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公企業の先進化に翼を付けた「必須維持業務」

公共部門労働者スト無力化1等功労者、「一気にやらなければストはできない」

イ・コンマム記者 iliberty@jinbo.net / 2008年11月21日16時02分

李明博大統領の『一本勝ち』?

ソウル地下鉄労組と運輸労組鉄道本部のストライキが結局不発になった。

鉄道本部はストライキ8時間前の11月19日夜11時30分、△2008年賃金政府公企業 指針受け入れ、△解雇者復職をはじめとする団体交渉事案を来年議論するなどに 合意した。この案は争議対策委員会で否決されたが、鉄道本部は結局ストライ キを留保した。鉄道本部の合意に組合員たちは「何も取れなかった」という反 応が支配的だった。

ソウル地下鉄労組もストライキ予告時刻の1時間前にストライキを撤回した。労 使間の核心の争点だった外注化で「労使間誠実な『協議』をする」程度でソウ ル地下鉄労組はソウル・メトロと合意文を作成した。ソウル地下鉄労組は「不 十分だが使用者側が前向きな立場を表明したので、今後対話と交渉で問題解決 に力点をおく」と今回の合意を評価したが、『協議』水準の今回の合意が果た してこれからの外注化と構造調整を防げるかはわからない。

▲暫定合意案に失望する鉄道本部組合員/チャムセサン資料写真

今回のソウル地下鉄労組と鉄道本部のストライキは、李明博政権のいわゆる 『公企業先進化』と呼ばれる公企業私有化政策に対する公共部門労働者の初の ストライキとして世間の関心を集めた。しかし結局、李明博政権の勝利という 結論になった。そのためこれから李明博政権の各種の公企業構造調整と私有化 政策に対抗する公共部門労働者の戦いにも困難が多いものと予想される。

ただ大統領が『不法』といえば『不法』になる世の中

李明博大統領は鉄道本部とソウル地下鉄労組のストライキ予告にもまばたき一 つしなかった。地球の反対側のブラジルから李明博大統領は「不法ストライキ を厳格な法で治める」と脅した。鉄道本部とソウル地下鉄労組のストライキは 必須維持業務を守る法的に保障された『合法ストライキ』だが、李明博大統領 はこの事実を知ってか知らずか、ためらうことなく『不法』と規定し、労働者 を脅迫した。こうした李明博大統領の発言に労働部関係者も「大統領の発言は 仮定法」と釈明しなければならなかった。

こうした李明博大統領の発言に対して大検察庁と警察庁は「不法ストライキに 該当する可能性が高い」という推測性発言を吐き出し、これを引用した巨大マ スコミ各社により、鉄道本部とソウル地下鉄労組のストライキはすでに『不法 ストライキ』になってしまった。こうした『不法』攻勢にストライキに参加す る組合員の行動半径は当然小さくなる。

「必須維持業務制度よりいっそ職権仲裁のほうが良い」

だがこうした李明博大統領の空しい言葉がなくても、今年から施行された必須 維持業務は、鉄道と地下鉄労働者のストライキをすでに無力化させている。公 共部門労働者のストライキを『無条件』に不法化した職権仲裁をなくして公共 部門労働者の団体行動権を保障するとし、盧武鉉政権が導入した必須維持業務 は、使用者側の一方的な調整申請で労働委員会が強制的に仲裁できるようにし、 むしろ公共部門労働者の団体行動権を無力化している。労働委員会が出した必 須維持業務維持率強制調停案はほぼ50%を越えるばかりか100%を維持しろとまで 言う。

このような労働組合および労使関係調整法改正案施行以後、初の強制調整事例 である都市鉄道労組調停案では、出退勤時間帯100%、あとの時間帯は79.8%を維 持しろという。ソウル地下鉄労組も出退勤時間帯100%の業務を維持しなければ ならなかった。鉄道本部も50%を超える必須維持業務維持率の決定が降りてきた。 さらに関連法で、使用者側はストライキ組合員の50%まで代替労働を投入できる ようにしているので、事実上ストライキはその効果をあげられない。遠い昔か ら、ストライキがその効果をあげるには組合員がストライキに入った時、その 業務が正常に動かないようにしなければならないが、必須維持業務と代替労働 投入などで該当業務が正常に動くので効果をあげられないのだ。

▲労組に合法ストライキの道を開くと言った必須維持業務が労組のストライキを無力化するのはもちろん労使間、労労間の対立をあおる。/チャムセサン資料写真

結局、業務が正常に動くので使用者側が誠実に交渉に臨むわけがない。使用者 側は、職権仲裁が生きていた時は労働委員会が職権仲裁で『不法ストライキ』 になるのを待ち、今は労働委員会が必須維持業務維持率を100%にすることを待 てば良い形だ。

必須維持業務の規定を受ける必須共益事業場は、鉄道と都市鉄道、航空運輸、 水道、電気、ガス、石油、病院、血液供給、韓国銀行、通信、郵政事業などの 公共部門業務のほとんどが含まれる。

これに対して公共運輸連盟のナ・サンユン政策委員長は、「むしろ職権仲裁の ほうが良かったという声もある」とし「形式的に合法ストライキの道を開いた だけの見掛け倒しで、当然廃棄されるべき悪法」と指摘した。

スト無力化ばかりか労働組合を無気力に...「必須共益事業場が一度にストをしなければ」

必須維持業務制度は、公共部門労働者のストを無力化させたばかりか、組合員 間の対立も引き起こす。必須維持業務を遂行する人員を組合員から指定しなけ ればならない状況で、誰がストライキの時に必須維持業務を遂行するのかをめ ぐり、労組内部で対立が起きているのだ。また必須維持業務履行の責任も、該 当組合員個人に問うことになっており、対立はさらに深刻だ。そのため労組の 組織力はさらに弱まらざるをえない。

ナ・サンユン政策委員長は、「前は労組執行部が決断して不法を甘受する方式 でストライキをしてきたが、今は執行部の決断でもストライキができない」と し「必須維持業務がストライキを無力化させるばかりか、組合員の間で対立ま で引き起こし、単位事業場次元のストライキはほとんど不可能だ」と説明した。 続いてナ・サンユン政策委員長は「では、方法は必須共益事業場労働者が全員 同じように一度にストライキをするしかない」と付け加えた。

▲公共部門労働者は暖かい冬を送れるのか。[出処:鉄道本部]

12月には、政府の『4次』公企業先進化方案が発表される予定だ。3次方案を発 表するにあたり、企画財政部のペ・グッカン次官は「4次方案は経営の効率化に 焦点を合わせ、各機関別に10%以上の効率向上を目標に、年末までに経営効率 化計画を立てて進める」と発表した。政府が言う効率10%向上は、人員削減にな る可能性が高い。人員削減の規模についてペ・ククァン次官は「まず45の機関 から(労働者が)抜けるだろうが正確な数は加算しなければならない」とし、 「(4次に発表する)経営効率化により、各機関別に全て作業をしているから今は 推定できない」と話した。

そのため実際4次方案が発表されると、公共部門労働者の大規模な失職事態が予 想される。だが公共部門の労働者は自分たちの雇用を守るためのストライキさ えできず、寒い冬に通りに追い出される可能性はさらに高まった。そして李明 博大統領の野心作『公企業先進化』は前に進み続けている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-12-14 15:20:22 / Last modified on 2008-12-14 15:20:22 Copyright: Default

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