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韓国:機械のような世の中には生命がない
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機械のような世の中には生命がない

[連続寄稿]われわれはふくろうではない(1)

オ・ドヨプ(作家) 2011.08.08 08:26

「われわれはふくろうではないといいます。夜には眠りたいです」。

夜には眠りたい? この人間の当たり前な声をあげた人々が、まるで破廉恥犯に なったかのようです。自身の職場から追い出され、用役警備に殴られ、監獄に 行き、食を断たなければならず。

皆さんは機械のような世の中を望んでいるのですか? さもなくば人が人間らし く暮らせる世の中を望んでいるのですか? あるいは人間らしく生きる世の中を 探したければ、少し耳を傾けるべき人々の叫びがあります。韓国自動車産業の 『テロリスト』になってしまったユソン企業労働者の声です。

機械は一日24時間365日を休まず動くるのに、万物の霊長という『人間』がなぜ 機械もしない夜に寝ようとするのか! この言葉が正しいのなら、ここで文を止 めます。だが人間は機械ではありません。鉄でできたロボットではないのです。

人は自然に似ています。日が昇れば伸びをして、日が沈めば睡眠に入ります。 労働する人間を照らすため、昼に日が昇るのです。夜には疲れた労働をなだめ るように星の光が落ち、眠った人間を抱いてやろうと月がのぼります。

昼には人間が自身のからだの外の事物と対話します。夜には外に向かっていた 人間のからだを自身の内面に戻らせます。

私は日記を夜に書きます。世の中に出て行って、対話した『私』をからだの中 に入れさせます。私を振り返り、明日を新しく描きます。ラブレターも夜に書 くと切切とします。理性に支配される昼の空間では思いつかなかった、からだ 中に充満した感性が、始めてからだの外に噴出する時間だからです。もちろん 夜に書いたラブレターを日が昇った朝に読めば、理性の支配が強まって、ポス トに入れられません。送れなかった手紙を何通か胸に抱いて一生懐かしんで 生きていく理由がここにあります。

労働をする時は、感性が先んじてはいけません。特に理性も感性も、血も涙も ない機械と一緒にする労働なら、さらに人間の理性を集中させなければなりま せん。昼間の労働と違い、夜の労働は送れなかったラブレターのように不良品 を作り出す可能性が高いのです。夜昼がひっくり返った労働は、昼間の労働に 集中する時より生産量も落ちます。昼間の労働と同じように夜の労働に人間の 理性を消耗すれば、からだのバランスが崩れます。夜間労働をする人々が、 さまざまな疾患に苦しみ突然死で生命を失うことが多い理由です。

「私たちの希望はちっぽけです。夜には家族と共に眠り、昼に働こうという、 極めて平凡な要求でした。夜間労働の一週間を終えて退勤バスに乗った同僚が 車で眠りました。ユソン企業で15年働いた労働者でした。起きろと起こしたの に、家の前だからおりろと起こしたのに、起きません(言葉を忘れられず、時間 を遡って涙を流す)。すでに心臓が止まっていました。28歳の職場の後輩も、 夜間勤務を終えて家に帰って寝て、突然痛みを訴えて倒れました。それで深夜 勤務をなくして、昼間連続二交代制に変えようと要求したのです」。

真夏の太陽の光に真っ黒に焼けたあるユソン企業労働者の話です。今ほど たくさん太陽を見たことがないとし苦々しく笑います。

ユソン企業労働者の要求は『夜には眠らせてくれ!』の前に、『死なずに働こう!』 ではないでしょうか。機械になってしまった労働者の『人間宣言』ではないでしょ うか。この当然の要求が殴られ、頭が陥没し、監獄に行き、職場から追い出される 理由になるでしょうか?

昼間に働こうという要求も、生きたいという絶叫も、しばらくは止めました。 自分の体は壊れても、家族の生計がかかる職場に帰りたいとユソン企業労働者 は要求します。会社の職場閉鎖(2時間部分ストに対し、会社は直ちに職場閉鎖 をして、労働者を工場の外に追いやった)で、意外に長引いているストライキを 撤回するから愛する子供達がちゃんと食べて勉強できるように、工場で働かせて くれと要求します。

だが企業の防御権で行われた『職場閉鎖』が労働者の生存を威嚇する『攻撃権』 になりました。ストライキを撤回てから1か月が越えても、相変らず『職場閉鎖』 は続きます。部品の生産に支障云々し、とんでもない『年俸七千万ウォン』云々 し、労働者を非難した会社が生産をするという労働者を妨害しています。これ は元請企業の現代自動車が介入しなくては有り得ないという主張が流れていま す(現代自動車購買担当理事の車両から『ユソン企業不法ストライキ対応方案』 という文書が発見された。昼間連続二交代制は現代、起亜自動車労働者の主な 要求でもある)。

ユソン企業労働者の『夜には眠りたい』という要求が間違っているのなら、そ の誤りに対して正当な手順を取り、懲戒をするなり刑事処分をすればいいので す。今まで自分の生命を奪う深夜労働を10年以上もしてきた彼らの職場を奪い、 次は家族の生計まで威嚇していいのですか?

ユソン企業代表様に望みます。涙を流してひざまずく心情で切実に望みます。 お願いですから職場閉鎖を解いて道路で風餐露宿する労働者に職場を戻して下 さい。それは企業家の倫理という前に、『人間、その最低限の礼儀』です(会社 は労働者の真正性が疑わしいから工場の扉を開かないと言いますが、真正性は 真正性を持った人だけに見えるのです)。

市民の皆さんにも望みます。ユソン企業労働者の問題は、労使関係や労使対立 の問題ではありません。彼らの要求は『人間、その最低限の望み』です。この 要求に耳を傾けて、小さな力を貸して下さい。

機械のような世の中には生命がありません。昼夜を失った鶏の卵は有精卵には なりません。孵化できない、生命のない機械が作った生産品と違いません。昼 夜を失った労働者も同じです。ユソン企業労働者の要求は人になりたい、殻を 破って孵化し、生命になろうとする極めて当然の本能です。働き、愛し、笑い、 泣ける、生命で充満した世の中を夢見るすべての人間の望みです。

夜を奪われた彼らに夜を返して、機械に閉じ込められた人、いや機械に閉じ込 められた世の中を救うために、弱い物書きの気持を補います。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-08-09 09:29:25 / Last modified on 2011-08-09 09:29:29 Copyright: Default

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