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朴元淳のソウル市、本当に「女性親和的」だったか

[イシュー]ソウル市セクハラ・性暴力関連制度およびソウル市女性雇用を調べる

パク・タソル記者 2020.07.28 07:17

2011年10月26日、ソウル特別市長補欠選挙に当選した朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長は、 民選5期からソウル市長職を遂行した。 朴前市長はその後、ひきつづき民選6期(2014年)、民選7期(2018年)再選に成功して大統領選候補としての地位を固めた。 ソウル市は朴元淳市長の在任期間に大挙して女性関連政策を出した。 職場内セクハラと性暴力を扱うマニュアルは整備が続き、 加害者に対する非寛容原則を明言して注目をあびた。 ソウル市の政策ビジョンには常に「女性雇用」が含まれた。 ソウル市は地方自治体で最初に性別賃金格差解消のためのガイドラインを作り、 女性のための公共雇用を大幅に増やした。 果たして女性親和的政策を強調した朴元淳市長のソウル市は 本当に女性親和的だったのだろうか。 「ワーカーズ」がソウル市のセクハラ・性暴力関連の対策と女性雇用政策を調べた。

ソウル市、性暴力関連の制度だけはぎっしり

今年の5月、ソウル市女性家族政策室は 「ソウル市セクハラ・性暴力防止再発防止総合対策」を発表した。 「コロナ事態で厳重な時期に、 ソウル市職員の続くセクハラ・性暴力事件の発生で市政のイメージが大きく失墜」 したという問題意識による措置だった。 4月の総選挙の前日、ソウル市長秘書室所属の男性職員が女性職員に性暴行した事件が契機になった。 ソウル市は総合対策で性暴力事件が発生した時は、 温情主義で事件が隠蔽、縮小される誤った慣行があると指摘した。 また、事件が警察など外部に申告された時の迅速かつ適切な措置が不十分だともした。

まず、ソウル市は職場内セクハラ・性暴力予防および事件処理の過程で 管理者の役割を強化した。 眼につくのはセクハラ・性暴力事件の加害者に対する厳重処罰のシグナルだ。 これまでソウル市はセクハラ・性暴力行為者の処罰を強化し続けてきた。 2015年に「ソウル市セクハラ予防指針」を改正し、 機関長の責務でセクハラ加害者に対する「非寛容人事原則」を明言した。 セクハラ事件を隠したり、被害者に勤労権・学習権などに不利益を与える いわゆる2次加害者に対しても厳重に懲戒するという文句も追加された。 セクハラなどを犯した行為者が依願免職しないようにする規定をおくという原則も新設した。 加害者がソウル市の事件処理でも、懲戒手順を取らず自主的に辞めることを防ぐためだった。 セクハラ・性暴力加害者が退社で事件を揉み消すことを源泉遮断するためのそれなりの目が細かい設計だった。

今年はセクハラ・性暴力行為者の処罰をさらに強化する計画をたてた。 5月に出された総合対策計画によれば、 性暴力事件の発生を認知すれば直ちに加害者は職務から排除される。 警察などの外部機関に申告、告訴された性犯罪事件行為者は職位解除される。 また、セクハラ・性暴力加害事実が一度でもあれば、 勤務評価を調整して事実上、昇進から排除するようにした。 住居生活安定支援、研修院利用などの厚生福祉恩恵も受けられないようにした。

同時に被害者保護措置はさらに強化された。 事件を隠したり、被害者に不利益措置に該当する追加被害が発生した場合、 関連者も行為者に準じて懲戒し、部署長は問責する内容が追加された。 被害者の心理相談および医療支援は年間最大50万ウォンから100万ウォンに拡大した。 ソウル市は70ページ以上の「ソウル市セクハラ・性暴力事件処理マニュアル」も持っていた。 該当マニュアルは2018年に作られて昨年改正された。 ソウル市の職場内性暴力事件処理制度は 「被害者人権保護」に焦点を合わせられており、 他の地方自治体より先進的だと評価された。

