3分ビデオ「日赤・いじめの病巣」が光をあてたもの(壱花花) | |||||||
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今年のレイバーフェスタで印象深かったのは、大阪の3分ビデオ作品「日赤・いじめの病巣」(写真)だ。 不器用という因縁をつけられ、椅子を蹴られるなどの酷いいじめに遭った人が、唇を噛み声をつまらせて語る。もう6年も前の話なのに、彼女の中ではそのパワハラがずっと心にのしかかり、苦しんでいた。不器用な自分がいけないのだと自分を責め、新しい仕事をするにもなかなか自信が持てなかった。人生を狂わされたといっても過言ではない。彼女はこの悔しい気持ちを聞いてほしいと、ビデオ制作者にメールを出したことにより、この作品が生まれた。最後の場面で彼女が涙声になったのは、当時の辛さを思い出したというよりもむしろ、「ああ、やっと話せた」と、これまで独りで心の中にしまって耐えてきた緊張感が解け、感情がこみ上げて堰から溢れてきたような感じだった。 かつて自分も短期間ではあったがパワハラ職場にいたことがあった。暴力はなかったが無能さをなじられ、露骨な嫌悪の態度をとられた。居残って闘うことは精神的に無理だったので自主退職した。それしかなかった。闘えなかった。頑張ろう頑張ろうと思ってもやっぱり無理で、退職を決意した日に流した涙は、辛さというよりも安堵に近かった。 制作者は「争議や裁判に至るのは労働問題全体の中の一部であり、このようなパワハラで苦しんでいる声がたくさんある」と語った。不当労働行為に傷ついた上に、更に争議や裁判を闘い抜くというのは、心をしっかり持たないとできない。不正に対して怒る前に、悲しみや苦しみでグッタリしてしまい、気丈になれない人はいる。争議だけが労働問題の解決の全てではなく、例えばこの作品が示したように、本人の気持ちに寄り添いながらゆっくり、丁寧にサポートしていくことも、「解決」の一つの形なのだ。 就活デモのビデオには「求める能力高すぎ!」という怒りのプラカードがあった。景気や経営の問題を、学生や労働者の能力(自己責任)の問題に不当なほど転嫁している卑劣さを、企業はもっと自覚すべきだ。高いハードルを乗り越えられない人たちはたくさんいて、うつや引きこもりになっていく。他には、自殺対策キャンペーンを撮った作品もあった。3分ビデオはいろいろな作品がつながって見えてくる。 拳を上げてのシュプレヒコール、肩組み高らかに歌うインターナショナル、明るく元気に踊りながらの韓国の労働歌。見ていて心は高鳴るが、一方でいたたまれなくなってその場から逃げ出したくなるのは、自分の性格の所以だろうか。それとも闘えずに「逃げた」負い目があるからだろうか。 布団かぶって泣いていい。泣きあかしてから考えればいい。会社としては泣き寝入りしてくれたら御の字。それは悔しい。でも実際に泣き寝入りするしかない人がたくさんいる。立ち上がる気力さえ奪われた人がたくさんいる。インターナショナルが響かない人がたくさんいる。「日赤・いじめの病巣」はその存在に光を当てた。 壱花花 Created by staff01. Last modified on 2010-12-24 11:19:51 Copyright: Default |