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IPTVの経済学:秘密こそ収益[IPTVがやってくる](2) IPTVの個人情報保護は?
ホンジ(進歩ネットワーク)
idiot@jinbo.net / 2008年02月11日18時13分
[出処:イラスト:タルグン] 名前:カン先生(30才女)
カン先生は、太王ペ・ヨンジュンに続いて最近はチ・ソンと熱愛中だ。もう何 日も「ニューハート」と「イサン」を切り替えながら征服しているところだが、 昨日は午前2時まで、一度みたニューハート1、2、3編から、はじめて見る4編ま で、4本を見た。「一度見たものをまた見るのか」という夫に、「それじゃ今日 はご飯を食べて、明日はご飯食べないのか!」と鋭く言い放ってはみたものの、 事実カン先生は数日前の夫の釈然としない行動が気にかかっている。 その日もいつものように「イサン」の以前のストーリーをまた見るために「最 近見た番組」のインデックスをいじっていた。その時、午前2時33分見慣れない 番組が目に入った。「ミス・キムのラブラブ1、2」、「あいつ、ミス・キムと 熱愛中だったな!」みんな寝ついた深夜、夫がエロムービーを見ていたわけだが、 今度から一人で見ないで一緒に見ようという意味で言った言葉が恥ずかしかっ たのか、最近夫はチャンネル選択にとても気を使う様子だ。 冗談混じりだったが、さらに昨日は「私生活がこんなに保護できないのなら、 いっそそれぞれがTVを見ればいい」という心情を打ち明けた。誰がどんな番組 を見ているのかのぞき見する(?)のも、かなり面白くはあるのだが、いつからい つまで、どんなチャンネルのどんな番組を見たのかまでが詳細に残される記録 を、あるいは他人も共有しているのではないのか、カン先生は突然首すじがひ やりとした。[編集者注] 両親に隠れて、夫に隠れて、子供に隠れてTVを見るというのはもう過去の話だ。 早く寝ろという両親の言葉に反してどうしても見たいドラマがあっても、居間 蛍光灯を消して、音量はゼロにして、TVの前でふとんをかぶってこっそりと 映画を見ることはできない。修学能力特講ではなく、関心があるドキュメンタ リーを見て、両親には教育放送を見たと嘘をつけなくなった。ホームショッピング チャンネルを一度でも見れば「お前、また何か買ったのか?」という言葉を 聞くことになる。 世の中にタダのものはない。何かを得るには何かが犠牲になる。経済学では、 これを等価交換の法則と言う。経済学の観点からは、世の中はいつも均衡状態 のエッジワース箱(Edgeworth Box)1)なので、その箱の中に不正金やゴミはない。 IPTVは、2008年の情報通信分野だけでなく、韓国社会の最大の話題の一つだ。 現在、サービス開始が秒読みに入り、国内の有名なメディア企業が君も私も IPTVへの進出を狙っている。また、IPTVの物理的な基盤といえる広域統合サー ビス網(BcN)の構築は、すでに2010年の完工を目標として、今年最後の第3段階 事業をはじめ、政府と通信・放送業界はこれからの3年間に注ぎ込む金額だけ でも18兆2000億ウォンになる。 世の中にタダのものはないので、政府と企業がこれほど精魂を込めるIPTVは、 それだけの、あるいはそれ以上の収益を上げる金脈なのだろう。果たして金脈 の正体は何だろうか? 韓国情報社会振興院が1月31日に発表した「2008ユビキタ スIT 十大問題」のうち、『放送と通信の融合によるIPTV時代の本格開幕』と、 『オンライン個人情報保護』が1、2位を占めた。このアンケート調査の結果は IPTVを始点として本格化するユビキタス時代、政府と企業が狙う無限収益の源 泉が何かをはっきり知らせている。それはまさにわれわれの個人情報だ。 IP、すなわち1人基盤の固有のアドレスシステムを利用するサービスという点で IPTV視聴者とインターネット利用者の個人情報は大きく違わないように見える。 だがIPTV視聴者の個人情報は、従来のインターネットの使用者の個人情報より はるかに価値がある。なぜならインターネットは開放型サービスだが、IPTVは 閉鎖型サービスだからだ。 『ウェブ・サーフィン』という言葉からもわかるように、インターネットはコ ンテンツにアクセスするときの障壁は殆どない。唯一のアクセス障壁と言えば、 ブラウザーの存在だけだ。だが、IPTVはTVさえあれば見ることができるわけで はない。『加入』、つまりIP以外に名前、住民登録番号、住所など、さらに多 くの個人情報を提供しなければ享受できないサービスだ。