避難民・双葉町の記録」(堀切さとみ・2012年・40分)
福島第一原発のお膝元にあり、3・11直後、全世帯が避難勧告を受けた双葉町。町は役場機能を埼玉県加須市に移し、廃校になった高校を拠点に避難生活を送っている。原発と共にあった双葉町の人たちは、ふるさとを追われ、今何を思うのか。避難所で出会った人たちの声を集めた。

●「ザ・テイク(工場占拠)」(ナオミクライン&アヴィルイス・2004年カナダ・87分)
南米の経済大国として繁栄を謳歌していたアルゼンチンだったが、90年代に極端な新自由主義路線を突っ走って経済破綻してしまった。2001年相次ぐ工場閉鎖のなかで、アルゼンチンの労働者は工場自主管理闘争に立ち上がった。新自由主義の真実に迫った映画「ザ・テイク」は、世界の社会運動・労働運動に大きな影響を与えてきた。


Created by staff01. Last modified on 2012-07-18 11:57:29 Copyright: Default

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