韓国:MERSが韓国医療システムに投げかける質問と警告 | |||||||
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MERSが韓国医療システムに投げかける質問と警告[ソーシャルパワー] 『医療の社会化』が解答だ
カン・ドンジン(チャムセサン編集委員) 2015.06.04 14:47
新しい変種のコロナウイルス(MERS-CoV)の感染による重症急性呼吸器疾患のMERS(マーズ、中東呼吸器症候群)に対する恐怖が広がり続けている。 5月4日、最初の患者が中東のバーレーンからカタールを経て帰国して7日後に高熱とせき症状を訴え、 四か所病院で診療を受けたり入院し、 5月20日にMERS患者という判定を受けた。 続いて最初の患者の夫人がMERS患者と判定されて以後、 5月30日には15人の患者が発生、6月1日には初めての死亡者が発生し、 3次感染者も出てきた。 6月5日現在、患者数は35人、3次感染者は5人、死亡者2人、隔離は1600人以上に広がった。 感染が疑われる患者数も合計398人で、MERS確診者はさらに増えるだろう。 3次感染者が発生したのは世界初で、追加で発生した3次感染者の1人はソウルの大型病院の医師だという。 「地域感染」まで広がり、統制不能の状態に入るのではないかという憂慮まで生んでいる。 この過程で感染病の管理7対応体系の粗末さと<保健福祉部をはじめとする政府の無能と無責任に対し「医療版セウォル号」だという批判が提起されている。 朴槿恵(パク・クネ)大統領は、初のMERS患者発生後、15日も経った6月3日にMERS対応官民合同緊急点検会議を開き、 「MERS対応過程での問題をしっかり点検し、その次に現在の状況、そして対処方案について積極的で明らかに診断をした後、その内容を国民に知らせるべきだと思う」という中身のない対策を提示した。 国民の間では「MERSより政府の無能の方が恐ろしい」という批判が広がっている。 現在まで空気感染から「地域感染」にまで広がっていない点は幸運な状況ではあるが、 感染の拡散、3次感染まで「院内感染」でなされているという点に注目しなければならない。 病気を治療して管理する病院がむしろ「感染拡散」の主な経路になっているという点で 「病院が病気を作る」という病院システムに対する批判が改めて浮上している。 もちろん、MERSを起こすウイルスが患者との密接な接触によってのみ伝染し、 空気では伝染しないため、患者(と疑われる人)が訪問して入院した病院で感染が拡散しているという点が、 そしてサウジアラビアや中東での感染も主に「院内感染」だったという点で、 わが国だけが特別ではないかもしれない。 それでも最初の患者が四か所の病院を回って診療し、入院した病棟の患者と彼らを診療した医師と看護師、患者を看病した家族の間で2次感染者が発生したという点で、 病院の問題は見過ごせないだろう。 特にSARS(サーズ、急性呼吸器症候群)が流行した時に香港政府は感染が疑われる患者が病院を訪問することに備え、 患者の家族データや病歴を集めたサーズ集団情報を医療機関が共有したという点で、 医療機関の中で患者に対する情報共有さえきちんと行われていない現実は重大な問題だ。 何よりも一次的に指摘すべき点は、感染病が発生した時に患者を優先的に診療し予防する役割を担う公共病院が非常に足りないという事実だ。 そして感染患者の管理に欠かせない隔離病床や陰圧病床はなおさらだ。 2011年基準で国内の全病院病床のうち公共病院の病床の割合は12%に過ぎないのが実情で、 OECD平均公共病院病床の割合が77%であることに較べると非常に低い。 感染管理に欠かせない隔離病床数は全国に579床だ。 したがって、地域の拠点病院であも病床数は不足しており、隔離病床数はさらに不足している。 特に気圧を下げて病原菌の外部伝播を遮断することができる「陰圧病床」は105床に過ぎず、 MERSのような伝染病を病室の中に閉じ込めるのは容易ではない実情だ。 これは民間病院を含む病床数は、2014年基準でOECD平均が1千人当り4.8床であるのに対し、 韓国は10.3床で日本の13.4床に続いてOECD国家で二番目に多いのと比較すると、 公共病院がいかに不足しているかがわかる。 こうした実情にもかかわらず、朴槿恵政権になって、 公共病院の晋州医療院を閉鎖するという蛮行が行われ、 他の公共病院も赤字運営を理由に廃業が考慮されたり進行中のところも何箇所もある。 二番目に、病院が収益を追求することを中心に運営されている点だ。 これは公共病院も例外ではない。 前に指摘したように、今回の事態では2次感染者はほとんど同じ病棟と同じ層の他の病室で感染し、 患者の面倒を見る看病の責任はほとんどが家族に任されている。 外国の場合、大部分の国は感染病室が一人部屋になっているのに比べ、韓国では感染病室も大部屋だ。 そのために感染病の専門家たちは、韓国の病院空間内での入院患者の高い密集度が感染の拡散を速めた原因の一つだと見ていたりもする。 