ソウル市によれば、最近5年間に苦情審議委員会で処理した性暴力事件は合計26件。 類型別にはセクハラが21件、性暴力が2件、2次被害が3件だった。 加害者の年齢は50代以上が20件で、全体の77%を占めた。 ソウル市は再発防止対策を用意して 「事件が発生した時、管理・監督の主体である管理者の迅速で適切な措置確実履行」を提示したが、 管理者がほとんど中年男性だという事情を考慮すると、 このような措置に果たして実効性があったのかは未知数だ。

実際に今回発生した「ソウル市長による威力性暴力事件」では、きめ細かい制度は効果がなかった。 7月22日に開かれた2次記者会見によれば、 被害者は4年を超える間、20人近い前・現職秘書官に苦痛と配転要請を訴えた。 ソウル市のシステムによれば、部署長が面談の過程でセクハラ事件を認知すれば、 被害者の意思を確認してセクハラ苦情相談員(女性政策担当官) または市民人権保護官(人権担当官)に相談申請および被害者との面談内容を共有し、 初期対応方法や被害者に対する措置を協議しなければならない。 行為者を代弁する言辞も述べてはならない。 しかし彼らは被害者に 「残った30年間の公務員生活を気楽にできるようにするから、また秘書にきてくれ」、 「かわいかったからだろう」、「(人事異動に関しては)市長から直接許諾を受けろ」 などと話して続く醜行を幇助した。 5月に出されたソウル市の政策によれば、 事件を幇助すれば成果評価減点、成果年俸等級下降などの懲戒がなされなければならない。 現在、警察は彼らの強制醜行幇助についても捜査中だ。 朴元淳事件被害者の弁護人は 「結果として被害者が醜行の被害を受け続けることになった点などが認められれば、 醜行幇助容疑も認められる」と判断した。

これと同時に調べたアンケート調査は、ソウル市女性家族政策室が昨年3月に発表した 「18年ソウル市公務員-職場内性平等およびセクハラ実態調査結果報告」だ [1] 。 ソウル市は、セクハラ・性暴力に対する予防措置と事件処理、再発防止対策などを きめ細かく整備したが、 実際にソウル市の公務員はソウル市の対策をあまり体験できなかった。 女性公務員の応答からは無気力感も伺えた。

このアンケート調査によれば、最近5年間ソウル市で処理された26件の性暴力事件の他にも、 さらに多くの事件が水面下あることが分かる。 同僚がセクハラされるのを見たり聞いたというセクハラ経験の有無についての質問に、 女性職員は37.9%が、男性職員は10.6%が「そうだ(ある)」と答えた。 事件の進行は被害者ががまんする(66.1%)場合が最も多く、 職場のセクハラ苦情処理専門担当窓口などに公式に問題を提起したという回答は8.3%に終わった。

組織構成員の性平等意識に対する応答も注目に値する。 性別固定観念を調べる質問に、 性別固定観念がないと解釈される「いいえ」という回答は、 女性職員より男性職員が多かった。

こうした結果はまさに男性職員が性役割に対する固定観念が大きくなかったということだが、 実際には女性職員の「学習された無気力」が反映されている。 女性職員は組織内のセクハラ事件の処理過程が不適切だったことを目撃し続け、 組織が特定の性別を好んだり、特定の性別を進入できないように防ぐことを経験した。 これに伴い、組織に対する期待がしぼみ、無気力状態に陥ったということだ。

実際に多くの女性職員は職場内の性差別が消えていないと答えた。 職場での性差別はすでに消えたので、男女平等の主張には現実性がないという質問に 「いいえ」と答えた割合は女性職員(83.9%)で男性職員(47.7%)よりはるかに多かった。

女性職員は「現在在職中の職場でセクハラ事件が発生すれば、 社内で適切な処理をすると考えるかどうか」に33.4%だけが 「はい」と答えたが、男性職員は74.6%が「はい」と答えた。

また多くの女性職員は 「セクハラを問題にすると職場内の人間関係悪化、業務排除など、 結局被害者だけが損をする」という考えを共有した。 この質問に女性職員の74.6%が「はい」と答えた。 同じ回答をした男性職員は24.9%に過ぎなかった。 女性職員は組織内性平等の雰囲気、性暴力事件処理に対する期待が 男性より顕著に少なかった。

