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「錦湖タイヤ、投機屋だけが、いい暮らし」

錦湖タイヤ構造調整事態の真実と労働者の対応方向

ハン・ジウォン(労働者運動研究所(準))/ 2010年03月09日10時49分

錦湖タイヤ資本は結局、3月3日、1199人の構造調整計画を労働庁に提出した。 193人を整理解雇し、1006人を下請け業者に送るのが主な内容だ。金属労組錦湖 タイヤ支会は、整理解雇ではなく大幅な賃金削減を認める妥協案を使用者側に 提示したが、使用者側はこれを言下に拒否して整理解雇を押し通している。

事実、資本の立場では労組の譲歩案はあまり好ましくなかった。使用者側の計 算は簡単だ。09年より営業利益を2000億程度増やすために費用と売り上げの数 字を合わせたのだ。

使用者側の計算は、全生産職の25%規模にのぼる人材調整と、40%近い賃金削減 により年間約1000億から1500億ウォン程度の労働費用を削減し、景気回復で売 り上げを20〜30%増やせば、今年は昨年より2000億程度の追加利益をあげられる ということだ。2009年に約2千億ウォン規模の営業損失を記録したことを考える と、2010年には小さな水準でも営業利益を出せるということだ。

▲汝矣島産業銀行の前で集会を開く錦湖タイヤ労働者[出処:金属労働者]

錦湖タイヤ資本が3月から全力で構造調整を敢行するのは、隠れた理由がある。 現在、錦湖タイヤのパク・サムグ会長の株式は全量が担保にとらえられている 状態で、事実上メインバンクの産業銀行がパク・サムグ会長の人事権者だが、 パク・サムグ会長は産業銀行とは違う債権者に企業収益を増やし、債務を償還 するという強い意志を送ることで経営権を維持できるというのがその隠された 理由だ。今回の構造調整計画は、その最初の信号なのだ。

コーナーに追い込まれたのは労働組合でなく債権団とパク・サムグ会長

現在、金属労組錦湖タイヤ支会労働組合は、8日と9日の争議行為賛否投票を経 て、3月中下旬からストライキ闘争に突入する計画だが、執行部は前の譲歩案で 見られるように、ストライキ闘争の意志より譲歩による妥協に相変らず重さを 置いているようだ。だが、パク・サムグ会長の頭の中には労働者への妥協は全 く存在しない。今彼の頭の中には債権団が委任した経営権を維持し、さらにま たグループの所有権を取り戻す術策しか存在しない。

錦湖タイヤの労働者に必要なのは、強い団結と断固たるストライキだ。債権金 融機関と債務企業の間の債務調整の過程であるウォークアウトの過程で、金融 機関は労組に構造調整合意書を要求しているが、現在苦しいのは借金を返して もらわなければならない金融機関と、経営権を確保するために金融機関のご機 嫌を取らなければならないパク・サムグ会長だ。

最悪の状況で錦湖タイヤが不渡り後に法定管理に行っても、労働者の立場では、 もう失うものはない。法定管理人が回復計画を出しても全体労働者の4分の1を 解雇し、40%近く賃金を削減する構造調整案より悪い案を提出するのは容易では ない。構造調整が進まず、債権団が不渡り処理の手続きに入れば、結局今より 悪くなるのは経営権を失うパク・サムグ会長だけだ。すでにほとんどの工場が 稼動率90%以上を回復した状況、6.2地方選挙を前に光州、全南地域雇用問題を いいかげんに扱えないという政治的条件も労働組合に有利だ。

労働者を犠牲にして錦湖を取り戻そうとする朴氏一家の術策

錦湖タイヤ労働者の生存権の問題とともに、今回の闘争は金属労組が今後、産 別労組として闘うべき方向を提示できるという点でも重要だ。錦湖タイヤの不 振は投機的な金融資本と財閥オーナーが、いかに企業と国の経済を亡ぼすかを 示す代表的な事例だからだ。金属労組が産業政策を語る時、21世紀韓国の資本 主義の二本の軸である財閥と超国籍金融資本を迂回できない。

