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2006年9月15日〈再発防止専門〉研修の報告  根津公子

私や河原井さんの再発防止研修に際し、抗議と激励に駆けつけてくださった皆さん、ありがとうございました。40人もの方に見守られ、皆さんのお気持ちを十分にいただいて元気に不当な再発防止研修に臨むことができました。

今日受講させられたのは、午前中が私と高校の教員一人Aさん、午後が河原井さんと高校の教員一人でした。午前中の研修に先立ち、被処分者の会の沢藤弁護士が中止申し入れをしてくれました。「中止を申し入れしたい」「思想信条に踏み込むものではないと確認したい」「憲法を守ると言えないのですか」とたたみ掛ける澤藤弁護士の確認に、研修センター岡村氏は「お答えはできない」と自信なげに消え入るような声で繰り返すばかりでした。 9時少し前、803号室へ。Aさんの部屋は、私のところとはもっとも離れた対角線上に位置する。一番遠い部屋にする理由があるのだろうか。私の部屋の前にもAさんの部屋の前にもにわか仕立ての警備職員がそれぞれにずらーっと立つ。隣同士の部屋にしたら、警備は半分の人数で済むだろうに・・・。朝この建物の前に私が到着した時にすでに玄関前に職員が配備されていたので、その仕事内容を聞くと、「門扉です」。隠し立てのない返事。人間「門扉」や1階、8階のフロアー警備だけでも20〜30人の都教委職員が配置されていたはずだ。こんなことに税金を湯水のごとく浪費する。何を恐れるのか?

9時再発防止研修開始。司会進行は研修センター研修部教育経営課M統括指導主事、説諭・服務指導は同課Y課長、そして記録のS職員。

教育経営課が再発防止研修の直接の担当課なのだろう。M統括指導主事の名前が再発防止研修実施の通知文のトップにあったことを私は、途中で思い出した。

さて、研修はいつものとおり、初めは司会が注意事項を読み上げる。私が「録画・録音の禁止」は「研修効果を高めることと矛盾するのではないか」と言っても、「そう決めている」と説明にはならないことを答えるだけ。毎回大勢の私たちから指摘されているのだから、説得できる答えを用意したらいいのに。そんなことを思いながら、そこは受け流し、説諭・服務指導を聴いた。

説諭・服務指導は、例に従って、「お名前、所属を言ってください」から始まったが、今回は執拗な訊き方はしなかった。70分間の「説諭・服務指導」全般にわたり、昨年のS幸センター企画担当課長のように、「内心内心って何ですか。あなた地方公務員でしょう。それも答えられない?」「内心とか裁判とか、関係ありません」「確認を重ねていくのが研修なんですよ」などという研修の執行停止を請求した地裁決定に抵触するようなことは言わないし、「研修を拒否するつもりか」と脅したり、怒鳴ったりすることは全くなかった。また、予め提出しておいた質問に答える姿勢は十分示した。「繰り返し同一内容の研修を受けさせ、自己の非を認めさせようとするなど・・・違憲違法の問題を生じる可能性がある」(地裁決定)ことを意識した結果なのだろう。受講者当該や周りの人たちが研修の内外で追及し、外に向って明らかにしてきた成果でもあると思った。

初めの方で、「教育をしていく上で一番大事にしてきたことは」と訊かれて私は、「子どものこと。その判断基準は教育基本法にあります。都教委は2001年に憲法・教育基本法を東京都の教育目標から外し、米長教育委員や横山教育長が『東京都は教育基本法を廃止した』などと言いましたがね」と答えた。そうしたら、課長は、「廃止したという文章を見せてほしい」。そんなやり取りの後、説諭・服務指導に。

今回の説諭・服務指導の内容は、1)7月21日の説諭・服務指導の確認と2)課題レポートの中の一つをめぐって。それに、3)課題レポートに私が記述した7月21日の説諭・服務指導を受けての質問5項目についての回答だった。

1)課長は、地方公務員法の30条、32条、35条、33条を読み上げていく。30条、「職務の遂行については全力を挙げて専念すべき」というくだりに来て思わず私は「いつも全力をあげて専念しています。校長、そうは思いませんか」と、隣の校長に訊いた。校長は、「(停職明けの)7月以降、しっかり専念しています」と言った。

2)2003年度、2004年度の懲戒処分件数とその内訳を示し、「資料からその問題点を指摘し、教育公務員として法を守ることに忠実であるべき立場にある教職員が、どのように行動すべきであるのか、あなたの所感をお書きください」という課題について、口頭で訊かれた。

課題に示された懲戒処分の内訳は、「体罰」「交通事故」「わいせつ」「争議行為」「その他」から構成されており、「君が代」処分は件数が突出しているのもかかわらず、「その他」に押し込められていた。私はこのようなくくり方をしたら、問題点が見えなくなることをまず、指摘した。その上で、「反教育的行為には教員としての良心から服従することはできないと考えた教員たちの気持ちが都教委にはわからないのでしょう。私に起立することの教育的意義を説明してほしい。そうしてくれないと、再発しますよ。研修の成果を上げるのが今日の目的なのだから、しっかり説明してください。失礼な言い方かもしれませんが、私に説明をできないあなた方は、指導力不足ですよ」と答えたが、説明はついに聞かせてくれなかった。