労組に助力けを要請する事例も少なかった。 全国公務員労組ソウル市庁支部のオ・ジョンファン支部長は 「これまでセクハラ、性暴力に関して労組に入ってきた申告はほとんど何もない。 組合員であれ、非組合員であれ、職員の信頼を得らないことを反省している」と話した。 続いて「公職社会の硬直した文化、この中で絶対に身上を露出したくない被害者の思いを尊重して、 労働組合がもう少し慎重に接近して積極的に事件解決に動くシステムを作りたい」と明らかにした。

全国公務員労働組合ソウル地域本部のパク・チニ性平等委員長も 「性暴力予防のための制度は多いが、 実際に被害者の立場としては問題解決が難しい構造だと考える。 一番恐ろしいのは2次加害なのに周囲の人に助けてもらうのが難しい。 労組が一定部分役割を果たすべきだが、労組も信頼されなかった」と話した。

120タサン・コールセンター女性労働者は「悪い社長」を記憶する

専門家によれば、職場内性暴力を防ぐには性差別の根絶と平等の向上が重要だと誰もが話す。 性暴力教育も重要だが、労働市場で発生する性差別に全面的に対応しろという注文だ。 労働市場の中で女性は低賃金、非正規職、周辺的業務などの差別的な条件に追いやられ、 これが重層的に連結して性差別的、性暴力的文化を作っているためだ。

朴元淳前市長は 労働市場の中で性平等労働政策を悩み、政策も作った。 ソウル市は女性雇用・労働関連民選5.5期には「女性の人生を変えるソウル」、 民選6期には「村を生かし、ソウルを生かす女性の暮らし雇用」、 民選7期には「働きやすい性平等都市ソウル」を政策ビジョンとして提示した。 変化ごとに意味がある。 民選7期には核心課題として性別賃金格差改善等による性平等労働環境造成を標榜し、 性平等労働政策推進を公式化した。 地方自治体で最初に「性平等賃金公示制」の導入を準備した。 ソウル市の23の投資・支援機関に性別、雇用形態別賃金情報を義務化するシステムだ。

また、朴元淳市長は任期前から 「非正規職の正規職化」を主要公約にしてきた。 2012年に発表した「女性の人生を変えるソウル ビジョン」にもこうした内容が入れられた。 2012年3月6日、ソウル市は66万人にのぼるソウル地域非正規職女性労働者の正規職化を牽引するためにも、 非正規職2900人をすべて正規職化すると明らかにした。 当時、ソウル市と投資・支援機関などで常時持続的な業務に従事する区分非正規職2900人のうち女性は60%に達した。 ソウル市の発表にマスコミは「ソウル市の女性の人生が変わる」と大げさに騒いだが、 転換の結果は今でも正確には分からない。

だが労働者が期待していた正規職化とは距離が遠かったことだけは確実だ。 ソウル市の非正規職の正規職化政策は、子会社を作って無期契約職に転換する、 別名「名ばかり正規職」だという批判を受けた。 ソウル市は2012年から5年間、非正規職1万人の正規職転換を実現したというが、 直接雇用無期契約職転換が1496人、 間接雇用無期契約職転換が7602人(生命安全業務788人)で、 「本当の正規職」はごく少数に終わった。

この過程で、ほとんどが女性労働者の120タサン・コールセンターは、 ソウル市の対策から除外され、闘争に立ち上がった後に無期契約職に転換された。 ソウル市の120タサン・コールセンターは、 公共機関のコールセンター正規職化の初の事例で、 ソウル市の非正規職正規職転換政策の肯定的な事例だとしばしば言及される。 だが、この過程はたやすいものではなかった。 3か所の民間業者に所属しソウル市に間接雇用されていたコールセンターの労働者は、 ソウル市が実質的な使用者であることを主張して 劣悪な労働環境と労働人権侵害環境などを直接雇用に変えようとして戦った。 希望連帯労働組合タサン・コールセンター支部の組合員は、 2012年の労働組合結成と同時に直接雇用闘争を展開した。 この過程でストライキ、支部長断髪、ソウル市庁前無期限ハンスト座り込みなどを行い、 結局2017年5月に約430人の労働者が子会社無期契約職に転換された。

