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ひとつの住所に数十の事業場、でも1人事業場?

[ルポ]労働法を避けるため抜け道を使う企業等... 「重大災害法も5人未満除外、被害増える」

ウン・ヘジン記者 2021.06.07 08:08

「私と他の事業場に所属する上級者なら、 私に250万ウォンを受け取って出て行けという言葉は 言えなかったでしょう。」

オ・ギョンファン(54・仮名)氏は技師班長による退社の強要に苦しみ、 これを会社に申告した二日後に解雇された。 すぐに労働庁に職場内いじめの陳情をした彼は、信じられない事実を知った。 自分が所属する事業場が面接を受けた会社ではなかった。 その上、自分が所属していた業者の名前は採用公告のどこにも記されていなかった。 驚く暇もなく、陳情は却下された。 5人以上の事業場ではないという理由だった。 疑問は続いた。 では自分も、一緒に業務指示を受けていた五人の労働者は、 いったいどこの所属だったのか。

軟骨がすりへる労働

オ・ギョンファン氏は貨物労働者だった。 彼は釜山で生産された小麦粉を積んで亀尾に運送する業務を遂行した。 オ氏は二回入社したが、初めは2018年にポータルサイトのダウムのカフェに載っていた求人広告を通じて行われた。 求人広告の商号は「A運輸(荷主名)」と記載されていた。 当時、面接は発地、つまり車庫がある釜山で行われ、 技師班長が面接をした。 履歴書と資格証明などの採用関連書類は仁川にある A運輸のパクOO次長にファックスで送った。

そして2018年9月頃から仕事が始まった。 しかし当時の求人広告の内容と労働条件は違っていた。 勤労契約書もなかった。 まず1日に2回輸送することは、労働者1人当り1か月で1〜2回あることといっていたが、 5回以上発生した。 文字通り釜山で小麦粉を積んで亀尾で降ろす仕事を1日に2回繰り返すのだった。 勤労時間は「通常午前6時から午後2時」で8時間と明示されていたが無視された。 実際の1日の労働時間は10時間程度で、2回運送する日には18時間を楽に越えた。 現行法上、延長労働の場合は通常賃金の1.5倍以上を支払わなければならない。 それでも1日の賃金分の2分の1にもならない手当てが支払われた。 週5日勤務で週末休業という内容も嘘だった。

その上、オ氏は一般のトラックよりも業務時間が1時間ほど伸びるほかはないトレーラの運転手として採用された。 自然に労働強度はさらに高まった。 トレーラは動力がなく牽引車に連結する車両だ。 トレーラを結合・分離する作業が追加で必要だった。 巨大なトラックに1日何十回も乗り降りする作業は膝の軟骨に無理を与えた。

「日当にすれば12万ウォン程度でした。 しかし2回運送しても追加は5万ウォンだけでした。 1番車両の運転手が午前3時40分に一番早く出勤しました。 そのあとの人は30分間隔で出勤しました。 このシステムで4日、周年循環勤務をしました。 からだはつらく、給与は275万ウォンなので、相次いで運転手が退社しました。 同じ仕事でも私が運転していたトレーラではさらに大変なのに、 その上、古い車でした。 頻繁な故障で土曜は整備して日曜には洗車するという調子で、 無給で週末勤務もしました。 そのうちに膝が悪くなりました。 MRIを撮り、医師が軟骨が損傷したと言いました。 辞める時、釜山の小麦粉工場の職員が6か月働いた私は長く働いた方だと言うほどでしたよ。」

からだが壊れたオ・ギョンファン氏は会社に仕事を辞めると伝えた。 空席を埋めるために後任者を教育しようとしたが、 みんなつらい労働に耐えられないと言った。 1か月間で新規の運転手7人が辞めた。 結局、彼は後任を見つけられないまま会社を出るほかはなかった。 オ氏が退社した後に入社した運転手も辞めて、 当時の技師班長はオ・ギョンファン氏に1日だけ働いてくれと頼んだ。 そして日当はA運輸次長の「パクOO」の名前で15万ウォンが入金された。

▲昨年6月権利探しユニオンが偽5人未満事業場を告発するために開いた記者会見場面[出処:ウン・ヘジン記者]