錦湖タイヤの不良は、売り上げの減少による営業損失として出てきたが、不良 の根本的な原因は2006年に錦湖グループが大宇建設を買収したことに始まった。 錦湖グループは約6兆ウォン近い大宇建設を買収するためにグループ系列会社の 資金を総動員した。錦湖産業が1兆7千億、錦湖タイヤが4500億、アシアナ航空 が2600億を投資し、錦湖グループ内で3兆ウォン程度を作り、後の3兆ウォンは 財務的な投資家と呼ばれる国内外の私募ファンドの資金を動員した。買収価格 の50%程度しか用意せず、あとは借金で満たしたのだ。

無理な企業買収は、いろいろな部分で問題を発生させた。まず錦湖産業、錦湖 タイヤなどは無理な資金動員で負債規模が2005年以後急増し、毎年の利子負担 と資金償還の圧迫を受けることになった。錦湖タイヤの利子費用は2005年400億 規模だったが、2008年には1540億と急増した。2008年営業利益が362億であるこ とを参酌すれば、その年にタイヤを生産して稼いだ金の4倍もの金を金融機関に 利子として支払ったのだ。負債の割合も急増し、錦湖タイヤは2005年128%程度 だった負債の割合が、2009年には1085%になった。

こうした財務構造の悪化が企業経営全体に影響を及ぼしたのは言うまでもない。 2006年以後、国内の生産工場への設備投資が急減し、2005年には8200億規模だっ た設備資産は、2008年には6700億ウォン規模と、20%近く減った。2006年テンジ ン、2007年長春、2008年南京とベトナムの工場が次々と稼動に入った理由もあ るが、財務構造の悪化で企業全体で投資の余力が非常に不足したことも重要な 理由だ。

一方、大宇建設を買収した時に3兆ウォンほどを投資した金融資本は、騒がしい 動きと比べて、事実あまり損害をこうっていない。財務的投資家(FI)と呼ばれ る彼らは事実、企業ハントにより売買差益を専門に狙う金融投機屋だ。今回の 大宇建設買収に参加したミレエセンメプス、ペンジアデカなど18の財務的投資 家のほとんどは私募ファンド(PEF)で、公的な監視を受けないばかりか、ファン ドの資金がどこから出ているのかも分からない投機資本だ。彼らが投資した3兆 ウォンは株式投資の形だが、売却時点の株価が目標値に至らなければ錦湖産業 がその差益を保全することで株式維持オプションが付いた社債に近い。

錦湖グループが償還できない3兆ウォンのフットバックオプションは、産業銀行 が錦湖産業と大宇建設を買って払う。産業銀行がこれらの投機屋と合意した事 項は、錦湖産業が約束した1株32500ウォンのフットバックオプションのうち 18000ウォンは現金で払い、後の元金8200ウォンは錦湖産業などの持株で、そし て利子の6300ウォンは1.7対1の割合で債権に転換する。つまりこれらの投機屋 が2006年に26200ウォンを投資して失ったのは、わずかな利子が全てだ。政府と 錦湖資本は、錦湖グループの多くの労働者を解雇しようとしているが、まさに 大宇建設買収ゲームに参加した投機屋には楽な暮らしを保障している。

投機舞台の主人公だった錦湖グループの朴氏一家は、錦湖産業、大宇建設、ア シアナ航空、大韓通運は失ったが、錦湖石油化学と錦湖タイヤの経営権を保証 され、一部の財産を取った。彼らが錦湖グループを維持した一軸である錦湖石 油化学株式は、産業銀行に担保として提供されていた。以後、債務者の出資転 換水準により減資があるかもしれないが、パク・チャング(創業者4男)とパク・ チョルワン(創業者2男息子)は錦湖石油化学、パク・サムグ(創業者3男)は錦湖 タイヤの経営権を当分保証され、債務償還で株式を返してもらう余地もある。

結局、数兆ウォンの損失は回り回って、労働者の役割になった。産業銀行が財 務的投資家と呼ばれる投機屋に払う金は、産業銀行が錦湖産業、アシアナ、大 韓通運の大規模な構造調整で作り出す金だ。朴氏一家は自分たちの株式を取り 戻すために、錦湖石油化学と錦湖タイヤで高強度構造調整を計画している。さ らに少ない賃金を払い労働者を搾取した利益、さらに少ない人員で高い労働強 度により作り出す利益が朴氏一家と金融投機者などのポケットに入る金の源泉だ。

パク・サムグ経営陣退出、錦湖グループ持分清算、正規職/非正規職総雇用保障!

労働組合はまず、パク・サムグ会長と現主要経営陣の退出を要求すべきだ。前 述のように、パク・サムグとその経営陣は、長期的な企業の発展ではなく、た だ担保株式を取り戻す純利益の確保だけに熱を上げているのは明らかなためだ。 現経営陣をそのままにして置く以上、労働者は毎年大規模な構造調整に追い出 されるほかはない。

道義的な次元でも、現在の錦湖グループの不良を作り出した経営陣は当然責任 を取らなければならない。錦湖グループは2006年の大宇建設買収、2008年の大 韓通運買収を断行し、急激に経営が悪化し、結局現在の錦湖事態が発生した。 さらに昨年の兄弟間で起きた経営権紛争は、市場の信頼まで失なわせ、流動性 危機事態を起こした。

また労働組合がその後も雇用に関する圧迫から脱するには、パク・サムグ一家 の経営権だけでなく、株式も清算しなければならない。そのために、現在朴氏 一家が錦湖タイヤを支配している所有構造の錦湖石油化学と錦湖タイヤの持株 関係を清算しなければならない。現在、錦湖タイヤの大株主は錦湖石油化学で、 全株式の47%を持っていて、錦湖石油化学は朴氏一家が40%を所有している。朴 氏一家は錦湖石油化学を通して錦湖タイヤを所有している。

現在まで、マスコミを通じて明らかになったことによれば、産業銀行は錦湖グ ループから錦湖石油化学と錦湖タイヤを切り離すものと見られる。錦湖グルー プは大きく産業銀行私募ファンドが所有する錦湖産業-大宇建設と朴氏一家が所 有する錦湖石油化学-錦湖タイヤに分れ、アシアナ航空と大韓通運はまだ処理の 方向がわからない。

ところが問題は、錦湖タイヤ労働者の生存権に直結する錦湖タイヤの持分は、 現在産業銀行が別に手をつけていないということだ。市場の一部では朴氏兄弟 の合意でパク・サムグ家族が持つ錦湖石油化学持分を錦湖石油化学が所有する 錦湖タイヤの株式と交換し、錦湖タイヤの株式のほとんどをパク・サムグ一家 が所有するようになるという展望もある。ただ現在、朴氏一家の株式はほとん どが担保になっている状況で、時間をかけて進められるという予測が多い。

錦湖タイヤ労働組合は、朴氏一家の投機的な態度で発生した損失の責任を問い、 朴氏一家の株式すべてを錦湖タイヤに無償で出資するよう要求すべきだ。各種 の循環出資により、錦湖グループを支配する朴氏一家の支配権そのものが当初 の問題だったのはもちろん、彼らが錦湖グループ企業と労働者に及ぼした有形 無形の被害は、彼らの私財より大きくはあっても小さくはない。労働組合は、 メインバンクの産業銀行、ウリ銀行と現経営陣を圧迫し、錦湖石油化学を通じ て所有権を維持する朴氏一家の株式を清算させなければならない。

もちろんこれらのすべての闘争は、錦湖タイヤ労働者の団結した闘争で現在の 賃金カット、整理解雇要求をはね除けることから始まる。俗称死んだ者、生き ている者に分類される解雇者・非解雇者の団結から、正規職非正規職の団結、 労働組合と地域社会運動の団結は必須だ。労働者自身も団結できず、パク・サ ムグ会長が死活をかけて進める構造調整計画を逆に戻すことはできない。労働 者と同じぐらいに資本側も必死だ。

労働者たちがストライキ闘争をすれば、政府、債権団、使用者側は不渡りで脅 しても、労働組合を圧迫するだろう。だが前にも話したように、不渡りでさら に損をするのは債権団と使用者側だ。不渡り、法定管理になっても労働組合が 死即生の覚悟で労働権を守れば、結局降参するのは使用者側と債権団だ。経済 的に、政治的に、労働組合が脅迫に振り回される理由はない。使用者側の構造 調整案は、労働者にパク・サムグのために死ねという言葉と同じであり、非解 雇者にも死ぬほど働いて近い将来会社を出て行けという暗示だ。

今、労働組合に必要なのは、後ろを振り返らない断固たる闘争だけだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-03-13 15:27:19 / Last modified on 2010-03-14 03:28:46 Copyright: Default

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