当時、多くの専門家はソウル市に対するタサン・コールセンターの闘争を 「女性、感情労働、間接雇用、非正規労働、低賃金労働に対する差別問題」と説明した。 韓国労働社会研究所のキム・ジョンジン研究員は、 ソウル市が彼女らを直接雇用すべきだと主張して 「タサン・コールセンターの相談員のほとんどが女性である点を考慮すれば、 初期のセッティングと民間委託雇用構造という(ソウル市の)政策判断は 『女性、感情労働、低賃金、間接雇用労働市場解決』を無視した 間接差別と見ることもできる」と説明した [2]

安く多い公共部門雇用が来ました

公共型雇用創出事業は女性に働く機会を提供するという面で重要な事業だ。 ソウル市は2014年に女性雇用10万創出を核心目標としてたてた。 これに伴いソウル市の公共雇用に支援した女性の数も 2011年の2475人から2017年には1万2421人へと5倍に増えた。

具体的に見ると2017年基準、社会サービス雇用で安全とケア分野12事業の1万1778人に雇用を支援した。 ニューディール雇用で安全とケア、そして地域社会活性化分野10の事業では、 643人に雇用を支援した。 このうち正規職は社会サービス公共雇用の国公立保育園拡充人員、 民間児童養育施設保育社人員1268人だけ(10.2%)だ。 残りの雇用は時間選択制の雇用だ。

これまで労働界では時間選択制雇用が女性差別的雇用だと批判してきた。 時間選択制雇用は李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権が 経歴断絶女性を就職市場に引き込むために無分別に増やした雇用だ。 以前の政府は経歴断絶女性をターゲットとして時間制労働の必要性を強調したが、 時間制労働は女性労働権伸長とは全く無関係だった。 2014年3.8女性の日の女性労働者大会の一番のキャッチフレーズが 「女性を中途半端な労働者に追いやる時間制雇用を中断しろ」でもあった。 時間制雇用の拡散が正規職非正規職間賃金格差と労働市場不平等をむしろ深化させることが明らかになり、 現場では時間選択制雇用によって 「職務、賃金、訓練、昇進など労働条件での差別」と 「組織内人間関係で分離した集団として存在し、周辺化される」問題を経験した。

ソウル市はこのような批判にもかかわらず時間選択制雇用を大幅に増やした。 ソウル市雇用労働政策官さえ 「社会サービスが集中した女性特化雇用の時給は最低賃金より高い水準だが、 全直接雇用より勤労時間および日数が少なく、四大保険加入率は低く、 適正労働条件についての検討が必要」だという意見を提示した [3]

女性公共雇用として提示されたニューディール雇用の場合、 ソウル型生活賃金が適用されるが、 社会サービス時間制雇用はこれよりも賃金水準が悪かった。 2017年のソウル型生活賃金は時給8197ウォンだが、 女性安心帰宅スカウト事業の場合、時給が7530ウォンに策定され (夜間50%加算時1万1300ウォン)、 交通費は1日5000ウォンが支払われた。 月平均給与は約69万ウォンにしかならない。 ソウル市女性家族財団は 「公共型雇用は女性の現実的な負担を考慮して 働く機会も提供するという点で意味があるが、 十分な経済的補償を得ることは難しく、 雇用の展望も明るくない場合がほとんどだ。 このような雇用で女性個人の二重負担を多少減らすとしても、 性不平等現実を改善するのは難しい [4] 」と評価した。

脚注

[1] 該当の質問は2018年10月25日から同じ年11月15日までオンラインで調査された。 調査対象は本庁・事業所・自治区の公務員6810人で、 このうち男性は3475人(51%)、女性は3335人(49%)だった。 回答者のうち50代以上(32.5%)、自治区職員(71.7%)、6級以下職員(94.2%)、 10年以上勤務者(45.8%)の応答割合が高かった。

[2] 〈ソウル市120タサン・コールセンター雇用性格と感情労働問題どう見るべきか?〉討論会、2013.

[3] 〈ソウル市性平等労働政策基本計画樹立研究〉、ソウル市女性家族財団、2019.

[4] 〈ソウル市性平等労働政策基本計画樹立研究〉、ソウル市女性家族財団、2019

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-07-29 11:05:55 / Last modified on 2020-07-29 11:05:56 Copyright: Default

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