横領を申告した労働者に戻ったのは「解雇」

退社後、1年も経たずに最初に入社した時の技師班長から連絡がきた。 彼はオ氏に前よりも労働条件が良くなったとささやいた。 それと共にオ氏はまた入社してみようと決心した。 再入社の手続きは、新しい技師班長が面接をしたこと以外は同じだった。 車両も一般トラックに変更され、前より楽だった。 しかし、別の問題が発生した。

「新しい技師班長は直さなくても良い車を整備させました。 洗車もしなかったのに洗車したという領収書を受け取ってこいとも言いました。 酒の席の強要にも苦しみました。 会食は一週間に一回の割合でありましたが、 会食するたびに技師班長は私にやめろといいまし。 そして解雇前、最後に参加した会食の場所で悪態と暴行を受けました。 そして自分が雇用主であるかのように、解雇通知をするから250万ウォンを受け取って出て行けといいました。 次の日、私はA運輸パクOO次長にカカオトークで職場内いじめの事実を知らせました。 すると2日後に、技師班長が亀尾まで私に付いてきて、 口頭で解雇事実を通知しました。 A運輸のパクOO次長が車両の鍵と車庫の鍵を受け取ってこいといったそうです。 明日から出てこなくてもいいと言ったそうです。」

オ氏は労働庁に会社を相手に陳情事件を提起すれば解決すると思った。 しかし陳情した中部地方雇用労働庁の勤労監督官と健康保険加入内訳を確認して理解した。 自分の四大保険が安養にあるB通運に登録されていたのだ。 そしてB通運には自分しか所属していなかった。 当時、勤労監督官はB通運の管轄官署の中部地方雇用労働庁安養支庁に事件を移送した。 そして支庁はB通運がオ氏に解雇予告手当てを支払い、 5人未満の事業場で職場内いじめの適用対象ではないという理由で事件を行政終結処理した。

「中部地方雇用労働庁の勤労監督官は自分の管轄ではないと言い、 書類だけで仕事を処理するといいました。 もちろん5人以上の事業場だという情況を明らかにしようとする意志もありませんでした。」

オ氏は採用広告でA運輸がいわゆる「偽5人未満事業場」だという疑いを持ち、 5人以上が働いているのに5人未満であるかのように偽装する事業場を集めて共同告発してきた権利探しユニオンを訪れた。 権利探しユニオンは昨年10月27日、常時勤労者数偽装の件でA運輸を告発した。 告発と共にオ氏は昨年12月1日、釜山地方労働委員会に不当解雇救済申請を提起した。

5人労働者に業務指示をした人は?

オ・ギョンファン氏をはじめ、同一業務をしていた労働者は合計5人だ。 彼らは1人のカカオトーク団体室を通じて業務の指示を受けた。 ここには技師班長を通じてA運輸のパクOO次長の指示事項が伝えられ、 翌日の納品順序、走行中の道路状況、荷主の指示事項などが共有された。

「技師班長がA運輸パク次長の業務指示だと言って確認しろという文をいつも書き込みました。 車両管制プログラムのチェロプラス(Cello Plus)にログインしろといった内容もありました。 ログインしなければ技師班長が非難されるというのです。」

オ・ギョンファン氏の状況を聞いた前の同僚も疑わしいのは同じだった。 今は退社した彼の同僚も、入社当時、自分がA運輸の所属だと思っていたと皆が話す。 そのうちに、オ・ギョンファン氏とほぼ同じ時期に入社したチョン・ミョンフン(仮名)氏の車両には「A運輸」と書かれていた。

「私のトラックには『A運輸』と刻印されていました。 私は個人的に知っていた技師班長の紹介で入社しました。 面接も技師班長がしました。 会社(A運輸)の本社が仁川にあるので技師班長が面接をしたのだと考えました。 私が物量が多いと技師班長に文句を言うと、上の指示だからどうすることもできないといいました。 誰の指示なのかと聞くとA運輸のパク次長だといいました。」 -チョン・ミョンフン技師

オ・ギョンファン氏と同じ年に入社して、2年間働いたカン・ドンハン(仮名)氏は、 車両点検を受けに行ったときに車両登録証に書かれていた業者名がA運輸ではないことを発見した。 その上、働いている時に業者名が変わった。 最初の車両登録証の業者名はオ・ギョンファン氏の四大保険が登録されたB通運と名前が同じだった。

「A運輸と思って入社しました。 車の点検を受けようとして車両登録証を見ると、B通運と登録されていました。 その時も私がその車を運転するだけで、私が他の業者に登録されていたとは思いませんでした。 ある日はA運輸に所属が変わると言いながら免許証、貨物運送従事者資格証明などを提出しろといいました。 そして車両登録証を見ると、C実業という名前が記されていました。 その時に抜け道を使っていることを理解したのです。」
「仁川に会社(A運輸)があるので、そこにも運転手はとても多いです。 釜山だけでもトラックが5台だったのに、1台に1人、5人では5人以上の事業場でしょう。 しかしわかってみると、運輸事業者をみんな分けていました。 一度はそのA運輸のパク次長に仁川に物量があるので、運送してくれと言われたことがありました。 その時は家の祭事で行けなかったのですが。」 -カン・ドンハン前技師

▲昨年6月権利探しユニオンが'偽5人未満事業場'を告発するために開いた記者会見場面[出処:ウン・ヘジン記者]

同じ住所に登録された約60社の運送事業者

現在、A運輸はオ氏の使用者が自分たちではなくB通運で、 二つの事業場は別だと主張している。 しかしA運輸とB通運が一つの事業場かもしれないという情況は1つや2つではない。 まず、A運輸の代表イ某氏とB通運の代表イ某氏は夫婦関係だ。 そして労働者の証言を総合すれば、実際に労務管理をしていたのはA運輸で、 B通運には何の指揮・監督も受けた事実がない。

その上、こうした状況はオ氏をはじめ元同僚だけの問題でない可能性が高い。 B通運の所在地には数十社の運送事業者が登録されているためだ。 中小企業現況情報システムの企業情報を見ると、 B通運の事業場登録証上の所在地には、B通運をはじめC実業、D貨物などの名前で廃業したところを入れて60社ほどの業者名が登録されている。 同じようにB通運の雇用保険資格取得申告書上の所在地にも廃業したところを入れて B通運と同じ商号で6つの事業者が登録されていた。

疑わしい情況はさらに発見された。 A運輸の現職役職員の名前は、 A運輸に採用されて働いた運転手それぞれの所属事業場ということになっている B通運、C実業、D貨物の受託車主の名前と一致した。 これについて権利探しユニオンのカン・ギョンヒ政策局長は 「A運輸に採用されて働いた運転手がB通運、C実業、D貨物など、 本人も知らない事業場に所属していたという点を考慮すると、 A運輸が自分たちが雇った労働者をまるでB、C、Dの委託受託車主個人が雇用した職員であるかのように偽装したのでないかという 合理的な疑いを持つことができる」とし 「こうした情況を勤労監督官と労働委員会調査官が徹底的に調査する必要がある」と強調した。

オ氏の代理人の権利探しユニオンのハ・ウンソン政策室長は、 A運輸会社が同じ住所に事業場の名前をいくつも変形し、 事業場を偽装・分離したのだと主張した。 ハ・ウンソン政策室長は 「A運輸が提出したB通運代表の通帳取り引き内訳を見ると 『B付加価値税確定』、『C付加価値税確定』という名前の引き出し内訳がある。 これは形式上で、B通運、C実業などが別個の事業場であるかのように登録されているが、 実際には同じ住所に名前だけが違う事業場を書類上で偽装・分離したのだ。 会計も統合的に運営されていたことを傍証する」と説明した。

一方、会社側の立場を聞くためにワーカーズはA運輸の代表と通話を試みたが、 彼は記者が所属を明らかにすると切ってしまい、 その後は連絡がつかなかった。 A運輸のパクOO次長は「(A運輸は)不当解雇で告発されたので手順を追っているだけだ。 オ・ギョンファン氏とは関係がない会社なので特に言うことはない」といった。 彼はその後、追加で回答をすることにしたが、約束した日に連絡はなかった。 またB運輸の立場を聞くためにB運輸の事業場登録証上の連絡先に連絡をしたが、 B運輸の代表を探す質問に対して電話を受けた人は「B運輸? ここに電話してはいけない」と答えた。 では電話を受けたところはA運輸かという質問に「そうだ」と答えた。 A運輸とB通運の事業場登録証には同一のメールアドレスと連絡先、ファックス番号が書かれている。

どのようにして5人未満事業場の労働者になったか

オ・ギョンファン氏が働いていた業者は、 事業主が勤労基準法を避けるために偽5人未満事業場にした代表的な事例だ。 勤労基準法は5人未満の事業場に年次休暇や延長休日、夜間加算手当て、 不当解雇救済申請、休業手当てなどの義務を免除している。 そのため、この死角地帯を利用して偽5人未満事業場を作る事業主が少なくない。 事業主が偽5人未満事業場を作る方法には、 事業場を分割する他にも、労働者を四大保険に加入させなかったり、 個人事業者として登録する方法などがある。 時にはこれらの方法を混ぜて、偽5人未満事業場を作ったりもする。 もちろん、その被害はオ氏の事例のように、労働者のまま戻る。 ハ・ウンソン政策室長は 「勤労基準法上の使用者の責任と義務を回避するために事業場を分割し、 偽5人未満事業場を作る事業主が多い」とし、 「特に運輸業の場合は業務の特性上、加算手当てがつくことが多いが、 勤労基準法上の5人未満事業場の場合は加算手当てを支払わなくてもいいので、 事業場を分割して労働者数を偽装するケースが多い」と説明する。

しかも国内の貨物自動車運送事業の場合は委託受託制度の問題で、 かんたんに5人未満事業場になれる。 国内貨物自動車運送事業は、ほとんどが委託受託方式で運営される。 委託受託制度は車両を所有する車主が運送会社に車両の名義を信託し、 事業者が運送許可を受けて運送を委託する方式をいう。 運送会社は運送斡旋会社あるいは荷主と直接運送契約を結び、 運送許可を受けた車主に運送業務を委託する。 オ氏がB通運の労働者なら、オ氏がB通運に車両名義を信託した車主や、 その車主に雇用された労働者でなければならない。 しかしオ氏と同僚の運転手は働いている間、B通運の存在そのものを知らなかった。 ハ・ウンソン政策室長は 「A運輸は自分たちはB通運と運送委託契約を結でおり、 オ氏はB通運所属の勤労者だと主張するが、 オ氏はA運輸の指示を受けて運送業務を遂行していた」とし、 「オ氏の使用者であるA運輸がB通運の委託受託車主を使用者であるかのように偽装したのがこの事件の本質」と指摘した。

「重大災害法など5人未満事業場を量産する法」

統計庁は、5人未満事業体の数を2019年基準で332万余りと把握している。 従事者数は603万人程度だ。 しかし働いている人すべての労働組合である「権利探しユニオン」は、 該当統計には大きな意味がないと指摘する。 現行の統計は事業主を対象に調査しているので、 勤労基準法を避けるための手法として労働者を四大保険に加入させなかったり、 個人事業者として登録するようにする場合などを包括できないためだ。 したがって、5人未満の事業場で働く従事者が統計よりさらに多いかもしれないと労組は見ている。

政府が無視している間、偽5人未満事業場で働く労働者の権利は死角地帯に放置されている。 特に最近制定された重大災害処罰法も、5人未満事業場には適用されない。 ハ・ウンソン政策室長は「重大災害処罰法も5人未満の事業場は適用から排除した。 これから5人未満の事業場に偽装する所はさらに増えるだろう。 偽の会社を作ったり、下請、偽装請負などの方式だ。 この過程で労働者が直面する危険は増加することになる。 労災が発生すれば誰の責任を問うべきかも不透明になる。 勤労基準法が全面適用されない5人未満の事業場の労働者は、 安全措置に対する問題提起もできないだろう。 事業場を分割し、さらに劣悪な環境を作っている。 問題は、事業場が現在、合法的に運営されるていのかどうかではない。 5人未満の事業場の労働者の権利を実際に保護できるように、 制度を改善しなければならない」と指摘した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2021-06-16 09:31:05 / Last modified on 2021-06-16 09:31:08 Copyright: Default

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