科学学術誌サイエンスには韓国のMERSが広がる理由として病院の感染統制措置の不十分をあげ、 「MERSが疑われる患者が一番多くウイルスを撒き散らす時期にあたる入院直後の症状が悪化する最初の3日間に何が起きたのかわからない」と指摘する文がのせられたりもした。 病院の収益追求傾向は、患者の診療を担当する医師と看護師の不足に直結する。 国家指定隔離病院でも看護師が足りず、隔離病棟ではない他の病棟を縮小運営しなければ、 隔離病棟のMERS確診患者を世話できず、 マスコミの報道によれば「個人保護装具を着れば20分で汗で服がぬれるほど大変で、倒れる人もいる」とし 「看護師がとても不足して大変なことになっている」と訴えており、 医者も病院で宿泊しながら24時間非常待機している状況だという。 MERSの感染と伝播期間が長引くほど、患者を治療し世話をする医療陣の疲労度はさらに深刻になるだろう。 政府が進めている医療民営化政策の一つである営利病院の導入は、こうした状況をさらに悪化させかねない。 営利病院の導入により医療サービスの質を向上させることができると強弁するが、 収益追求が優先の営利病院が非営利病院より医療サービスの質が良くなるという根拠はなく、 むしろさらに悪化させて営利病院に従事する医療陣の労働条件もさらに悪化するという研究結果が提出されている。 三つ目に、疑われる患者を隔離したり確診患者が入院して治療を受けている間に、 彼らに対する支援は殆どない。 患者を世話する看病の役割は家族がするしかなく、疑わしい患者が隔離を受け入れると所得が減り、雇用を失う状況になってはならないはずだが、 これに対しては保護装置や支援対策が絶対的に不足している。 隔離患者に対する対策として4人基準で月100万ウォンの支援が提示されているが、 これは介護人をつけると患者の看病費も厳しい水準だ。 また患者が休職した場合、これに対する対策は殆どない。 朴槿恵大統領は、大統領選挙の時に看病費などを健康保険で解決すると明言したが、 これが実現されるかは未知数で、そのような意志を持っているのかも不透明だ。 「保護者がいない病院」を標榜し、それを実現しなければならないという要求は高いが、 現実の保護者たちは病院で患者を世話し、MERSに感染して死亡に至っているのだ。 MERS事態が韓国の医療システムに投げかける質問と警告は、あるいはこれまで無数に提起された内容でもある。 過去のサーズ、新型インフルエンザ事態でも同じように提起されてきたが、 政府の政策はその警告と問いが要求する方向とは反対に疾走している。 感染病の拡散を防ぐには、徹底した統制と管理が必要で、マスク着用など個人の衛生管理の前に公衆保健衛生管理の方が効果的で優先視されなければならない。 これを施行するには、公共インフラの構築と人員の確保が必須だ。 さらに根本的には「医療の社会化」が解答だ(医師集団内部で韓国の医療システムの問題を健康保険体系の点数や保険支出管理による医療機関に対する監視、および統制中心のシステムにあると感じ、 これを「医療社会主義」と批判している。 この用語は医師集団が健康保険制度を「共通の敵」として、韓国医療システムの核心的な問題だと感じているという反証に使われたりもする)。 すべての医療機関を強制的に加入させ、全国民を適用対象にして保障性を持続的に拡大し、 健康保険点数管理と支出統制を核心とする医療社会化政策は、 全国民の医療接近性を上げて国民の健康を増進させてきたし、 医療機関の量的・質的発展にも大きな役割を果たした。 むしろ市場と民間を中心とする自由放任的な「医療市場主義」的な医療サービス供給体系と、 これをさらに拡大強化する医療市場化、医療民営化、医療商業化政策が、 現在のMERS事態のような問題点だけでなく、 医療機関間の自由な競争と収益追求によって国民の医療接近性を侵害しており、 また、医療機関に従事する医師と看護師など医療陣の自律性と労働条件までを悪化させる結果を生んでいると見なければならないだろう。 MERSの拡散を防ぎ、今後も感染病に対する対策を樹立するためには、 短期的にはMERS患者を診療して隔離病床を運営し、感染拡散防止のために努力している民間病院に対する政府の補償と支援が適切に行われなければならず、 隔離されたり治療を受けている患者の生計支援対策も政府次元で行われる必要がある。 そして、公共病院の拡大や、主治医制度など民間病院の公共的な役割を強制する制度の導入等を通じ、 地域ごとに大学病院などの地域拠点病院を中心とする医療伝達体系の公共的な樹立を図っていかなければならないだろう。 上のように、医療システムに中央政府と地方自治体など国家の積極的な介入と役割の増大を核心とする「医療社会化」が切実に要求されている。 単に政府の無能と無責任だけを恨むだけに留まってはいけない。[チャムセサン研究所(準)] 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2015-06-05 04:09:53 / Last modified on 2015-06-05 04:09:54 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ |