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LNJ Logo 報告 : 「生活保護申請をビデオ記録して逮捕って何だよ!?」抗議集会
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生活保護を申請する際に、福祉事務所の窓口の職員が正しく処理するかを記録しようと、持参したビデオカメラを回したことが「職務強要罪」にあたるとして、申請者が大阪府警に事後逮捕された事件を考える集会が、12月23日都内で開催された。集会名称は「『生活保護申請を記録して逮捕って何だよ?!』−生存権を求めたA君は無罪だ−」。会場の新宿区・大久保地域センターに、80人が集まった。当事者が加盟する労働組合、弁護士、生保申請でたらいまわしに遭った経験者、貧困問題に取り組む支援者らが次々と発言し、今回の逮捕の不当性と、今なお拘束されているAさんをすぐに釈放するよう訴えた。(報道部・Y)

-----以下詳報-------------------------------------------

こんなことが許されていいのか。

自分の生保申請を証拠として記録しようと、持参したビデオカメラを回しただけで逮捕されたAさん。応対した職員が警察に被害届けを出し、福祉事務所が刑事告発したのだ。集会に参加した人々は、関係者の発言に熱心に耳を傾け、活発な議論が展開された。

最初にAさんが所属する「関西非正規労働者等労働組合ユニオンぼちぼち」の橋口昌治執行委員長(写真下)が、これまでの経過を説明した。

■事件までの経過

今年の2月から5月まで生保を受給していたAさんは、7月に退職。8月3日に大阪柏原市福祉事務所に保護の申請をする。しかし14日には却下されてしまう。その理由は、前回の保護受給時に発見し、保護を継続させるために大阪法務局に供託に付した、Aさん名義の母親の貯金の存在だった。「この金を使えば生活できるだろう」というわけである。

生保申請時に初めて家族の貯金を知る人は多いという。Aさんもそんなありふれた申請者の一人だった。

Aさんは却下に納得せず、同日付で再申請と審査請求をする。その後、連絡の取れた母親に供託金を引き出してもらい、条件を変更して同月18日、再申請に訪れる。

経済的に追い詰められ、受理への不安に駆られていたAさんは、持参したビデオで双方のやりとりを録画し始めた。「ちゃんと対応してください」――Aさんの抗議を受けた職員は警察に連絡。Aさんも組合に電話をした。第三者が間に入ったことで、こじれていた対話が進み、8月31日に保護の決定がなされた。

■「ユニオンチューブがある」

保護費の支給が決まったことで関係者は、被害届けは取り下げられたものと判断していた。ところが福祉事務所は、Aさんの言動が脅迫的な行為に当たるとして「職務強要罪」で刑事告訴をしていたのである。Aさんは大阪府警によって10月27日に令状逮捕、家宅捜索され、11月16日に起訴された。

「ユニオンチューブっていうのがあるんですよ」――職員にそう言った彼は、まだ獄中にいる。撮影した映像もいっさい公開されていない。「何がいけないのか、何が不当なのか。これは生存権の問題だ。記録を取るという行為に対する問題だ」と橋口さんは憤る。 うつ病を患ったAさんは、組合活動でもメンタルな問題に取り組み始めたばかり。その矢先の逮捕だった。「拘置所は寒い。頭痛がする。一日を生き延びるのが精いっぱいだ」――橋口さんは悔しさをにじませながら、静かにAさんの手紙を読み始めた。

■市役所をたらいまわしにされて

弁護士の山本志都さんは、適用が極めて珍しいとされる本件「職務強要罪」について、詳しく解説した。

「もやい」の代表理事・稲葉剛さんと対談したのは、保護を求めて伊東、熱海、小田原と市役所を転々とした61歳の男性だ。(写真下)

横浜で住まいを失い伊東市の知人を訪ねたが、所持金がなく改札を通れずにホームにいたところを、警察に保護された。警察官は伊東市役所に行くことを勧めた。だがそこで渡されたのは、近隣役所までの片道切符だけ。「たらいまわしの旅」が始まったのだ。男性は結局東京で「もやい」に保護された。

稲葉さんは、「伊東市と熱海市に抗議をしたが、言った言わないの繰り返し。事実を認めようとしない。申請の際に証拠写真を撮ったり、レコーダーに録音するのはよくある手段だ。本来なら一人で申請しても受け付けられる社会にしなければならない」と指摘した。

■運動が力を持つために

山野労働者福祉会館活動委員会からの発言者は、今も野宿者が増え続けていると前置きし、「セーフティネットという考え方も重要だが、公的扶助の実現を運動として位置づけていくこと」。「運動として力をため、窓口ではそれを形にしていく。新自由主義で切り捨てられた福祉を、運動を通じて取り戻していくべきだ」と強調した。

「公共性とカメラ」というテーマで、山川宗則さん(Media Champon)と根来祐さん(フリーター全般労組ムービーユニオン)が登壇した。(写真下)

根来さんはこのかんの風潮として、弱者へのバッシングがいっそう強まっているのではないか、と問いかけた。今回の事件について言えば、「生保を申請するほど貧しいのに、なぜカメラを持っているのか。弱者らしくしていろよ」という悪意を含んだ空気だという。山川さんは、家もない、金もないけど携帯だけは、「最後のつながり」として持っている。そしてそれは動画もスチールも撮れる。行政の水際作戦を押し返していく映像の闘いの重要性を訴えた。

■活発な質疑応答

参加者からは、さまざまな質問や核心を突く意見が出された。ある参加者は、「窓口の対応は、なぜそんなにひどいのか」と素朴な質問をぶつけた。稲葉さんは「職員の数が圧倒的に少ない。受理して自分や同僚の仕事が増えることへの抵抗がある。それに国と地方の予算配分がある。生保の予算を地方に押しつけていることが問題」と語った。

また、逮捕した警察のセクションやそのねらいについて。自治体内への警察OBの配置。事件の報道への反論など、さまざまな視点から提起があった。

■横行する微罪、別件逮捕を許すな

勇気を振り絞って行政の窓口を訪れ、生活保護を申請しても、あの手この手で追い返されてしまう。申請者のたった一人の心細さや肩身の狭さにつけこむ悪質で陰湿な「水際作戦」。こうした違法行為が横行するからこそ、申請者はせめて交渉の一部始終を証拠として記録しようと、ささやかな手段を講じるのであり、それは当然の権利の行使と言えないか。ましてや相手は公務員、そして公共の場でのできごとである。

横行する微罪逮捕、別件逮捕もいよいよここまできた。拘留はすでに2ヶ月になろうとしている。Aさんを一日も早く、無罪で奪還しよう。(Y)

※慎重を期し、人物写真に一部修正を加えました。


Created by staff01. Last modified on 2009-12-26 12:04:16 Copyright: Default

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