3)質問に対する回答。質問と答えです。

  1. 担当者は、32条「法令等及び上司の職務上の命令に従う義務」の説明で、「法令の解釈を色々にしてしまう心配があるが…」と言われました。確かに法令の解釈は、いろいろにしてしまう心配があると思います。法令自体は変わらないのに、例えば『君が代』処分で言えば、不起立をしても東京でも以前は処分になりませんでした。いま現在でも処分をするのは広島県など数県、累積加重処分に至っては東京だけです。法令の解釈をどう変えることによって今の東京の処分になったのですか。処分にならなかった時と、処分になる今との、2つの法令解釈について説明をしてください。

→「懲戒処分は任命権者・都教委の裁量でできる」「裁量ということばは、法令には書いてない。通説となっている」。後日でいいから、通説となる根拠を示してほしいと要求した。

  1. 「上司の職務上の命令」について。「君が代」処分撤回を求める人事委員会審理の校長証人尋問で、高校の校長たちの中に何人か、「本当は起立・伴奏の職務命令を出したくなかった」という趣旨の証言をされました。校長が教育的視点から出したくない、出すべきではない、と思っている職務命令が果たして「正当な職務命令」と言えるのでしょうか。また、「正当な職務命令」とは、何を根拠に、どの機関が判断するのですか。

→「高校の校長たちの中にこういう証言があったのは、チラシで知っている。証言録は見ていない」「都教委が正当だと判断した職務命令は正当か」と訊いたら、「絶対とは言えない。違うと思ったら、裁判で(どうぞ)。私は、都教委で判断したものだから、正当だと思う」。

  1. 信用失墜行為の禁止について。昨年の東京、朝日新聞調査によると、東京の「君が代」処分をおかしいと思う都民は6〜70%でした。それでも、不起立が信用失墜行為となるのですか。信用失墜行為の要件を満たすもの、基準は何ですか。

→「答える立場にない」と言うので、その新聞を見たことがあるかを確かめたら、「見ていない」ということだった。それこそ、都教委の独りよがり。「職務怠慢だと思います。都民の声を把握して教育行政に活かすのは、都教委の職務でしょう」と感想を述べた。

  1. 同じく信用失墜行為について。噂されている米長教育委員のセクハラ・破廉恥行為は信用失墜行為に該当しないのですか。またその理由は、何ですか。教育委員が一般職ではないからですか。

→「答える立場ではない」。

  1. 職務命令が正当であるための要件の一つとして、「実行可能な職務命令であること。犯罪を命じることはできない」と担当者は言われました。職務命令を発した校長には犯罪に繋がる認識はなくとも、発せられた職員には、その職務命令が犯罪に繋がる認識がある場合、その職務命令は有効ですか、無効ですか(私には「君が代」起立が戦争犯罪に繋がる認識があります)。

→「外形的には有効です。もし無効と言われるんでしたら、争うということです」。「私は外形的にどうかを訊いてはいません。『君が代』起立が戦争犯罪に繋がる認識がある私にはどうしても職務命令に従えない。それでもその職務命令は有効かと訊いているんです」と言うと課長は、「個人的には先生の認識は理解できない」ということだった。

  「今日の説諭・服務指導もまた、私には『君が代』起立の職務命令が正当であると理解することには全くならなかった。それは、私の能力不足が原因ですか」と訊くと課長は、「いいえ、違います」と言う。起立することの教育的意義が全く語られないことには、一歩も進まないことを告げ、今日回答のなかったことについては後日の回答を要求して、実績のない説諭・服務指導が終了。

その後、報告書の作成。次のように書いた。

「不当な懲罰研修であると思いながらも勤務時間であるので、私は本研修に全力で望んだ。Y講師の話を一言一句聞き逃さないよう、メモをとりながらしっかり聞き、その上で、理解できないことを質問した。しかし、Y講師は、これまで5回私が受講させられた時の担当講師と同じように、内容については私が理解できるように説明をしてはくれなかった。従って、今日の研修成果はまったくなし。講師からは、「答える立場ではない」「そのことについては知らない。わからない」という回答が多かった。「知らない。わからない」という点については、資料に当たり、後日私に回答をしていただきたい。そうしないと受講者である私の認識は変わらず、研修成果はゼロ、となってしまう。これは、都教委等そちらにとっても仕事の実績なし、となってしまい、避けねばならぬところだと思う。

 都教委及び研修センターが私に最も理解させなければならないのは、ことの出発点である、君が代斉唱(あるいは、「日の丸・君が代」の実施)の教育的意義についてである。懲戒処分や再発防止研修などの暴力をもって私の教員としての良心を転向させることは不可能である」。


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