そのためIPTV視聴者 の個人情報は、インターネットの個人情報よりはるかに強力な個人識別ができ るコードだ。しかしインターネットでのIPは、個人を識別する唯一の識別子で はあっても、本人証明はできない。つまりIPと個人を1対1で完全に対応させる ことはできない。しかしIPTVのIPは、加入時に提示する個人情報とともに個人 を証明するさらに強力な識別子として進化している。 このように、疑う余地のない識別コードが付与されることで、これまで秘密の 領域に置かれていた個人のTV視聴行為はネットワークに記録されて保存される だろう。これによって発生する変化は、単に『家族から隠れて見るTV』の終末 では終わらない。最も大衆的で日常化したメディアであるTVのこうした変身は、 いかなるメディアより具体的な個人情報の宝庫を構築する。私がTVで何を見て、 聞いて、行うかを、同じTVを見る人々だけでなく企業も知り、政府も知ること になる。 消費者の一挙手一投足が販売経路である企業にとって、IPTVは黄金の卵を産む ガチョウだ。だからIPTVの商用化は、これまで通信事業者の間で横行していた 個人情報交換領域がTVに拡大することを意味する。すでにはるか前から全国民 の半分以上の規模にまで大きくなった個人情報流出は、IPTVの時代になってさ らに深刻になるだろう。例えば、IPTV事業者のA企業がIPTVで広告事業をしよう と思うB企業から代価を受け取って個人情報を提供すれば、その中に含まれるも のはは単に名前と住民登録番号だけではない。その人の視聴傾向により推測さ れる趣味と消費性向まで含まれるだろうということは、十分に予測可能だ。 常に国民が何を考えながら暮しているのかを気にする政府にとってIPTVは高性 能の『テレスクリーン』になるだろう。13桁の住民登録番号を持つある人がよ く見る番組は何か、手の平を見るようにわかるということだ。まだ概念の定義 が曖昧なIPTV事業者を電気通信網法上の通信事業として類推適用すれば、これ はもはや小説の中の話ではない。現在国会に係留中の通信秘密保護法改正案が 通過すれば、IPTVの視聴は網への接続に区分され、義務的に保存すべき情報に 含まれるためだ。それも義務的に1年以上保管され、捜査機関が望めばいつでも 自由にこの記録を閲覧することができる。 90年代末に初めて接したインターネットと、それから10年たってインターネッ トの利用環境が変わったことは誰もが感じている。インターネットを規制する あらゆる法制により、もはやインターネットに文を書き込む行為は自由でない。 同じように、TV視聴がそう感じられる日が来るかも知れない。 このように、IPTVが無差別な個人情報の乱用と流出を招く可能性は火を見るよ り明らかだが、これに対する対策は何もない。IPTVを規制する『インターネッ ト・マルチメディア放送事業法案』での利用者保護は、文字通り宣言的文句で しかない。第16条2項で「インターネット・マルチメディア放送提供事業者は、 サービスや電気通信設備を提供する過程で取得した個別利用者に関する情報を 保護する措置を取らなければならず、取得した個人情報を公開してはならない」 と規定されているだけだ。大統領令に委任するという話もなく、付則もない。 これさえ後段の但し書き条項の「ただし、本人の同意や法律の規定による合法 的な手続きによる場合は除く」によって、チラシの宣伝文句にも至らない可能 性が高い。少なくとも、IPTV事業者の個人情報保護義務を現在の『情報通信網 利用促進および情報保護などに関する法律』にして、情報通信サービス提供者 の義務条項に準じる水準で規定することが急務だ。 世の中にタダのものはない。IPTVをめぐるあらゆるバラ色の収益指標は、TVの 視聴行為という私生活が費用だ。だが、IPTVの一般利用者がプライバシーを企 業と政府に渡すことで得られる収益については誰も語らない。個人がプライバ シーを放棄することで得る利益は、そもそもないからだ。IPTVと放送通信融合、 さらにユビキタス時代の経済学は、秘密と収益の不等価交換だ。聞こえるだろ うか。エッジワースの箱の中で私たちの個人情報が勝手に転げまわる声が。 1)エッジワースの箱:経済学で等価交換を前提とする資源配分の最適状態を四角形の箱形のダイヤグラムで表現したもの 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2008-02-17 11:26:02 / Last modified on 2008-02-17 11:26:03 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ |