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国家は密陽住民を捨てた

[記者コラム]密陽の悲劇、三坪里で再現されるだろう

パク・チュンヨプ記者 2014.06.13 10:56

陽の光が気持ちいい日だ。 涼しい空気は登山に良い。 数百人が山裾にいっぱいになっている。 帽子を目深にかぶった女たちは、裾道の中腹に丸く集まって座り餡パンをかじっている。 彼らは顔が焼けてはいけないとか、餡パンはカロリーが高いといった身辺雑記をならべる。 山腹を登る男たちは、登山は精力に良いだとか、それでも第1機動隊の方が若くて、一番とても新鮮だという冗談を言い合う。

中腹に集まって座り、ピースサインを出して記念写真を撮る彼ら、 つまらない冗談を言い合う彼らが黒い警察装具を着用していなければ、 ある天気がいい日に散歩に来た一群だと勘違いしたかもしれない。 平和な彼らの姿に違和感を感じる。

101版送電塔工事現場(密陽市丹場面龍回村スンハク山の頂上付近)にあるテント座込場を撤去しに行く警察、密陽市、韓電職員だ。 わずか数十分前に他の村で泣き喚いて抵抗するおばあさんを引き出して座込場を撤去した。 そして今、行政代執行という強力な公権力を行使するために住民の所に向かっている。

密陽の住民に国家権力は法も常識もなかった

行政代執行一日前の6月10日午後、 115番竪穴座込場に到着した。 警察がこの日から出入を統制するという知らせで、住民しか知らない抜け道にあらかじめ入った。 竪穴座込場で初めて会った老いた住民の雰囲気は意外にも静かだった。 国家暴力に限りなく弱い者のあきらめだったのか、累積した疲労だったのか、 踏みにじられるからだを万人に展示しようとしているのか、 さもなくば暴力が踏みにじることができない何かを持っているという信頼だったのかはわからない。

時計の振り子を止めることはできず、行政代執行の時間は近付いてきた。 住民も竪穴座込場の「最後」に備えた。 静かな雰囲気の中、興奮と恐れが時々漏れてくる。 おばあさんたちは座込場の下のくぼみに入り、鎖で首を巻き、 修道女たちは座込場の入口を防いでミサを始めた。 竪穴座込場、住民たちの長い間の痕跡がもうすぐ消えるのだと考えながら、 唇をかんで彼らが最後に備える姿を見守る。

▲115番竪穴座込場の中で住民が首に鎖をかけて強制撤去に備えている

▲115番竪穴座込場の強制撤去が始まり、神父と修道女が座込場を守りミサを始めた

やってきた警察は、長い間座り込みを続けて構成してきた住民たちの人生を断ち切る死神だった。 行政代執行の令状を読む姿も、まさに名簿を読む死神だ。 続いて住民たちを引き出して座込場を撤去する姿は、 よく訓練されているかのように一糸不乱だった。 座込場を撤去して工事を始めるという強い国家の意志の前で、 住民たちが首に巻いた鎖は単なる糸でしかなかった。

法は民衆ではなく国家のために存在することを証明するかのようだった。 住民たちがわめきたてる現場では、法と常識は何の意味も持たなかった。 現場で警察は行政代執行を主導する違法を行った。 押さえつけられ倒れた住民に面会しようとする弁護士を捨て、 危険な現場だと言って記者を引き出し、私服を着て採証を繰り返した。 住民、連帯者、そして記者も大声を張り上げて抗議したが、 何があっても送電塔を建てるという国家の意志の前では何の効果もなかった。

そうして国家から捨てられた密陽住民たちは、すべて竪穴から追い出された。 もう残る竪穴はない。 竪穴が撤去された後、ヨム・ホソク烈士の遺体を奪って葬儀を済ませた警察のように、 韓電は直ちに重機を投入して工事を始めた。 セウォル号惨事の後、多くの人が「これが国家か」と尋ねた。 これが国家か? 国家は密陽送電塔工事の強行で応えた。

▲115番竪穴座込場の強制撤去に抵抗する住民が座り込み、警察は住民を取り囲んだ。

終わらない戦い

2008年から工事が始まって触発された密陽送電塔の戦いは、 住民に大きな傷を残したまま一段落した。 時間が経てば、また送電塔を抜き取るという人も、 密陽で新しい共同体を作るという人もいる。

あるいは住民に大きい傷を残しただけで忘れられるかもしれない。 6月12日、新聞には密陽の残酷な現場ではなく「日本植民支配は神様の意」という文昌克(ムン・チャングク)国務総理候補者が飾った。 明日から始まるワールドカップはまた、 密陽が伝えようとしたメッセージを忘れさせるだろう。

密陽住民の話を二三の適当な言葉で裁つことはできない。 それでも今言えることはただ一つ。 悲劇と喜劇の絶叫の中で、もうすぐ慶北道清道郡角北面三坪里の送電塔工事も強行されるという事実だ。 6月11日、密陽で確認したのは韓電が送電塔工事強行というただ一つのシナリオしか持っていないということだ。 これは国家も同じだ。 密陽住民の悲劇は三坪里住民にそのまま再現されるだろう。

それでも三坪里の住民たちが送電塔工事を防ぐために櫓で座り込みまでして苦しい戦いを続けているという事実はあまり知られていない。 注目するマスコミも少なく、現場で連帯した某国会議員も三坪里の話は知らなかった。 密陽に駆けつけた足は、今度は工事強行を前にしている三坪里にも続かなければならない。

115番竪穴座込場の撤去を目を見開いて記録した。 地面に座り込んで、ノートパソコンを広げ、現場の状況を記録している時、 後から私を呼ぶ声が聞こえて振り返った。 密陽に駆け付けてきた三坪里の住民だった。 ゆがんだ顔を見た瞬間、耐えていた涙をこらえていられなかった。

▲高空籠城場で座り込みをする三坪里の住民たち

付記
パク・チュンヨプ記者はニュースミンの記者です。この記事はニュースミンにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-06-13 19:26:47 / Last modified on 2014-06-13 19:26:48 Copyright: Default

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