イラン政府の暴挙〜労働運動家に対する逮捕・投獄つづく | |||||||
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サイード・トラビアンが逮捕された。6月9日の朝、秘密警察がテヘランの自宅を襲った。身柄を拘束されたが、その行方は公表されていない。政治犯らが拘束される、郊外のエビン刑務所に収監されていると思われる。彼は、テヘランバス労組のスポークスマンで執行委員。オサンルー委員長とマダディ副委員長が2007年に不当逮捕されて以来、組合の中心的人物であった。心臓の病があり、健康状態も心配される。同労組が加盟するITF(国際運輸労連)は直ちに抗議文をイラン政府に送り付けた。 こちらに入った情報では、逮捕の前にあるバス営業所で、オサンルー氏らの釈放を求める抗議行動が自然発生的に起きていた。果たしてそれに対する報復だったのか。また、「不正選挙」となった昨年のイラン大統領選から6月12日でちょうど一周年となる。当局は、反対派への弾圧を強化していたのであり、その手始めとして5月9日にクルド人教師で労働運動家のファルザット・カマンガールら5人を絞首台に送っている。ちなみに、彼らの遺体は遺族に返されず、勝手に埋葬された。 さらに昨日は、テヘランバス労組のレーザ・シャハビィが逮捕された。彼は組合の財政部長兼執行委員だが、会社に出勤したところ本社に行くよう命じられ、そこで待ち受けていた秘密警察に拘束された。いったん自宅で家宅捜索に立会ったが、その後の消息は彼も不明である。ITFは改めて抗議文を書くことになる。 一週間前には、オサンルー委員長の行方が一時不明になった。彼は2年前にエビン刑務所から隔離され、さらに辺鄙なラジャイ・シャール刑務所に移送されていたが、ここから革命警備隊が直轄する特別刑務所に連れて行かれたとの情報が入った。拷問を受ける可能性がある。「西側のスパイ」と自白させることができれば、イラン当局は一挙に同労組や反体制グループを弾圧できただろう。一説には、この三年間オサンルー氏は圧力に屈せず信念を貫き、これに業を煮やした強硬派がこの暴挙に出たとも言われる。直ちに抗議文を送り付けた甲斐があってか、同氏はラジャイ・シャール刑務所に戻された。だがそんなことで安堵している訳にはいかない。そもそもそこにいること事態が間違っているのだから。 この他にも4月以降、7人の労働運動家らが逮捕されている。いずれも、イラン南部のハフト・タペイ砂糖大工場の労組を支えたり、教育労働者の運動を支援してきた人たちだ。テヘランバス労組と共に、政府から独立した労働運動をこの間中心的に担ってきた三大勢力である。そこに今じわじわと改めて弾圧が加えられているのだ。 時同じくして、ジュネーブではILO総会が開催されている。その時期に平然とこうした暴挙に出るイラン政府。それだけ国内に抱え込んでいる諸矛盾が深刻なのだろう(9月からはガソリン代の補助が廃止され、物価上昇が見込まれる)が、私たちは手をこまねいているだけなのか。確かに、連合などが加盟するITUC(国際労働組合総連合)やイギリスの鉄道海運労組は、イラン政府が連れて来たカイライ労働側代表の適正を資格審査委員会に質している。亡命イラン共産党のメンバーは、壇上を占拠してカマンガールの遺影などを掲げた。しかし、三者構成のILOで労働組合側が資格審査で異議を通すことは難しい。また、占拠は数分で終わった。その後は、このカイライ労働側委員らが、「オサンルーは近々釈放される」と3ヶ月前から聞かされているデマを平然と吹聴して回っているのだ。 こういうこともあろうかと、私は6月始めにITUCの担当者と会い、「ILO総会中、ハト派を自称する連中の口車に乗せられないよう、わが陣営の敷居を高くしておいてほしい」と求めた。どうやらその一線は守れたようだ。実際こうした攻勢は私たちの運動が前進するたびに顕在化していた。「今度の労働大臣はこの問題に同情的だ」などと春ごろから何度か聞かされた。では、カマンガール氏らの処刑についてご本人から意見を聞きたい。抗議の釈明に追われた各国大使館は、「テロリストだったから」という従来の見解を繰り返した。リップサービスに惑わされてはならないのだ。 6月8日。ジャカルタで船員組合・KPIと教職員組合による抗議行動があった(写真)。イラン大使館前で先頭に立って気勢を上げるのは、3年前にテヘランまでビザなしで渡航してオサンルー氏らに会おうとしたKPIのハナフィ・ルスタンディ委員長。私も良く知る人物だ。イスラム国家からの来訪者をむげに追い返すことはさすがにできず、入国が認められたが、獄中のオサンルー氏の面会はかなわなかった。そのとき彼に付き添ったのが、サイード・トラビアン。その彼の不当逮捕は翌日であったが、そのことを知りハナフィは大変憤慨していた。 6月10日。私は、ブラッセルで機関会議を開催しており、「イラン問題」を討議していた。ガーナの代議員が発言した。「国際行動日を何度もやってきたが、これで圧力がかからないのであれば、より強硬な選択肢が必要だ」。彼の口からは、「制裁」という言葉が漏れた。果たしてそういう方向に運動を展開できるか。正念場である。もう一度しっかりと脇を引き締めて闘いの態勢を創らなくてはならない。 ITF・浦田誠 *写真のスローガン=「労働組合員は犯罪者ではない」 Created by staff01. Last modified on 2010-06-15 09:56:22 Copyright: Default |